J-PARC_Center

平成27年5月15日

J-PARCセンター
日本原子力研究開発機構
高エネルギー加速器研究機構

 

J-PARC物質・生命科学実験施設の利用運転休止について
 (お知らせ) 

 

    J-PARC物質・生命科学実験施設では、中性子標的容器の交換を実施するため、6月末までの間、予定されていた利用運転を休止することとしました。

    中性子標的容器は1年毎の定期交換を要するものであり、本年も夏期 (7月以降) の交換を当初予定しておりましたが、4月30日に中性子標的容器の密閉容器 (ヘリウムベッセル) 内部で水分濃度の上昇を検知したため、当面の利用運転を停止する旨を利用者に周知するとともに、詳細な調査と復旧に向けた作業を進めておりました。調査の結果、当該不具合は中性子標的容器の欠陥に起因することが判明したため、本年は交換作業を2か月程度前倒しで行うこととし、引き続き利用運転を休止することとしたものです。なお、7月から9月にかけては、例年スケジュール通り保守・メンテナンスのため運転を停止しています。

    今後とも安全を最優先に施設の運営に取り組む中で、今回の不具合の詳細な原因究明にも取り組んでまいりますので、利用運転再開までの間ご不便をお掛けしますが、何卒ご理解いただきますようお願いいたします。

    なお、ニュートリノ実験施設などの他の実験施設につきましては、当初のスケジュール通り利用運転を実施しています。

     【本件に関するお問い合わせ】 

     <技術的なことについて> 
J-PARCセンター
物質・生命科学ディビジョン (担当 : 曽山、高田) 
TEL : 029-282-6424

     <報道担当> 
J-PARCセンター
広報セクション (担当 : 山下、照沼、福田) 
TEL : 029-284-4593

     <補足説明> 

4月29日深夜から30日未明にかけ、中性子標的容器が設置されている密閉容器内部 (図1参照) の水分濃度 (中性子標的容器の異状を早期に検知するために計測するもの) がわずかに上昇したため、利用運転を一旦停止しました。その後、中性子標的容器の健全性を確認するための一連の点検作業を実施した結果、中性子標的容器の保護容器 (図2参照) において欠陥が見つかったため、当初7月以降の夏期を予定していた交換作業を予め定められている手順に則って前倒しで実施することとし、6月末までの物質・生命科学実験施設の利用運転を休止することとしました。

なお、当該事象において、放射性物質による施設内、周辺環境への影響はありません。

   
  【 用語説明 】  

  「 中性子標的 」

  ステンレス鋼製の容器内に水銀を流動させ、陽子ビームを照射して水銀との核破砕反応で中性子を発生させる装置。

  「 中性子標的容器 」

  中性子標的容器は図2に示すように内部に水銀を流動させる水銀容器と、それを内包する保護容器から構成される。保護容器はビームにより発熱するため水で冷却されている。中性子標的容器は、構造材料が使用につれて劣化し強度が低下するため、定期的に交換することとしている。

  「 密閉容器 (ヘリウムベッセル) 」

  図1に示すように、密閉容器はステンレス鋼製の容器構造物で、中性子標的容器を装着し密閉構造をなす。運転時は、この内部で陽子が中性子標的に入射し、中性子を発生させる。この容器は、内部に装着する機器の冷却材の漏れに対する閉じこめ機能を果たす。また、容器内に化学的に安定なヘリウムを充填することで、放射線で生じる腐食性のガスの生成を抑える役割も果たす。

  

*クリックすると、大きく表示されます。

  図1  中性子標的容器を密閉容器に装着した概念図
 (左は密閉容器に中性子標的容器を装着した図、右は中性子標的容器本体) 

  

*クリックすると、大きく表示されます。

  図2  中性子標的容器の内部構造

  

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