■ J-PARC News 第77号より       (2011/8) 
●世界最高のリチウムイオン伝導率を示す超イオン伝導体を発見
 − 超高分解能粉末中性子回折装置「SuperHRPD」 (MLF/BL08) が活躍 − 

   電気自動車などに使われる既存のリチウムイオン二次電池は、電解質に可燃性有機電解液が用いられており、使用には安全装置が必須である。電池がさらに高容量と高出力を達成し、安全で信頼性に優れ長寿命なデバイスになるには、電池をすべてセラミックスで構成するのが理想で、それは究極の安全性に優れた電池 と考えられている。今回、超イオン伝導体である硫化物材料Li10GeP2S12のリチウムイオン伝導率が、室温において従来のリチウムイオン伝導体Li3N (6mScm-1) の2倍の値を示した。また、SuperHRPDがその結晶構造、イオン伝導経路を明らかにしたことで、不燃性かつ高安全性を有する全固体セラミックス電池が次世代電池として有力な候補であることが示され、蓄電池開発に新たな指針がもたらされた。 (8/1プレス発表) 。
また、同成果は英国科学誌「Nature Materials (2011年8月号) 」に掲載された。 (本成果は、東京工業大学、トヨタ自動車株式会社、KEKによる共同研究で得られた。) 
詳細については、http://www.kek.jp/ja/news/press/2011/080109/をご覧ください。

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●J-PARCで加速器用超高性能磁性体コアの量産に成功
 − 被災の中から大強度化に向けて − 

   J-PARCでは、高周波加速空洞に使われる金属磁性体の開発により、フェライトを用いた外国製品の2倍以上の加速勾配 (単位長さ当たりに印加出来る加速電圧) を持つ空洞を実現していた。50GeVシンクロトロンでは、これまで約150kWの陽子ビームをユーザーに供給してきたが、今後も更なるビーム強度の増強が求められる。その増強 手段の一つとして、加速周期をより短くすることが挙げられる。しかし、加速空洞の設置スペースには制限があり、必要な加速電圧を得るには加速空洞の高勾配化が要求される。金属磁性体コアは、製造時の熱処理を磁場中で行うことで、更に高い性能を得ることが知られている。ところがJ-PARCの磁性体コアは、直径80p、厚さ2.5p、重量60sと大型で、それに適した電磁石が無かった。今回、ハドロン実験施設の大型 電磁石を利用出来たことから、超高性能磁性体コアの製造と量産化を進めた。コア製造は、震災で一時中断したが6月に再開、約2週間の量産試験で1日1枚を安定に製造できることが実証された。今後、これらを加速空洞に組込み、J-PARCの運転再開を待って大電力試験を進める。
   このコア製造でカギとなるのが磁性体の原子配列で、原子配列が不規則なアモルファス状態の磁性材料は、熱処理過程で原子配列が規則的に整列した結晶状態が形成される。この原子配列についての詳細な観察は、J-PARC/MLFのミュオンビームを用いた最新技術が使われている。 (8/3プレス発表) 
詳細については、http://www.kek.jp/ja/news/press/2011/080315/をご覧ください。

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●第8回日本加速器学会年会 (8月1〜3日) 
  第8回日本加速器学会年会が、つくば国際会議場で日本加速器学会主催で開催された。各カテゴリー推薦の合同セッションでは、J-PARCアライメントチーム代表の谷教夫研究副主幹が「震災後のJ-PARC加速器アライメント」と題して、震災復旧作業におけるアライメントの取組みや、施設全体の測量結果について報告を行った。また、鈴木厚人KEK機構長が「加速器科学への期待」をテーマに特別講演を行った。参加総数570名、口頭発表55件、ポスター発表322件、企業展示58社となった。

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●被災状況の調査と復旧
   リニアックは、加速器空洞の粗アライメントを継続実施し、その後、精密アライメントに向かう。3GeVシンクロトロンは、受電ヤードの機器架台の復旧工事が順調に進み9月中旬には受電再開の見込み。新しい冷却塔の取付け、配管修復工事なども進む。物質・生命科学実験施設 (MLF) では、中性子源前置き遮蔽体の積み直し、ビームライン機器健全性を確認する遮蔽体移動などのクレーン作業が、2直体制で深夜まで行われている。
   50GeVシンクロトロンは、トンネル止水工事、トンネル床の基準座水準測量を継続実施。ハドロン実験施設は、建屋周辺の地盤沈下、附帯設備等の復旧作業、また、K1.8ビームラインエリアでは第2静電セパレータを搬出しての総点検、電磁石などの据付けなどを実施した。ニュートリノ実験施設では、電磁ホーンの総点検のため、第3ホーンを大型He容器からメンテナンスエリアに移動し、ホーンの放射化評価のため線量測定を合わせて実施した。

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●「物理チャレンジ2011」の見学
   8月2日、物理チャレンジ2011 (国際物理オリンピック国内代表選考会) の一行102名が、つくばからJ-PARCを見学に訪れた。大型バス3台でいばらき量子ビーム研究センター (IQBRC) に到着後、永宮正治J-PARCセンター長が全体概要説明を行い、参加者から質問を受けた。続いて、物質・生命科学実験施設へ移動し2班に分かれて実験ホール1、2を見学、その後IQBRCに戻り、事前に設定された10のテーマ毎に参加者がグループ分けされ、対応する研究者と夕食をとりながら懇談が行われた。

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●「中性子粉末回折データの磁気構造解析」研究会
   8月9日、中性子回折装置ユーザーが磁気構造解析を実施できるようになることを目的に、研究会が東京で開催され、茨城県材料構造解析装置「iMATERIA」 (MLF/BL20) などで得られた研究成果、構造解析ソフトウェア (Fullprof、GSASなど) の使用方法などが紹介された。装置担当者やユーザーからのコメントとして、「実験で得られた中性子回折データを使って行う磁気 構造解析は、当面FullprofかGSASを使う事が合理的である」こと、「解析ソフトウェア利用にあたってのデモンストレーション開催」の要望などが挙げられ、今後、研究会として対応していくこととなった。研究会は70名を越える参加者となり、関心の高さが伺えた。主催者は、中性子産業利用推進協議会、MLF利用者懇談会、および総合科学研究機構 (CROSS) 。

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