■ J-PARC News 第70号より       (2011/1) 
●リニアック加速器イオン源が1270時間の連続運転を達成
  JーPARCの加速器が加速する陽子を生み出す装置が「イオン源」である。イオン源は定期的にフィラメント等の消耗部品の交換を行うが、交換の際は加速器運転を停止するため、イオン源の長時間運転は加速器の稼働率向上や、JーPARCの利用実験時間増加のために重要である。イオン源は昨年11月〜12月にかけて、ビーム電流16mAで1270時間(53日間)の連続運転を達成した。 また、この時間はJーPARC運転スケジュールによるものであり、更なる長時間連続運転の可能性も確認された。

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●第2回MLFシンポジウム (1月17日-18日) 
  第2回MLFシンポジウムが平成23年1月17-18日に、高エネルギ−加速器研究機構 (KEK) 小林ホールにて、JーPARCセンターとKEK物質構造科学研究所の主催で開催された。シンポジウムは、共同議長である新井正敏 JーPARCセンター物質・生命科学ディビジョン長の開会挨拶で始まり、来賓として藤吉尚之 文科省量子放射線研究推進室長からのご挨拶、さらに永宮正治 JーPARCセンター長、下村理 KEK物質構造科学研究所長、および横溝英明 JAEA理事からそれぞれ挨拶があった。

  現在、物質・生命科学実験施設 (MLF) では、世界最高レベルの中性子やミュオンを利用した研究が行われており、その利用研究成果、実験装置や施設の現状や開発状況などについて、講演とポスター発表が行われた。講演は、特別講演を含め32件、ポスター発表は70件であった。まず加速器や中性子、ミュオン関連研究、検出器開発など各分野の全体報告があり、続いて中性子、ミュオン利用などに関して各装置担当者や実験利用者からの詳細な報告が行われた。特別講演では、福山秀敏 東京理科大学教授が「JーPARC / MLF What are coming and expected?」と題した講演を行った。またシンポジウム初日は、小林ホールロビーにて、県内中性子利用連絡協議会に加入の県内企業による企業展示も行われた。

  更に、今後のJーPARCでの利用実験を充実させるため、施設利用者 (ユーザー) とJーPARC関係者との意見交換等も実施した。これまでにユーザーからは、JーPARC施設や茨城県BL、実験環境の整備等に関する各種要望が、MLF利用者懇談会や中性子産業利用推進協議会などを通して寄せられており、それらの要望に対して加藤崇 JーPARCセンター物質・生命科学副ディビジョン長、林真琴 茨城県企画部技監、森井幸生 茨城県BL産業利用コーディネーターが、それぞれ回答した。終始、有意義な報告と議論、意見交換などが活発に行われ、最後に共同議長である池田進 KEK物質構造科学研究副所長からシンポジウム終了の挨拶があり、閉会となった。

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●特集:JーPARCにおける実験成果の紹介
  超電導導体コイル素線の内部ひずみ測定に成功!
   < 工学材料回折装置:匠 MLF / 中性子BL19 > 


  将来のエネルギー源として期待される核融合エネルギーの研究施設、ITER (国際熱核融合実験炉) 計画が、日本やEUなど7カ国・地域の共同プロジェクトとして進められている。ITERでは1億度にもなる超高温プラズマを閉じこめることのできる強力な磁場を生み出すため、優れた超伝導材料を開発してコイルを製作することが必要である。しかし超伝導材料でできた素線を導体状にしたときに材料内部にひずみが生じ、流せる電流が減少してしまうため、発生する磁場も弱くなってしまう。これまではITERで使用する直径40mmを超すような太い超伝導導体内素線の内 部ひずみを測定することはできなかったが、JーPARCの強力な中性子を利用できるビームラインBL19「匠」で、初めて測定することに成功した。解明された種々の現象を検証した結果は、今後のコイル製作過程の改善や磁場性能向上に役立つことが期待されている。


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  ※TFコイル用超伝導導体は、撚り線 (900本の直径0.82mm程度のワイヤー状超伝導素線と522本の銅線を撚り
     ながら束ねたケーブル状) をステンレスパイプ内に引き込み、それらをコンパクション (締固め) したケーブル状
     になっている。その導体を134ターンで巻いたTFコイルは、ITER構造概念図で見るように、縦16.5m、横9mのD
     型形状をしている。

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●加速器運転計画
  2月の加速器運転は下記の通りです。尚、運転計画は機器の調整状況により変更が生じる場合があります。

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●リニアック
  リニアックでは、1月7日からの加速器運転 (RUN#37) に向けて、イオン源のフィラメント交換作業を実施。加速器後段部加速空洞については、高周波エージング試験を開始した。また、クライストロン室では、後段部加速空洞の高周波源である972MHzクライオストロンの据付け・調整などを進めた。

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●物質・生命科学実験施設
  物質・生命科学実験施設では、BL02「DNA:ダイナミクス解析装置」本体室遮蔽壁の組立て、BL09「燃料電池実験装置」建屋の内装工事、BL11「PLANET:超高圧中性子回折装置」用キャビン (データ収集室&実験者控え室) の設置工事、BL15「TAIKAN:大強度型中性子小中角散乱装置」の光学機器・低速チョッパー・真空散乱槽据付け、動作試験、BL17「垂直反射率計」とBL18「千手」では、光学機器・T0チョッパー据付け、遮蔽体据付けなどを実施。

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●ハドロン実験施設
  ハドロン実験施設では、加速器高周波 (RF) 空洞に用いる磁性体コアを、FMサイクロトロン電磁石の磁場中で熱処理する準備などを実施した。

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●「大観」の真空散乱槽搬入 (12月23日) 
  中性子ビームラインBL15「大観」 (大強度型中性子小中角散乱装置) の真空散乱槽が、MLF第2実験ホールに搬入された。

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●「東海ドミトリー」利用開始 (1月17日) 
  JーPARC施設利用者 (ユーザー) の宿泊施設となる、東海ユーザー宿泊施設 (通称「東海ドミトリー」) が、いばらき量子ビーム研究センター (IQBRC) に隣接して完成し、17日から利用が開始された。宿泊室数は49室 (うち1室はバリアフリー対応) 、宿泊料金が 2,500円/泊。 管理運用はJーPARCセンターユーザーズオフィスが行う。利用申込み手続きなどの詳細については、http://is.j-parc.jp/uo/をご覧下さい。

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●ご視察等
     1月13日 国連安保理専門家パネルメンバー
     1月24日 CKorJーPARC (韓国JーPARCユーザーセンター) 理事会メンバー

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