J-PARC_Center

平成27年7月10日

J-PARCセンター

 

中性子標的容器の不具合の原因に関する調査結果及び再発防止に向けた対策について
 (お知らせ) 

 

    5月15日にお知らせしましたとおり、J-PARC物質・生命科学実験施設 (MLF) では、不具合の見られた中性子標的容器の交換作業を行うため、4月30日から利用運転を休止するとともに当該不具合の原因について詳細な調査を進めてまいりました。今般、調査の結果がまとまりましたので報告いたします。

    調査の結果、中性子標的容器の保護容器の組立工程において、冷却水路の形成に使用されるステンレス製部材に一部不完全な接合箇所があったため、その後の運転に伴う熱応力により微細な亀裂が生じ、そこから水分が滲出した可能性が高いことがわかりました。本調査結果を踏まえ、今後使用する予定の中性子標的容器ではより強固な溶接方法を採用する等の再発防止に向けた対策を速やかに講じることとしています。

    皆様にはご不便・ご迷惑をお掛けしておりますことを改めてお詫び申し上げますとともに、J-PARCセンターとして安全を最優先にMLF利用運転再開に向けた作業を進めてまいりますので、引き続きご理解・ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

     【本件に関するお問い合わせ】 

     <技術的なことについて> 
J-PARCセンター
物質・生命科学ディビジョン (担当 : 曽山、高田) 
TEL : 029-282-6424

     <報道担当> 
J-PARCセンター
広報セクション (担当 : 照沼、福田) 
TEL : 029-284-4593

     <補足説明> 

  1. 中性子標的容器の構造

中性子標的容器はステンレス (SUS316L) 製で、溶接により組み立てられた構造物であり、全長は2m、重量は約1.6tです。下図に示すように陽子ビームの入射する先端から1,050mmの範囲は水銀を内包する水銀容器の外側を更に二重壁の保護容器で覆い、水銀容器から水銀が流れ出た場合でも保護容器内のヘリウムガスの層に閉じ込める構造です。保護容器は陽子ビーム入射による発熱を冷却するために、内側容器と外側容器の間に冷却水を流しています。

  2. 欠陥の生じた箇所

下図に示すように保護容器の内側容器と外側容器を接合している箇所で、欠陥が生じたと考えられます。




*クリックすると、大きく表示されます。

     図  中性子標的容器の構造概念図

  3. 再発防止策

欠陥の生じた場所と同様な構造の全ての箇所について接合部を削り取り、改めて強固な溶接方法で接合します。従来、拡散接合と開先無しのTIG (Tungsten Inert Gas) シール溶接を行ってきた接合部に、開先加工を施しTIG溶接を行います。これは、一度で溶接するのではなく、複数回の溶接を重ね、浸透探傷検査で溶接に欠陥がないことを確認しながら溶接施工を進めます。


  
※組立工程において、拡散接合部に剥離が生じたと考えられる。更に、運転中にシール溶接部に亀裂が生じ、容器の外に通じるパスが生じたと考えられる。

  

[トップページへ戻る]