J-PARCは、東日本大震災により被災し、運転停止をしていたが、復旧工事が進み、1月24日に物質・生命科学実験施設とニュートリノ実験施設が、その1週間後の31日には、ハドロン実験施設が利用再開し、全実験施設の利用運転が再開された。
その再開を祝う式典を、いばらき量子ビーム研究センターで開催した。式典では、吉田大輔 文部科学省研究振興局長、橋本昌 茨城県知事、村上達也 東海村長をご来賓にお迎えし、鈴木篤之 日本原子力研究開発機構理事長、 鈴木厚人 高エネルギー加速器研究機構長、藤井保彦CROSS東海センター長、J-PARC国際アドバイザリー委員会メンバー、J-PARC各セクションリーダーなど、多くの関係者が参加した。
開会挨拶、来賓の方々の挨拶の後、鈴木國弘 広報セクションリーダーが、震災当日の動画を交えた復旧状況特別編集版で、復旧の道のりを詳しく報告、その後、懇談が行われた。 |
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●国際シンポジウム「加速器駆動核変換システム (ADS) の未来」 (2月29日) |
福島第一原子力発電所の事故以降、日本では原子力利用のあり方を見直す議論が行われている。今後、どのような原子力利用を選択するとしても、高レベル放射性廃棄物の処分は重要な課題であり、ADS (Accelerator-Driven System) を利用した分離変換技術は廃棄物処分に係る負担を軽減できるものと期待されている。
原子力基礎工学研究部門 (JAEA) とJ−PARCセンターでは、ADSの現状と今後の展開を議論するため、2月29日、学士会館 (東京都千代田区) において、国際シンポジウム「加速器駆動核変換システム (ADS) の未来」を開催した。シンポジウムには、アジア (日本、韓国、中国、インド) 及び欧州 (ベルギー、
フランス) の6カ国から100名の研究者や技術者が参加した。横溝英明JAEA理事の開会挨拶のあと、有馬朗人 武蔵学園学園長 (元文部大臣 兼 科学技術庁長官) が「核変換技術への期待」と題する特別講演を行った。続いて、日本、アジア、及び欧州におけるADS研究開発の状況や将来計画について8件の報告があり、
最後に「ADSの将来と国際協力」をテーマとするパネルディスカッションでは、活発な意見交換と、ADS開発では各国で特徴ある取り組みを行い、さらに国際協力も活性化させる必要があるという認識で一致した。
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●特集:J−PARC/MLFで建設中の中性子ビームライン |
< 大強度型中性子小中角散乱装置:「大観」BL15 >
J−PARCの高強度パルス中性子源は、研究用原子炉などの既存の中性子源に比べ100倍以上のピーク強度を持つパルス中性子ビームを発生できる。大強度型中性子小中角散乱装置「大観」/BL15は、その高強度 (粒子数が多い) の中性子ビームを利用して、金属材料、磁性材料、ソフトマター、タンパク質などの
構造解析や機能解明を行う装置である。「大観」では、平行性の高い中性子ビームを試料に照射した際、試料内部の原子や分子などで起こる中性子の散乱現象を観測する。散乱した中性子は装置に組み込まれた5つの検出器バンクで観測され、数ナノメートル (10-9m) から数ミクロンメートル (10-6m) の広範囲に
およぶ構造情報を与える。また、偏極中性子ビームや集光中性子ビームを使った高精度な実験も可能となる。さらに、試料環境装置として、自動試料交換機が導入され、温度・磁場調整装置なども順次導入される計画である。「大観」は、1月24日に再稼働し、3月からは共用実験が開始された。「大観」は、特定
先端大型研究施設共用促進法の下で建設され、利用者支援業務は政府登録機関の総合科学研究機構 (CROSS) が行う。
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●物質・生命科学実験施設 (MLF) |
1) 革新型蓄電池研究専用装置「SPICA」/BL09では、ビーム導入試験、装置本体室内の整備を実施。
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2) 超高圧中性子回折装置「PLANET」/BL11では、分光器室内に超高圧発生装置の「圧姫」を設置し、調整試験運転を実施。
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3) 試料垂直型反射率計「VNR」/BL17では、ビーム導入試験、機器調整、試料環境装置である超伝導電磁石の動作試験を実施。
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4) 千手「SENJU」/BL18では、装置組立て、動作試験、ビーム導入試験などを実施。
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5)茨城県材料構造解析装置「iMATERIA」/BL20では、試料環境装置・冷凍機の性能試験を実施。
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6)工学材料回折装置「匠」/BL19では、装置組立てなどを実施。
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●ハドロン実験施設 |
 1) 実験ホール北側では、K1.8BR実験エリアでKEKつくばから固体シンチレーション検出器が搬入され、宇宙線計測による動作確認などを行い、検出器バンクへの組込み作業を実施。また、3He冷凍機の調整を進めている。
