MLF利用の基本方針

MLFは国内外の学術界及び産業界に開かれた利用機会を提供します。公平かつ公明なユーザー本位の運営のために、各種委員会を設置し、国内外の有識者をメンバーとするpeer reviewシステムを設けています。

1. MLFの実験装置の種類

物質・生命科学実験施設(MLF)では中性子およびミュオンビームを利用した実験が可能で、中性子源に23、ミュオン標的には4つのビーム取り出し口が設置されています。

現在運用中の実験装置の種類については、こちらのページからご確認下さい。

MLFの実験装置は以下の3つに区分されます。

J-PARC装置

JAEAが設置(上記、共用装置を除く)およびKEKが設置し、運営する中性子線実験装置、及びミュオン実験装置

共用装置

JAEAが設置し、運営する中性子線実験装置の内、「特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律」に則り、運営(利用者支援業務)を登録施設利用促進機関(登録機関)が担っている実験装置

専用装置

実験装置を設置した第三者によって運営・維持管理される実験装置。ただし第三者にはビーム取り出し口を専有する対価として、専用装置の利用時間の一定割合を一般の利用者に提供していただく。

2.ビーム利用区分

MLFの実験装置を常に最高の性能に保ち、多様なユーザーニーズに応えるために、「J-PARC装置」及び「共用装置」の利用には「一般利用」のほか「プロジェクト・装置利用」の区分を設け、最大限の研究成果を創出できるように努めています。また、専用装置には「第三者専有利用」と「一般利用」があります。

(1)一般利用区分

一般利用課題は、国内外を問わず幅広い利用者に開放することを目的に一般公募される区分です。
提案代表者(実験責任者)には、大学、民間企業及び公的研究機関等に属する者がなることができます。また、指導者が認めた場合にはポスドクも課題を申請することができます。学生の方および所属機関のない方は提案代表者にはなれません。

(2)プロジェクト・装置利用区分

J-PARC装置及び共用装置で、JAEA, KEK及び登録機関が主導的に利用、あるいは大学等と共同で利用する区分です。
提案代表者(実験責任者)は、JAEA, KEKの構成員、共用装置ではさらに登録機関構成員とします。KEKが進める共同利用ではKEKの規定に従い大学等の研究者も提案代表者になることができます。

(3)第三者専有利用区分

茨城県が専用装置として中性子実験装置を設置し、産業利用を目的とした実験課題の公募を行っています。詳しくは、こちらのページをご覧下さい。


3.ビームタイムの配分

ビーム利用時間は、実験課題を募集し審査することにより利用者に配分します。

J-PARC装置及び専用装置の一般利用ビームタイム枠を利用する課題はJ-PARCセンターが、共用装置を利用する課題は登録機関が募集します。登録機関では、J-PARCセンターと一元的かつ利用者に開かれた課題審査体系を敷いており、課題審査に関わるJ-PARC委員会に対応する委員会を以下のように設置し、審査委員会を合同で開催しています。

実験課題は全て課題審査部会/利用研究課題審査委員会で審査を行い、課題の採否、配分ビームタイム等を決めます。さらにMLF施設利用委員会/選定委員会が審査結果を確認します。 ビーム利用時間の配分はJ-PARCセンター及び登録機関が行います。

4. 募集課題の種類

MLFでは、年1回あるいは年2回、定期的に課題を募集する「定期募集課題」と、課題の重要性や即応性に応じるために、随時申請を受け付けている「緊急課題」の2種類の受付の種類を設けています。またMLFの課題には、「成果公開型」と「成果非公開型」の2種類の利用種別を設けています。

成果公開型

MLFを利用して得られた成果を公表することを条件に、ビーム利用料金は無償とします。そのため利用者には、実験終了後60日以内のJ-PARCセンターへの実験報告書の提出と、MLFを利用した成果の学術論文および学位論文、学会発表等による公表が義務づけられます。なお、成果の公表の際には「MLFの実験装置を利用したこと」を明記して頂く必要があります。

