■ 大強度陽子加速器計画月報11月号より       (2003/11) 

●「中性子源ターゲット容器に最適な材料選択方法の開発」
 中性子源ターゲット材料に使用する液体水銀へ大強度のパルス陽子線を入射するとその内部では急激な発熱反応と、その熱衝撃による圧力波が生じる。この圧力波の伝播過程で、液体水銀に接する容器内壁にピッティング(損傷)を生じる。 原研は今回、この損傷現象を電磁力により再現するための衝撃圧負荷装置を開発して損傷群の形成現象を実験的に評価した。その結果、ターゲット容器材料の選択に不可欠な損傷挙動を予測しうる実験式を世界で初めて導出し、28日にプレス発表を行った。
*クリックすると、大きく表示されます。

●ツイストロックによる自動玉掛け装置試作機
 高放射線環境下での機器の玉掛けは作業者の放射線被爆低減の観点から遠隔操作で行うことが必要だが、今回、機器を自動で玉掛けする装置を開発した。 装置は吊り具に装備されたハンマー形のツイストロックが、吊られる側の楕円穴のあいたスミ金具に差し込まれ、90度回転し、スミ金具をひっかけて吊る構造で、ツイストロックの装着を確認する機構、微妙な重心バランスの調整機能等を備える。 試作機は4点吊りで最大荷重40トンが吊れるもので、今後実地試験を行う。
*クリックすると、大きく表示されます。

●第4回ニュートリノビーム生成に関する国際ワークショップ・NBI2003
 本ワークショップ(WS)は、1999年のKEKにおける世界初の長基線ニュートリノ(ν)振動実験の成功を記念して創始されたもので、第4回WSが7-11日の4日間、KEKで開催され、約50名(国外23名)の出席者があった。 現在、世界で競合している長短基線ν実験施設のν生成に携わる第一線研究者が一堂に会して詳細にわたる深い議論が展開され、非常に実り豊かなものとなった。
*クリックすると、大きく表示されます。

●ニュートリノ実験施設技術助言委員会(νTAC)
 原子核素粒子実験施設委員会の下に設けられたνTACが12-13日にKEKで開催された。 同委員会は、E.ブラックモア氏(カナダ・TRIUMF加速器技術部門長)を委員長とし、国内外の専門家8名で構成される。 超伝導磁石を含む一次陽子ビームラインから標的エリア、ビームダンプにいたるニュートリノ実験施設全体に関するレビューが行われ、多くの有益な助言が得られた。年内を目処に報告書が作成される予定。

●4kWビームダンプ(BD)の現地据付
 加速器のビームコミッショニング等では弱い強度のビームを使って機器調整が行われる。その際に使われたビームはBDに入射させ消滅させる。 今回、3GeVシンクロトロン用のBD鋼材等が海上輸送され18日に常陸那珂港に到着し、J-PARC建設現場に搬入・据付けが行われた。
*クリックすると、大きく表示されます。

●大強度陽子加速器計画評価作業部会
 平成16年度概算要求に対して総合科学技術会議から本計画への評価結果が示され、その中で計画の見直し等が求められた。 本計画については、学術審議会等の下に設けられた評価専門部会より、平成12年8月に事前評価がなされ、計画に着手されたが、 本年11月に文科省科学技術・学術審議会の下に「大強度陽子加速器計画評価作業部会」が設けられ、中間評価が行われることとなった。 部会では小平総合研究大学院大学長を委員長とする委員12名によって、計画全体の意義と必要性、計画の見直し、今後の進め方などが審議されており、11月末に報告書が出された。

Copyright 2003 JAEA and KEK Joint Project. All rights reserved.