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 2) 実験ホール南側では、KOTO実験装置の大型真空槽がKEKつくばから搬入された。また、関連機器の点検、組立て作業などを実施。K1.1BRビームラインでは、遮蔽コンクリートブロックを移動して電磁石などの調整作業を実施。
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●各種委員会、研究会の開催 |
(1) 加速器アドバイザリー委員会/A-TAC 2012 (2月23〜25日)
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第11回A-TAC (Accelerator Technical Advisory Commmittee) を、いばらき量子ビーム研究センターで開催した。A-TACには、国内外の加速器専門家など8名の委員が出席、昨年3月の東日本大震災によりJ-PARCが被災し、その復旧状況や現状などについて19件の報告が3つの加速器関係者から行われた。
加速器の改善点や、これからの方向性などが審議、議論され、会議最後には委員会から助言、提言などを受けた。
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(2) 国際アドバイザリー委員会/IAC2012 (2月26-27日)
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国際アドバイザリー委員会IAC2012 (International Advisory Committee) を、いばらき量子ビーム研究センターで開催。今年から、カナダのJean-Michel Poutissouトライアンフ副所長が委員長を務める。委員会では、J-PARC関係者が震災後のJ-PARCの状況や復旧の様子、施設の現状、
昨年12月の運転再開後の状況などを報告した。また、2月上旬〜下旬にかけて開催された、中性子、ミュオンおよび加速器に関わる3つの国際アドバイザリー委員会 (NAC-2012、MuSAC、第11回A-TAC) からの委員会報告が行われた。それらをもとに委員会から、J-PARCに対する意見・提言などがまとめられた。
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●県内中性子利用連絡協議会、平成23年度成果報告会 (2月21日) |
茨城県が進める中性子利用の成果報告会が、いばらき量子ビーム研究センターで開催され、約70名の参加者があった。開会挨拶を守谷孝行 茨城県
商工労働部産業政策課長が行った。成果報告では、県内企業の中性子利用の一例として、 (株) アート科学が行った光触媒 (大気浄化、脱臭、水質浄化、抗菌、防汚) による空気・水質浄化技術開発が取り上げられ報告があった。報告会では、 新井正敏 J-PARC物質・生命科学ディビジョン長が、J-PARC復旧状況や
ビームラインの現状、今後の整備計画などを、また、森井幸生 茨城県BL産業利用コーディネーターが、茨城県が持つビームラインの産業利用状況について報告した。報告会終了後には、物質・生命科学実験施設の見学会が行われた。尚、本報告会は、いばらき成長産業振興協議会 健康・医療機器の研究会と同時開催となった。
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●「In-situ 高温変形挙動観察」(J-PARC/MLF BL19「匠」)の報告 |
3月8日、「中性子・放射光による材料強度評価に関する研究会」の第3回残留応力と強度評価研究会が、東京・研究社英語センタービルで開催された。量子ビームを用いた応力評価の現状報告、および情報交換を目的として開催している合同研究会。
中性子の応用研究紹介では、J-PARC/MLF BL19「匠」の工学材料回折装置での研究紹介を、装置責任者のステファヌス・ハルヨ研究副主幹が行った。第2回研究会 (平成23年3月開催) では、JRR-3の中性子実験装置「RESA」との性能比較等が報告されたが、今回は、試料を高温環境下に置いたin-situ (その場)
実験の結果、また、震災による被害や装置復旧状況、昨年12月の物質・生命科学実験施設の利用運転再開後の中性子ビーム受入れ確認試験などについて報告した。
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主催:Spring-8利用者懇談会、中性子産業利用推進協議会、日本材料学会X線材料強度部門委員会 共催:茨城県、総合科学研究機構 (CROSS) 、J-PARC/MLF利用者懇談会
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●ご視察等 |
2月27日 吉田大輔 文部科学省研究振興局長
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3月16日 矢川元基 日本学術会議総合工学委員会委員長 (東京大学名誉教授)
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3月17日 米国エネルギー省高エネルギー物理官 Alan Stone博士
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3月22日 国際原子力機関 (IAEA) 理事国大使 (南アフリカ、他5カ国)
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