2015年2月6日
J-PARCセンター
  
J-PARCの3GeVシンクロトロン加速器が性能を大幅に向上
-  1MW相当のビーム加速に成功  -
  
○ J-PARCの3GeVシンクロトロン加速器が、試験運転において、所期性能である1MW相当の陽子ビームの加速に成功し、本方式の加速器として、世界最高性能を大幅に向上した

○ J-PARCで行われている、物質科学、生命科学、素粒子物理、原子核物理など各分野における研究の更なる進展に期待

○ 今後は、物質・生命科学実験施設に、利用運転での1MWのビーム供給を目指す
  
  独立行政法人日本原子力研究開発機構 (理事長 松浦祥次郎) 及び大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 (機構長 鈴木厚人) の共同運営組織であるJ-PARCセンター (センター長 池田裕二郎) は、1 ) 大強度陽子加速器施設J-PARCの第2段加速器である3GeVシンクロトロン (3GeV Rapid Cycling Synchrotron : RCS) において、平成27年1月10日の試験運転時に、所期性能である1MW相当のビームパワーでの陽子の加速に成功しました。大強度の2 ) 高繰り返し陽子シンクロトロンとしての世界最高性能を更に向上させたことになります。

  RCSのビームパワーの大強度化は、RCSがビームを供給する物質・生命科学実験施設及び50GeVシンクロトロンにおける、様々な実験のための二次粒子の強度を上げるために不可欠な要素です。物質・生命科学実験施設では、1MW陽子ビームの供給により、二次粒子である中性子ビームの強度が上がることで、創薬にかかわる多くのタンパク質などこれまで見えなかったものを見ることができるなど、研究の著しい進展が期待できます。

  RCSは、物質・生命科学実験施設及び50GeVシンクロトロンへ300kWのビームを供給してきており、今後はまず400kWへの増強を予定しています。更には、ビーム試験を重ね、利用運転時の陽子ビーム強度を徐々に増加させて、1MWのビーム供給を目指します。

  
 【 本件に関する問い合わせ 】 

  ‹成果に関すること› 


   J-PARCセンター 加速器ディビジョン 
   金正 倫計 
   Tel : 029-284-3172
   E-mail : kinsho.michikazu@jaea.go.jp

  ‹報道担当› 

   J-PARCセンター 広報セクション
   加藤 崇/福田 浩 
   Tel : 029-284-3587
   E-mail : fukudahi@mail.kek.jp
  
  【 参考資料 】  

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  図1 : ビームパワー大強度化への取組み概念図
  ビームパワーを高めるには多数の陽子を加速することが必要です。RCSで1MWのパワーを出すため、まず前段部であるリニアックの構成機器を大強度仕様に入れ替えて性能を向上させました3 ) 。更に、RCSの構成機器である4 ) 電磁石の磁場及び高周波加速空洞の周波数を精度よく調整することで、1パルス当たり8.41x1013個 (84兆1000億個) の陽子の加速に成功しました。

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  図2 : 1MWに必要な陽子数と周波数と加速エネルギーの関係
  1パルス当たり8.41x1013個 (84兆1000億個) の陽子を25Hz (1秒間に25回) 、3GeVまで加速して取り出すと、ビーム出力は1MW相当となり、RCSの所期性能となります。
  


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  図3 : RCSに設置した電流モニタ値。横軸 : 時間、縦軸 : 1パルス当たりの粒子 (陽子) 数。赤色のラインが1MW相当のビームパワーを示す8.41 x 1013個の粒子 (陽子) 数で、なおかつ加速途中でロスしていないことを示しています (加速途中でロスがあると粒子 (陽子) 数が減少します) 。試験運転では、小さなビーム強度 (一番小さなものが黒色のライン) から順に調整し、最後に1MW相当の粒子 (陽子) の加速に成功しました。

  
  【 用語解説 】  

  1 ) 大強度陽子加速器施設 (J-PARC:Japan Proton Accelerator Research Complex) 

  日本原子力研究開発機構と高エネルギー加速器研究機構が共同で建設・運営しているJ-PARCは、リニアック、3GeVシンクロトロン、50GeVシンクロトロンの加速器群と、物質・生命科学実験施設、ニュートリノ実験施設、ハドロン実験施設の実験施設群からなります。素粒子物理、原子核物理、物質科学、生命科学、原子力など幅広い分野の最先端の研究を行っています。


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  J-PARC全体図

  2) 高繰り返し陽子シンクロトロン

  シンクロトロンは、リング状の構造に陽子などの粒子を周回させながら入射・加速・取り出しを行う加速器です。その繰り返しを数秒かけて行うものを遅い繰り返しのシンクロトロン、1秒間に数回以上 (RCSでは1秒間に25回) 行うものを高い繰り返しのシンクロトロンと呼びます。

  3) リニアックの構成機器の大強度仕様化

  リニアックは下図の様にイオン源と複数の加速器から構成されています。今回はイオン源を新型に入れ替えることで陽子数を約2倍に増やしました。また、倍増した陽子を加速できる能力を備えた新型の線形加速器 (RFQ) に入れ替えました。


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  4) 電磁石、高周波加速空洞

  電磁石は、粒子ビーム (J-PARC加速器では陽子ビーム) の軌道を曲げたりビームを収束させるための装置です。高周波加速空洞は、高周波を用いて粒子を加速するための装置です。

  
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