平成22年11月26日から物質・生命科学実験施設 (MLF) では、3GeVシンクロトロンからの受入陽子ビームパワーを200kWに上昇させた供用運転が開始された。尚、中性子減速材である水素を冷却するためのヘリウム循環系内の不純物 (水分) を除去するため、12月2日にMLFの運転を一旦停止して精製作業を実施し、12月10日に運転を再開した。 |
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●ニュートリノコラボレーションミーティング |
(12月6〜11日、いばらき量子ビーム研究センター)
JーPARCと、およそ300km離れたスーパーカミオカンデとを結ぶニュートリノ研究である「T2K実験」などの研究成果を検討するニュートリノコラボレーションミーティングが開催された。各種実験装置、ソフトウェアなどに関するプレミーティングや全体ミーティングが開かれ、各グループからの報告や意見交換などが行われた。
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●特集:JーPARCにおける実験成果の紹介 |
汚れにくいコンタクトレンズは出来るか? < 中性子反射率計:ARISA-U (BL16) >
コンタクトレンズの素材や水族館の水槽などに使われている透明なアクリルは、耐水性を持ち、且つ水とのなじみも良い性質を併せ持つ。その分子構造は、分子どうしが糸のようにつながる「高分子」状態、表面では和紙のように糸の端が表面に見え隠れしている。今回、九州大の田中教授のグループは、アクリル
が水に浸されたとき水とアクリルの境目 (界面) がどのようになるかを中性子ビームラインARISA-Uを利用して観測。水に浸されることで表面の不安定だった高分子が融解し、より深部に入り込むことを明らかにした。この研究成果は、学問的にも興味深いだけでなく、汚れが付きにくい優れたコンタクトレンズ素材などへの応用も期待されている。
詳細は、http://www.kek.jp/newskek/2010/mayjun/AcrylAndWater.htmlを参照願います。
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●加速器運転計画 |
1月の加速器運転は下記の通りです。尚、運転計画は機器の調整状況により変更が生じる場合があります。
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●リニアック |
リニアック棟では、高周波四重極リニアック予備機を組立て・調整中で、現在、大電力通電試験に向けて工場でパーツの製作を進めている。また、リニアック後段部に設置される加速空洞は、メーカーで月1台のペースで増産されている。後段部には21台の加速空洞が必要で、最近1台が搬入され、現在納入品は5台となった。搬入後、高周波エージング試験を行いビームラインへ本設するまでリニアック棟で仮置きされる。
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●物質・生命科学実験施設 |
物質・生命科学実験施設のBL16では、高性能試料水平型中性子反射率計 (ARISA-U) の更新作業を実施。建設中の6本の中性子ビームラインでは装置本体設置のための建屋工事、ビームラインへの装置、遮蔽体等設置のための墨出し作業などが行われた。ミュオンエリアでは実験装置改良後のコミッショニングなどが進められている。
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●ハドロン実験施設 |
ハドロン実験施設のK1.8BRビームラインでは、K中間子原子実験の準備を実施中。また、KLビームラインでのKOTO実験用CsI検出器の組立てが再開された。
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●中性子集光用非球面スーパーミラーデバイスの開発 |
中性子を利用した材料構造解析実験等では、高強度の中性子ビームが必要とされ、中性子を集めて強度を高める中性子集光用ミラーが用いられる。JーPARCでは、大面積の非球面ミラーの超精密基盤形状加工技術の開発と、同基盤への高性能スーパーミラー (中性子を効率よく反射させる鏡) の成膜技術の高度化について検討を進めた。長さ400o
の1次元楕円集光ミラーを開発し、MLF/BL10のNOBORUにおいてフォーカスミラーで中性子を集光させる実験を行った。その結果、照射位置における中性子数を単位面積当たり50倍にすること、及び集光させたビーム焦点サイズを0.2mm以下とすることに成功し、世界最高クラス性能が確認された。
(本研究は、独立行政法人科学技術振興機構 (JST) の先端計測分析技術・機器開発事業要素開発プログラムのもと大阪大学との共同研究で実施された。)
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●日本中性子科学会で奨励賞、技術賞を受賞 |
平成22年12月9〜11日、日本中性子科学会第10回年会が東北大学片平キャンパス (さくらホール) / 仙台市で開催された。10日に行われた、学会賞授賞式及び感謝状授与式では、JーPARC関係者・グループが「奨励賞」及び「技術賞」を受賞した。
「奨励賞」には、JーPARC中性子源からのパルス中性子の偏極 (中性子のスピン方向を揃える) に適した「オンビームSpin-exchange optical pumping 3He偏極フィルターシステム」の開発・実用化を短期間で成し遂げた吉良弘JーPARCセンター博士研究員が選ばれ、受賞講演を行った。「技術賞」には、物質・生命科学実験施設が稼動開始して間もなく世界のトップレベルの実用化に成功したことから、大強度パルス中性子源の開発を担当したJーPARC中性子源開発グループ (代表:池田
裕二郎JーPARC副センター長) が選ばれた。受賞代理及び受賞講演を、ニ川正敏中性子源セクションリーダーが行った。また、中性子科学研究への貢献が多大であるとして、JRR-3の永年にわたる改良及び安定的運転に対し、原子力機構研究炉加速器管理部 (代表:山下清信部長) へ感謝状が贈られた。
本年会では、基調講演1件、招待講演2件、受賞講演4件、一般講演18件が行われ、ポスタープレゼン170件となった。最終日には、学会初の市民講座が開催され、中性子の利用がどのように我々の生活に役立つか、また、ガン治療の現状などについての講演が行われた。
(平成22年度現在の中性子科学会は、一般約570名、学生約70名の会員で構成されている)
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< 学会賞受賞及び感謝状授与された個人及び部署 >
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功労賞: (故) 三沢正勝 高エネルギー加速器研究機構特任教授
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学会賞:佐藤正俊 名古屋大学名誉教授 / 豊田理化学研究所
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奨励賞:吉良弘 JーPARCセンター博士研究員 / 日本原子力研究開発機構
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技術賞:パルス中性子源開発グループ (代表:池田裕二郎JーPARCセンター副センター長)
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感謝状:日本原子力研究開発機構 研究炉加速器管理部 (代表:山下清信部長)
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●ご視察等 |
12月10日 DESY研究所訪問団 (※)
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12月16日 シンガポール科学技術研究開発庁 リム・チュアンポー長官
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12月16日 (財) 原子力安全研究協会 松浦祥次郎理事長
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※ドイツ電子シンクロトロン研究所 (DESY) は、ドイツ・ハンブルク市郊外にある高エネルギー加速器を使って素粒子の性質を調べている国立の研究所。1989年以降長期にわたる良好な協力関係を継続し、今回、つくばキャンパスでのコラボレーションミーティング後、東海キャンパスで「S1-Global」実験のための機器等を見学、またJーPARCを視察した。 詳細は、http://www.kek.jp/ja/news/topics/2010/KEK-DESY.htmlを参照願います。
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