■ J-PARC News 第65号より       (2010/8) 
●第21回IUPAC化学熱力学国際会議 (ICCT-2010) 
  平成22年8月1〜6日、 「環境問題に熱化学がどこまで迫れるか」 をテーマとした、国際会議 (ICCT-2010) が、日本学術会議と国際純粋・応用化学連合によりつくばエポカルで開催された。熱化学の観点で、熱電変換材料開発からバイオ、地球の熱収支にいたる幅広い分野を対象とした議論が行なわれた。JーPARC/MLFでは、半年以上も前から本会議において中性子、ミュオンを利用した化学熱力学研究の可能性をアピールする準備が進められ、会議期間を通してJーPARCブースを出展し、研究紹介パネル、JーPARC模型の展示、DVDの上映など担当者を常駐させて行い、来場者にPRを行った。また、3日には新井正敏物質・生命科学ディビジョン長がPRの講演を行った。
  本会議初日に行なわれた開会式とレセプションには天皇、皇后両陛下がご臨席された。レセプションでは、同会議国際アドバイザーでJーPARCに深く関わる藤井保彦氏 〔現 (財) 総合科学研究機構副理事長/平成22年3月までJAEA量子ビーム応用研究部門長〕 が天皇陛下と歓談され、JーPARCについてご説明し、是非ご視察にお出で頂きたいとお伝えした。

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●JーPARCイメージングライン研究会 (7月30日) 
  JーPARCの中性子ビームラインに、中性子イメージング装置の建設を推進するための研究会が上野のJAEAシステム計算科学センターで、茨城県中性子利用促進研究会 (中小企業利用研究会 非破壊分析・評価法分科会) とJーPARC/MLF利用者懇談会 (微量分析・非破壊検査分科会) との共催で行われた。実験装置提案は、北海道大学大学院工学研究科の鬼柳善明教授が代表者となりJーPARCに出され、現在審査が行われている段階。装置実現には、ユーザーグループの結成が大事と考えられる。研究会では、パルス中性子を利用したイメージングの現状、低エネルギー領域中性子、共鳴領域中性子、偏極中性子を利用したイメージング等についての報告が行われた。次に、JーPARCイメージング装置への期待として、植物分野の研究、自動車開発、セメント研究、コピー機開発及び燃料電池開発の応用例等について、大学、研究機関、企業から紹介された。
  最後に、提案装置の概要を鬼柳善明教授が行い、中西友子東京大学教授がディスカッションリーダーとなって研究テーマ及び装置に関する要望などについて議論が進められた。

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●JーPARC/MLFの利用状況 (物質・生命科学実験施設) 
  JーPARC/MLFの課題申請は年2回 (A:上期、B:下期) 行なわれている。平成20年12月のビーム供用開始以降の中性子、ミュオンビーム利用について、申請課題数、課題採択状況、ビームタイム日数、及び、各期間における供用実験装置数について、下の表にまとめて示す。また、各期間における課題申請を、分類別に円グラフで示した。海外からの申請は、初回は1%だったが、平成22年度下期 (2010B) で9%となっている。

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●リニアック
  リニアックでは、平成23年度のビーム強度増力工事に向け、後段部の加速空洞の製作を継続して進めている。右下の図はACS加速モジュールの断面図、右上の写真は加速モジュール完成の写真。加速モジュールには、17個のセルがロウ付けと言う接合工法により繋ぎ合わせられた加速空洞が2台組み込まれる。左の写真は、セルのロウ付けのため電気炉にセットされた加速空洞。

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●物質・生命科学実験施設
  物質・生命科学実験施設では、現在、6本 (BL02、BL09、BL11、BL15、BL17、BL18) の中性子ビームラインの建設を進めている。BL02 (ダイナミクス解析装置) は、ビーム導管用スタンドが床に設置された。BL09 (革新型蓄電池研究専用装置) では、MLF母屋東側のビームライン建設エリアの土砂掘削が進められた。BL15 (大強度型中性子小中角散乱装置) では、装置本体遮蔽体室のコンクリート壁等の設置をほぼ終了した。

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●ハドロン実験施設
  ハドロン実験施設では、KOTO実験に使用するCsI検出器の組立てを進めている。また現在、50GeVシンクロトロンからの受入れ陽子ビームの強度は5kWの申請値であるが、将来、ビームパワー増強の許可申請に先立ち、ビームダンプ室でコンクリート遮蔽体の追加設置を実施した。

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●ニュートリノ実験施設
  ニュートリノ実験施設のターゲットステーション棟では、実験に使用した電磁ホーンを交換する事が発生した場合、ステンレス製遮蔽体容器に封入して、施設内に保管する。今回、ターゲットステーション棟内で、電磁ホーンNo.1予備機を使っての容器に吊込む試験を実施し、問題が無いことを確認した。また、既設電磁ホーンの修理、交換が必用な場合、遠隔操作による電磁ホーンの着脱が必用となるため、準備した各装置の運転操作試験を実施した。

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●科学写真家 「吉岡さとる氏」 がJーPARC撮影 (8月9日) 
  世界各国の高エネルギー物理学研究所などを撮影している、科学写真家の吉岡さとる氏がJーPARCを撮影のため来訪。MLF、ハドロン、ニュートリノモニター棟、中央制御棟、リニアッククライストロンギャラリーなどで撮影を行った。

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●中国中央テレビ局 (CCTV) の取材 (8月11日) 
  中国中央テレビがJーPARCを取材した。茨城県が設置した世界最高性能の中性子単結晶解析装置 (iBIX、BL03) や、そこでの研究内容について取材。茨城県ビームライン産業利用コーディネーターの大橋氏が説明を行った。タンパク質の構造解析で中性子を用いれば、X線では困難な水素原子を中性子線で捉えることができ、それが創薬開発に繋がるとの説明を受け、興味深げな様子であった。

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● 「第9回東海村子ども科学広場」 にJーPARCブース開設 (8月19日) 
  東海村子ども科学広場は、子どもたちに 「科学を楽しむことができる場を提供し、科学に対する興味や関心を高め、子ども自ら科学実験を体験することで発見する喜びや感動を与える」 などの理念で、東海村中央公民館/東海村子ども科学広場実行委員会が開催・実施している。今回は19団体が参加。JーPARCは初参加で模型、PRビデオ、説明パネルユニットなどで子どもたちにアピールした。

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●外国人ユーザーとの意見交換会 (8月17日) 
  JーPARCで働く海外からの研究者やユーザーなどと村上達也東海村長の意見交換会が行われた。海外からの研究員として、ニュートリノのT2K実験に参加のディビッド・ワーク教授 (ラザフォード・アップルトン研究所) とJAEAに所属の研究員3名、ステファヌス・ハルヨ研究員 (中性子利用セクション) 、パトリック・ストラッサー研究員 (ミュオンセクション) 、サハ・プラナブ研究員 (加速器第3セクション) が、また、ハドロン実験関係者は家入正治研究員が代理で、進行役として東海村国際交流協会会長の小林健介氏 (元JAEA職員) 、永宮正治JーPARCセンター長などが出席された。成田空港からのアクセス、村内の交通標示、宿泊施設などについて、また、家庭を持ち東海村に住む研究員から子どもの学校環境、病院関連など、各種場面で困ったこと、生活環境整備などについて意見・要望が出された。その後、開かれた交流会には海外からのユーザーも多数加わり懇親を深めた。

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●ご視察等
  7月26日  フランス原子力庁CEA/国家原子力科学技術研究院INSTN Joseph Safieh教授
  8月 6日  文部科学省研究開発局 藤吉尚之企画官
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