センター長からの挨拶について

 

 
   2018年の年頭にあたり、一言ご挨拶申し上げます。
 
センター長からのメッセージ    新しい年を迎えるにあたり、科学の役割について考えてみたいと思います。科学は、古くは自然哲学として、おもに思索を通して自然の本質を理解しようという知的な好奇心の中で生まれて来た側面と、天文や測量など実用的なニーズに迫られて発展した側面の両面を持っています。古代ギリシャの数学者で哲学者のピタゴラスは、前者の例として、和音の構成から惑星の軌道に至るまで宇宙全体が数の法則に従うという思想を確立し、こうした原理の追求に重きを置きながらも、後者の例として幾何学的な手法を開拓しました。知的な好奇心と実用的なニーズは、人類の歴史の非常に早い段階から科学を進展させる「両輪」であったと言えます。

   その後、人類は、その強い好奇心の結果として、宇宙の果てまで観測することで宇宙の始まりを研究する手段を手にし、原子を構成する電子と原子核の発見、そしてさらにクォークやニュートリノという分割不可能な素粒子を発見してそれらの相互作用を理解することで物質の起源に迫り、また、命の設計図とも言える遺伝子に手を加えるという技術まで手にするに至りました。並行して、実用的な社会のニーズに応える形で科学技術が発展し、それが社会に大きな変革をもたらして来たことは言うまでもありません。

   好奇心に支えられた研究はそれぞれの領域で成功を収めており人類の知識の地平をひろげるという意味で人類に貢献していますが、予算的規模も巨大になり、知的好奇心それだけでは正当化できない領域に入っています。もっと社会のニーズに応える姿勢を明確にし、包括的に社会に貢献する意識が科学者ひとりひとりに求められる時代に入っていると感じています。

   J-PARCでは、昨年1年で12件の研究成果のプレスリリースがあり、52報の新聞記事などとして、社会でも取り上げて頂きました。プレスに関連しない新聞報道 (研究内容に関するもの) も11報と伸びています。中には、ニュートリノ振動に代表される知的好奇心を刺激する結果から、新しい太陽電池材料の開発に繋がる、いわば社会のニーズに直接に応えうる成果があります。重要なのは、どちらもワクワクするような成果だと言うことです。

   今年も、J-PARCは多目的施設として、「両輪」を推進していきます。研究成果を生み出すことはもとより、それを広く社会と共有することで、多くの人に認めてもらえる研究施設として邁進していくことを誓いまして、新年のご挨拶とさせていただきます。


  平成30年1月吉日
J-PARCセンター長
齊藤 直人