2つの物体の間に働く力には、いわゆる万有引力や電磁気的な力の他に、原子核をつなぎとめる力、原子核を崩壊させる力の、合計4種類が存在していることが知られています。
一方で、私たちが生活している空間は、縦横高さの3次元から構成されていますが、ミクロなスケールでは4次元以上の空間 (
余剰次元注3) ) の存在の可能性が理論的に示唆されています。もし、そのような余剰次元が存在するとなると、極めて近い距離に置かれた2つの物体の間に、4つの力では説明できない強い力が働くと予測されますが、これまでそのような力が働いている様が実験的には観測されたことはありませんでした。例えば原子の大きさ程度の距離 (0.1
ナノメートル注4) ) では、ニュートン重力の100
垓注5) 倍以上の強い力すら見つけることができていませんでした。
今回研究グループは、中性子と希ガスの原子との間に働く力を探索しました。J-PARCの世界最高強度のパルス中性子ビームを用いることで、原子の大きさ (0.1ナノメートル) の距離の領域において、未知の力の探索感度を従来の同様の実験に比べて1桁向上させることに成功しました。
研究グループは現在も探索感度のさらなる向上を目指して実験を続けており、今後も余剰次元の探索領域をより広げていくことが期待されます。
本研究は、科学研究費助成事業若手研究 (B) (JP25800152) 、学術創成研究JP19GS0210の支援を受けました。
本研究成果は平成30年3月22日 (木) 付 (米国東部時間) 米国科学雑誌Physical Review Dに掲載される予定です。また、本論文は米国物理学会のオンライン誌Physicsでハイライトされる予定です。