■ J-PARC News 第6号より       (2005/9) 

●建物建設状況
(1) リニアック棟では、加速空洞、電磁石、電源装置など機器の搬入及び据付、耐圧試験や試運転調整を継続中である。3GeVシンクロトロン棟の屋外ヤードでは、トランスや冷却装置等、屋外機器の搬入据付を進めている。また、3NBT棟ではトンネル部への電磁石搬入据付準備を進めている。
(2) 50GeVシンクロトロンではC工区のトンネル支保工解体、山留撤去・埋戻しを進めている。また、D工区のトンネル躯体工事の基礎土木工事と周辺建家躯体工事を継続中。
(3) 物質・生命科学実験施設では鉄骨組立を終了し、建家躯体の壁床配筋及びコンクリート打設工事が行われている。また外装・屋根工事も進めている。ハドロン実験施設ではビームスイッチヤード建設工事等でトンネル本体のコンクリート打設工事を進めている。また、同実験ホールではシートパイル工事が終了し杭打設工事が開始された。

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●エアーパレット台車による偏向電磁石搬送試験
 J-PARCのシンクロトロンでは、電磁石の搬送に空気を床面に吹きつけて浮上するエアーパレット台車を使用する。3GeVシンクロトロンは周長約350mのトンネルに偏向電磁石を24台、四極電磁石を60台設置する。床面は、凸凹や傾きが3/1000以下の極めて滑らかな状態に仕上げられている。今回、エアーパレット台車に38トンの偏向電磁石を積載して搬送試験を実施した。 エアーパレット台車への電磁石積載、搬送状態、ベースプレートへの電磁石据付等の作業内容、手順等を確認した。これらは今後、トンネル内への電磁石等搬入計画の立案に重要なデータとなる。

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●Ni標的装置(T1)の長時間試験運転
 ハドロン実験施設で使用するNi標的装置(T1)の長時間試験運転を、KEKつくばキャンパス東カウンターホールの一次ビームラインモックアップで今年6月から行なっている。この標的装置は、陽子ビームから実験に使用するニ次粒子を生成するためのもの。 T1標的本体は、発熱を分散、冷却できるよう5種類の厚み(約22mm〜約6mm)のディスクに僅かな隙間を持たせた直径360mmの円盤形状で、下部を冷却水中に入れ回転させて使用する。現在、運転状況を加速器汎用制御システムのEPICSで取りこみ、チャンネルアーカイバに記録している。 本試験は運転状態と記録をどこからでも取り出せるシステムの同時検証も行っている。下のグラフは、円盤回転数、駆動モーター電流値、回転駆動トルクを示している。試験では徐々にモーター電流値が乱れはじめ、回転軸の初期故障が見つかっている。今後、この部分の設計の見直しを図り、実機設計に生かす予定である。

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●大面積・高性能スーパーミラーの開発
 大強度パルス中性子源では、中性子源から発生する大強度中性子ビームを効率的に実験装置まで輸送し、さらに必要な位置でビームを分岐・収束させるための高性能中性子スーパーミラーの開発が必要とされる。 スーパーミラーとは、異なる二種類の金属膜を基板上に交互に少しずつ膜厚を変えながら積層したものであり、その性能はスーパーミラーとニッケルミラーの臨界角での運動量遷移の比(m=QSM/QNi)と、そこでの反射率で評価される。 原研は、これまで世界に先駆けて良質な膜の積層を可能にするイオンビームスパッタ法による成膜技術開発を進めてきた。そのために500mmφの成膜可能面積を持つ世界最大のスーパーミラー用イオンビームスパッタ装置を導入し、これを用いた中性子スーパーミラーの開発を進めている。 今回、実際の大強度パルス中性子源で必要となるm=3及び4の中性子スーパーミラーを成膜し、その中性子反射率測定を行ったところ、臨界角における反射率が約0.80及び0.66という結果が得られるとともに、500mmφの成膜可能面積に対してほぼ一様な性能を確認した。 この成果は、世界のトップレベルであり、 実機の製造を踏まえ今後はさらなる高性能化のための開発を進める予定である。

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●J-PARCの使用許可申請書、文部科学省に受理される
  8月31日、放射線障害防止法に係るJ-PARCの使用許可申請書を、文部科学省水戸原子力事務所に提出し、受理された。これは、先に原研及びKEK間で締結された、J-PARCの運営協力協定及び放射線安全管理に係る実施協定に基づき、両機関の連名で申請が行われたものである。 今回は、J-PARC全体のうち、平成18年度に試運転が予定されているLINAC施設に係る部分と、平成17年度3月に管理区域の設定が予定されているハドロン実験施設スイッチヤードに係る部分についての申請を行った。 今後、施設毎に段階的に申請が行われ、施設全体が完成するまでには加速器出力の変更申請等が繰返されることとなる。今回の申請の許可を得て管理区域が設定された時点で、組織上設立されるJ-PARCセンターの運用が開始される予定である。
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●総合科学技術会議への報告
 9月12日、東京都・合同庁舎にて行われた総合科学技術会議の分野別ヒアリングにおいて、永宮ディレクターがJ-PARC計画の推進に関する発表を行なった。 ヒアリングは、岸本議員、外部有識者に西田宇宙科学研究所名誉教授、曾我放射線医学総合研究所客員研究員、岩崎筑波大学学長、内閣府清水審議官と山田参事官、及び陪席者に文科省3名、他の出席で進められた。 その他、J-PARCから大山原研大強度陽子加速器施設開発センター長が出席し、質疑では研究内容などの質問を受けた。
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●ジャーナリスト立花隆氏がJ-PARCを訪問
 8月29日、ジャーナリストの立花氏がJ-PARCを見学された。氏は幅広い活動で知られるが、加速器科学や基礎物理学にも深い理解を示されている。 例えば、これまでKEK-Bを長期にわたり取材され、我が国の加速器科学が世界のフロントランナーであることを雑誌に紹介すると共に、ニュートリノ物理についても取材されている。 J-PARCについては、最近行われたシンポジウムでその重要性について力説されている。見学当日は、戸塚機構長、永宮ディレクター他、原研・KEKの担当者と一緒にリニアックを始め建設中の加速器施設を全部、また物質・生命科学実験施設、ニュートリノ、ハドロン実験施設の建設現場も隈なく見学された。

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