平成26年5月23日 J-PARCセンター長 池田裕二郎
J-PARCハドロン実験施設における事故後1年を迎えるにあたって ( センター長から皆さまへ )
平成25年5月23日に発生したJ-PARCハドロン実験施設における放射性物質漏えい事故では、皆さまに多大なる御迷惑と御心配をおかけしました。ここに改めて深くお詫び申し上げると同時に、起こした事を冷静に反省し、事故からの学びをもとに、同じ間違いを起こさないよう、今後の運営に生かしていくことを皆さまにお誓い致します。
事故後1年間、私たちは、本来のJ-PARCへの信頼を失った事実を重く受け止め、それぞれの立場から信頼回復につながる作業を行って参りました。その作業の基調は「安全」という言葉です。安全は、何も起こらなければ意識されないものですが、実は障害や危険と裏腹であることを、私たちはJ-PARCを運営していくうえで常識としなければならず、そのためにはこれまでにない意識の向上が必要です。
そうした基本的な意識の改革を最前提としながら、この1年間は、事故の原因について、電源基盤の発熱対策が不十分であったことを解明し、ハード面の対策として、それらの電源の交換を行うとともに、放射性物質を漏えいさせないよう実験施設を密閉する改修工事を筆頭に、施設の改善を鋭意進めております。作業現場では、事故を未然に防ぐための安全パトロールも自発的に行っています。
ソフト面の対策としては、安全体制を大幅に変更し、各施設における責任の所在と指揮命令系統を明確にしました。また、外部有識者を含む専門家メンバーで構成する放射線安全評価委員会を設置するとともに、施設管理責任者の常駐および不在時の代理者の選定を義務付け、異常事態が起きた場合の体制として、従来の「基本体制」と「事故体制」の間に「注意体制」という段階を設け、事故の兆候となり得る事象の適確な把握と素早い判断、対応が可能になるようにしました。
そして、J-PARCの職員が、常時安全を自覚し、適切な行動を取れるよう、講習会などによる教育や放射線事故対応訓練を行ってきました。センター長自ら職員の現場のセンター員と懇談する場も設け、よりよいコミュニケーションの上に安全意識が定着するように心がけています。さらに、住民の皆さまにJ-PARCの情報をお届けするだけでなく、皆さまからの意見をお聞きする場もこれまで以上に設け、皆さまにJ-PARCを育てて頂きたい、と考えております。
こうした対策を講じた結果、J-PARCが、研究者が安心して研究活動を邁進し、地元住民の皆さまと東海発の世界的成果をあげる喜びを分かち合えるような実験施設となるよう、職員が一丸となって、安全な施設運営に取り組んで参ります。
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