J-PARC加速器では、陽子の加速に高周波電場(注1)が用いられます。
陽子は高周波電場が作る進行方向の安定領域(バケツ)の中でバンチと呼ばれるひと塊の集団となって加速されます。 linacでは324MHz でビームを加速するために、ビームは ”Micro pulse”と呼ばれる構造をしており、3.1 ns 毎加速されます(図1)。
RCSは二つのバケツを持つように設計されています。linacのビームはRCSのバケツに対応する様に、”Micro pulse” を出したり止めたりしています。バケツの中に入れるビームの長さは“Width” と表記し、物理的な量としては進行方向の長さですが、速度を加味して時間で表現しています。
J-PARCではできるだけ多くの粒子を加速できるように1つのバケツに何度も繰り返してlinacからのビームを入れます(図1:LINAC Beam(macro pulse))。
RCSは 25 Hz で動いており、RCSの周期の開始時に 500μ秒程度以下のmacro pulseを 40 m秒ごとにlinac からRCSへ送っています。
注1:高い周波数で正負を交互に繰り返す電場のこと。
linacで用いられる高周波電場の周波数は地デジより少し低い周波数。
RCSで用いられる高周波電場の周波数はAMラジオ放送の周波数と同じ程度。
図1の ”intermediate pulse (中間パルス)” のようにRCSのバケツに合わせてlinacのビームを on/off する技術を使い、2つあるバケツのうちの片方だけにビームを入れRCSの1バンチのみ加速をすることができます。 加速器の実験ではビーム強度が低いほうが望ましいときがあり、そういった場合はThin_Ratioを小さくし、RCSのバケツへビームを入れる頻度を下げます。Thin Ratioが同じ16/32でも1バンチ加速と2バンチ加速では違いが生じます(図2)。 同じ粒子数の陽子を加速する場合でも、1バンチにして密度を高くした時と2バンチにして密度を低くした時で、ビームの振る舞いが変化する為、必要に応じてこれらを使い分けます。