■ J-PARC News 第119号より       (2015/03) 
●二川正敏氏らが2014年度日本機械学会賞 (技術) を受賞
  二川正敏 物質・生命科学 副ディビジョン長らのグループが、「高強度パルス中性子源実現のためのマイクロバブル」を利用した液体金属中の圧力波抑制技術の開発」で、2014年度の日本機械学会賞 (技術) を受賞しました。

  この技術開発は、世界最大強度のパルス中性子源を実現させた先進技術です。水銀標的に大強度陽子ビームを照射した際に、水銀中に発生する強力な圧力波による衝撃力が硬い金属容器の表面を損傷し破壊へと繋がります。その抑止策として、流動する水銀中にヘリウムガスの微小な泡をわずかに混入させることで、圧力波をクッションのように受け止めさせ、衝撃力を低減させたものです。


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●小林隆氏、読売テクノ・フォーラム第21回ゴールドメダル賞を受賞
  小林隆 素粒子原子核ディビジョン長は、読売テクノ・フォーラムが毎年優れた業績を挙げた気鋭の日本人研究者3名に贈るゴールド・メダル賞の一人に選ばれました。受賞テーマは、「電子ニュートリノ出現の発見」で、3月20日読売新聞に掲載されました。

   
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●原田寛之氏、2015年日本物理学会若手奨励賞受賞で表彰 (3月21日) 
  加速器第二セクションの原田寛之氏が2009年博士論文 (広島大学・理学博士) "Painting-injection study using a virtual accelerator in a high-intensity protonAccelerator"とその後の研究業績で、ビーム物理領域における標記奨励賞を受賞しました。この賞は日本物理学会が設けた、ビーム物理学分野において、若手研究者の独創性に優れ、世界的にも高い評価を受ける研究業績などを受賞対象とし、将来を担う研究活動を奨励するための賞です。
   
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●MLFが400kW運転を開始 (3月10日) 
  物質・生命科学実験施設 (MLF) は10日から、陽子ビームの受け入れを、300kWから400kWへ増強した利用運転に移行しました。これに伴い、中性子の発生数は約30%強増えることとなり、より効率的に実験が行えるようになりました。



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●ミュオンで地球進化の謎に迫る
   - 地球深部に新しい水素原子が存在する可能性発見 - 
  地球内部で水素がどのように存在するかを明らかにすることは、地球の進化や地殻の動きといった地球のダイナミクスを知る上でとても重要です。J-PARCミュオンセクションの門野良典氏、小嶋健児氏らの加わる研究グループは、ミュオン実験で、地球深部の岩石中の水素がこれまでの定説とは違い、中性水素として存在する可能性を初めて確認しました。今回の発見により、地球の進化とダイナミクスの研究に新しい展開が期待されます。

  水素は宇宙空間に最も豊富に存在する元素で、地球上では酸素と化合した水(H2O) の状態で大量に存在し、海は地球表面の約70%を占めています。さらに地球内部にも含水鉱物の結晶構造中に水酸基 (OH-) として相当量の水が存在すると考えられています (図1) 。

  本研究では、水素が水酸基としてではなく、原子状の中性水素 (H0) として地球深部の岩石中に存在する可能性を、ミュオン・スピン回転法 (μSR) ※1を用いて検討しました。正に帯電したミュオンは、水素の原子核である陽子の軽い同位体に相当します (図2) 。測定には、深部マントルを模擬する物質として、合成スティショフ石を用いました。高温高圧下で形成されるスティショフ石は、石英 (SiO2) の高圧相※2であり、ケイ素と酸素による八面体骨格が規則的に並んでいます (図3) 。常圧下の石英は、四面体骨格で構成され、骨格間の大きな隙間に中性水素を取り込むことが知られています (図3) 。そこで、研究グループはスティショフ石にミュオンを注入して、ミュオンの存在状態を調べました。その結果、スティショフ石に注入されたミュオンの多くが、電子を一つ束縛したミュオニウム (中性水素に相当・図2) として、スティショフ石の結晶格子 (八面体骨格) の隙間に存在することが分かりました (図3) 。このことは、地球深部のマントルに、これまでの研究で想定外だった中性水素が存在する可能性を示唆するもので、地球の進化とダイナミクスの研究に新しい展開が期待されます。