成果非公開型

ビーム利用料金を支払うことで成果を占有することができます。なお、「成果非公開型」利用課題は、J-PARCセンターが実施の安全性及び技術的可能性を確認しますが、課題審査は行いません。また、利用料金はビーム発生にかかるフルコストを支払っていただくとの考えに基づき算定しています。

(1)一般利用課題の種類

利用区分 課題の名称 対象装置 受付種類 利用種別
一般利用 一般課題(短期) 全装置 定期募集
(2回/年)
成果公開型/
成果非公開型
一般課題(長期) 中性子装置 定期募集
(1回/年)
成果公開型
P型課題 ミュオン装置 定期募集
(2回/年)
成果公開型
新利用者支援課題 共用装置 定期募集
(2回/年)
成果公開型
緊急課題 全装置 随時 成果公開型/
成果非公開型

一般課題(短期)

年2回の募集と審査が行われます。採択課題の有効期限は、原則として半年です。

一般課題(長期)

年1回の募集と審査が行われます。採択課題の有効期限は、最長3年(または6申請ラウンド)です。
科学的にも重要な卓越した課題であり、施設の性能を最大限に発揮できるものとして、研究遂行上で長期利用の必要があると認められることを条件とする課題です。長期課題の利用時間枠は非常に限定されることに特にご留意下さい。課題の採否はヒアリングを含めた課題審査によって決定され、採択された課題については一年毎に進展状況及び継続の可否について評価を受けて頂きます。

P型課題

年2回の募集と審査が行われます。採択課題の有効期限は、原則として半年です。 一般利用あるいはプロジェクト利用(S型課題)を申請するための予備実験及びミュオン利用の未経験者による予備的な実験のための課題です。 なお、P型課題には以下の制限があります。

新利用者支援課題

年2回の募集と審査が行われます。採択課題の有効期限は、原則として半年です。
J-PARC MLF中性子実験施設利用の未経験者を対象とし、その有用性を理解していただくことで、その後の本格利用へとつなげることを目的とした課題です。

緊急課題

学術的・社会的に重要性が極めて高く、迅速に実施する必要がある課題です。公募期間によらず申請して頂くことができます。事前に技術相談をして頂くことを推奨します。 緊急課題の実施を希望される方は、下記、J-PARCセンター物質・生命科学ディビジョン長宛てにご連絡下さい。

[緊急課題 連絡先]
J-PARCセンター  物質生命科学ディビジョン長
金谷 利治
TEL: 029-284-4208 / FAX: 029-284-4899
E-mail:tkanaya@post.kek.jp

(2)プロジェクト・装置利用課題の種類

利用区分 課題の名称 対象装置 受付種類 利用種別
プロジェクト・装置利用 プロジェクト課題 全装置 定期募集
(1回/年)
成果公開型
装置グループ課題 全装置 定期募集
(1回/年)
成果公開型
開発課題 共用装置 定期募集
(1回/年)
成果公開型

プロジェクト課題

サイエンス等の研究課題、又は研究課題を設定した募集、JAEAが中期計画に基づき提案する研究課題、外部機関との共同研究、外部機関からの受託研究に基づく提案等が含まれます。
なお、KEKが募集するプロジェクト課題についてはS型課題としております。ミュオン装置の長期利用が必要で一般課題と同じ利用枠を用いるS2型課題、放射光・低速陽電子・中性子・ミュオンのうち複数のビームを用いて行うマルチプローブ課題についてもこのプロジェクト課題に含まれます。詳しくは、こちらのページをご覧下さい。

装置グループ課題

常に最高のレベルの実験環境を利用者に提供するために実験装置の維持・性能向上を図ることと、性能を最大限に発揮させる先導的研究開発を行う課題です。

開発課題

利用促進調査研究のための課題を登録機関が主導的に行う課題です。