MLF月間報告2018年4月

装置整備

BL01 四季における磁場実験環境整備と初の磁場実験の成功

四季は標準試料環境として4K GM冷凍機を有しているが、さらに利用可能な試料環境の拡大を目指して装置整備を進めている。その一環として進めてきた、MLFの共通試料環境機器の一つである7T超伝導マグネットの利用環境整備と動作試験およびオン・ビーム実験の結果について報告する。

四季では試料環境機器は真空散乱槽のフランジ面に直接取り付けることになるが、そのフランジ面はMLFの共通試料環境機器を取り付け可能なサイズとなっており、7T超伝導マグネットも同様に取り付け可能である。しかし、真空散乱槽の一部や遮蔽体等に鉄材が使われていることや、試料位置のほぼ真下に磁気浮上型のターボ分子ポンプ、ビームライン上流側に同じく磁気浮上ベアリングを使用するフェルミチョッパーが設置されていることが高磁場環境を利用する上で制約となっている。

そこで、漏れ磁場がこれら装置側の機器に及ぼす影響および鉄材によってマグネットにかかる力を見積もるために、Femtet®による漏れ磁場の計算を行った。計算の結果、もっとも大きな制約となるのはターボ分子ポンプの許容磁場(メーカーによるとローター部で横方向に50 G以下)であることがわかった。そして、2015年6月のビーム停止期間中に四季において1 Tまでのオフ・ビーム磁場印可試験を行い、漏れ磁場の値が計算と比べて妥当であることを確認した[1,2]。ターボ分子ポンプの位置における漏れ磁場はポンプをマグネットから離せば低減することが可能である。そこで、ターボ分子ポンプへの排気経路をなるべく妨げないよう、ポンプの取付フランジを拡張し、取付位置を真下に25 cm下げることとした [3]。以上の検討・改造の後、利用可能な磁場を見積もるために、2017年12月のビーム停止期間中に再度マグネットを四季に設置してオフ・ビームでの磁場印可試験を行い、ターボ分子ポンプ直上を含む数カ所において漏れ磁場を計測した。ポンプの構造上の制約からローター部から若干離れた位置の磁場しか測定することはできなかったが、測定結果から四季における利用可能な磁場を当面3 T以下とすることとした。(なお、この値は十分安全を見越して定めた上限であり、マグネットは必ずターボ分子ポンプの停止状態で使用することと、マグネットの使用後は消磁を行うことから、実際の許容磁場はもっと高いと考えられる。今後、計算結果と磁場測定結果の精査によるローター位置でのより正確な磁場の値の見積もりや、他施設での同種ポンプの運用状況の調査により上限値を見直すこともあり得る。)

こうして四季においてマグネットを利用する準備が整ったので、今月実際にオン・ビームでの磁場中非弾性散乱測定を行った(図1(左))。試料は比較的低磁場でも磁場変化が見られるものとしてTbB2C2の単結晶を選んだ。この物質は、粉末試料を用いた先行研究により、低温で3.5 meV付近に現れる磁気励起が1 T程度の磁場によって高エネルギー側にシフトし強度が減衰することが報告されている[4]。実験では試料を4 Kに冷却し、試料を回転させながら測定した上で、粉末試料のデータを模擬するために測定データの粉末平均をとった。図1(右)に入射エネルギーEi = 10 meVを用いて、磁場をH = 0-3 Tの間で変化させて測定した磁気励起スペクトルを示す。0 Tで3 meV付近に現れる磁気励起が磁場の印可によりエネルギーの高い方へ移動し、かつ、強度が減少する様子が観測され、文献4の結果をほぼ再現することが確認できた。検出器上の強度分布を確認したところ通常の実験に比べてバックグラウンドが高くなってしまう問題はあったが、その一因はマグネットの設置スペース確保のためにビームスリットの一つを取り外したことにあると考えられるため、今後専用ビームスリットの整備等によって改善させてゆく。

ここで述べた一連の試験・測定には装置グループ以外の多くの方々にお世話になりました。磁場計算はCROSSの吉良弘氏によるものです。マグネットの設置・運転に際しては、SEチームおよび中性子利用セクション・共通技術開発セクションの技術者の皆様にお世話になりました。TbB2C2の磁場実験にはJAEA物質科学研究センターの金子耕士氏に協力いただきました。

参考文献
  1. MLF Annual Report 2015.
  1. R. Kajimoto et al., Proc. ICANS-XXII, to be published in J. Phys.: Conf. Ser.
  1. 3月例報告 2017年12月.
  1. A.M. Mulders et al., Physica B 359-361, 1231 (2005).

図1  (左) 四季の真空散乱槽にマグネットを設置する様子。(右) TbB2C2で観測された磁気励起の磁場依存性。

BL16 装置制御PCのメンテナンス

SOFIAではWindows上で動作するNational Instruments社のシステム開発ソフトウェアLabVIEWを用いて装置制御プログラムを自作し、一連の反射率測定に用いている。市販の機器はWindows用のデバイスドライバがほぼ間違いなく提供されている上、機器によってはLabVIEW上で動作するプログラムが提供されていることもあり、装置制御プログラムを介した機器の連動制御を行う上での開発効率化に寄与している。

一方、ここ数年で通信エラーが生じる頻度が増加傾向にあり、またOSのサポート切れの問題もあるため、今回5年以上前に導入したWindows 7の更新を行うこととした。新たに導入したOSはWindows 10で、現時点で最も長期にわたるOSサポートが期待できるが、OSの設計変更や64 bit化による機器のトラブルも懸念される。実際、更新に当たっては検出器を動作させるためのライブラリー、モーター制御に用いているシーケンサーの通信ドライバー、試料環境機器(リモートでの液体注入に用いる電磁バルブ制御用のリレー)の通信ドライバー等で問題が生じ、その対応に1ヶ月ほど要したものの、無事にWindows 10への移行に成功した。4月下旬よりユーザー実験での利用を開始し、現在は長期安定性の確認を行っている。

図1 移行前後のスクリーンショット。 ※上が移行前のWindows 7、下が移行後のWindows 10。

論文リスト

学術誌

プロシーディングス

学位論文

BL15

受賞

2017年度量子ビームサイエンスフェスタ学生奨励賞

  • 2018-03-03