  本研究は、東京大学理学研究科、広島大学、物質・材料研究機構、愛媛大学、理化学研究所との共同研究で、J-PARC、カナダのTRIUMF研究所、イギリスのラザフォード・アップルトン研究所、スイスのポール・シェラー研究所で行われ、オンライン科学雑誌Scientific Reportsの2月13日版に掲載されました。
http://www.nature.com/srep/2015/150213/srep08437/full/srep08437.html
  ※1  ミュオン・スピン回転法 : 正ミュオンを物質に注入し、その物質の様々な性質を解析する方法。物質中の内部磁場の強さを極小スケールで直接観測できることや、正ミュオン自身が水素と同様に振る舞うことなどが特徴。物質に注入・停止したミュオンの周辺の0.5ナノメートル程度の局所的な範囲の情報が得られる。
  ※2  高圧相 : 成分は同じでありながら、性質や構造が異なる高密度な物質。高温高圧環境下で形成される。例えば、ダイヤモンドは黒鉛の高圧相である。
   


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●加速器運転計画
   
   4月の加速器運転は下記の通り。尚、運転計画は機器の調整状況により変更が生じる場合があります。

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●県原子力安全委員会でハドロン実験施設の事故再発防止策について審議 (3月5日) 
   5日、茨城県原子力安全対策委員会が開催され、J-PARCセンターが実施してきたハドロン実験施設での放射性物質漏えい事故の再発防止策の措置結果について審議されました。委員会では、J-PARC側から安全管理や施設改修の取組み状況などを詳細に報告しました。その結果、再発防止策は妥当と了承されました。なお、委員会からは、今後も更に安全意識の維持・向上へ取組むこと、住民への積極的な情報提供などが求められました。
   
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●第2回加速器施設安全シンポジウム (3月6日) 
  J-PARCセンターは、標記シンポジウムを6日原子力科学研究所先端基礎研究交流棟で開催しました。CERN (欧州原子核研究機構) やポールシェラー研究所など、国内外の加速器施設や大学の加速器安全担当者など、約120名 (外部機関約60名) が参加して講演と討論が行われ、J-PARC事故からの回復と教訓、加速器施設の利用に伴う安全確保の在り方について活発な情報交換が行われました。


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●Flavors of New Physics (3月9-10日) 
  J-PARCなどの実験施設で進められている、素粒子標準模型を超える新しい物理現象を探る研究に関するワークショップが、初めて東海村で開催されました。国内外から約70名の研究者が集まり、理論・実験の双方の観点から、現在の状況や将来の展望について議論が行われました。


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●第6回MLFシンポジウム (3月18日) 
  標記シンポジウムが、KEK物構研サイエンスフェスタ2014、PFシンポジウムと合同で開催され、全体で570名を越える参加者となりました。MLFシンポジウムでは、施設報告、ビーム増強に向けた取組みなどの報告、利用実験での成果発表が行われました 。ユーザーの要望を伺うセッションでは、事前の調査内容の紹介と施設側の取組みなどが報告され、活発な議論が行われました。合同開催されたこれらの会議についての詳細は、物構研ホームページ
http://imss.kek.jp/news/2015/topics/0319IMSS-festa/をご覧ください。


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●サイエンスカフェ in リコッティ (3月14日) 
  原子力機構主催のサイエンスカフェで、中性子が切り拓く未来「〜物質の不思議と生命の謎を茨城で探る〜」と題して、坂元眞一J-PARC広報アドバイザーと茨城大学フロンティア応用原子科学研究センターの石垣徹教授が、講演を行いました。

  J-PARCでは中性子を用いた、さまざまな物質の機能や原子構造、生命物質の謎を探る最先端の研究を進めています。今回のカフェでは、中性子を使うとどのような研究ができるのか、その研究成果は私たちの生活や社会にどのように役立っているのか、また、茨城県の中性子実験装置での研究について紹介しました。


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