■ J-PARC News 第9号より       (2005/12) 

●建物建設状況
(1) リニアック棟では加速空洞、電源装置、電磁石、真空ダクト等の機器について搬入・据付及び組立・調整を継続中。3GeVシンクロトロン棟では、電源装置類の搬入据付け、ケーブル接続、冷却水設備の試運転調整を進めている。また、3NBT棟では電磁石、真空ダクト、等の組立・調整を進めている。
(2) 50GeVシンクロトロンのC工区では法面整形・浸透側溝工事を進めている。同トンネルD工区ではトンネル躯体の配筋型枠・コンクリート打設工事を継続中である。また周辺の関連建家の躯体工事を進めている。
(3) 物質・生命科学実験施設では、建家の壁床配筋及びコンクリート打設工事を継続中。。工区では内外部の仕上げ工事が進められ一部で外壁の吹付け塗装を実施中。また地階部では床、壁、天井の塗装仕上げが継続中である。
(4) ハドロン実験施設では、ビームスイッチヤード建設工事等でトンネル本体及び周辺建家のコンクリート打設工事を継続中。また、同施設実験ホールでは掘削等土木工事や基礎工事を進めている。
(5) ニュートリノアーク部でも掘削山留等土木工事を進めている。

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●陽子ビーム輸送系トンネルへの電磁石据付
 3GeVシンクロトロンから物質・生命科学実験施設(MLF)への陽子ビーム輸送系トンネルは全長257mで、完成時のトンネル内空調や、電磁石への電源供給は、トンネル両側に建設する建屋の電源・空調設備から行う。現在、このトンネルは3GeV棟側から約半分程度が完成しているが、MLF側の約半分については現在建設中である。 今回、トンネル上流側の3NBT棟(電源・空調機械棟)から、搬入路を通してトンネル内に、電磁石設置全台数の約3分の1に当たる34台(偏向電磁石2台、四極電磁石18台、補正電磁石14台)について搬入・据付を行った。また、現地にて電磁石へのビームダクト組込みを行い、アライメント調整を終了した。

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●水銀ターゲット容器配管リーク試験で目標値を達成
 物質・生命科学実験施設の水銀ターゲット容器構造について、水銀配管の脱着機構とシールの試験を進めてきた。水銀ターゲットは、陽子ビームの入射に伴い極めて高い放射線レベルに達するため、ターゲット交換は遠隔操作で行う。ここで、水銀配管の接続フランジ構造とそれらのシール材料やシール構造は、フランジ部の密閉性能に大きく影響する。 今回、配管接続フランジをエッジ付構造とし、シール材に純鉄平型シール材を選定することで、Heリーク試験で仕様の10-6Pa・m3/sを下回る4.5×10-8Pa・m3/sの漏洩量を達成した。今後、実機構造への適用のため、再現性及び耐久性の観点からの実証試験を行う。

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●ニュートリノ振動実験施設ディケイパイプの竣工
 「ニュートリノに質量があるのか・・」、この疑問を解明するため、これまで、ニュートリノ実験がつくば(K2K実験)や外国の実験施設において進められて来た。今回、K2Kの約100倍のニュートリノビームを発生させる実験施設をJ-PARCに建設している。 ニュートリノビームは、陽子ビームをグラファイト標的に入射してπ中間子を発生させて、それらがディケイパイプの中で崩壊することで発生する。ディケイパイプは全長が完成すると約110mとなるが、今回、他の加速器トンネルと上下の位置関係で交差する区間の50mについて、先行工事を行い12月6日にすべての作業を終了した。 ディケイパイプは、冷却水配管を取付けた4枚の鉄板をあらかじめ工場で箱組みし、29個の箱を現地に並べて、溶接により50mのパイプとして組上げた。標的で発生する、極めて高レベルな放射線を遮蔽するため、パイプ外側は6m厚のコンクリート躯体とした。また、放射線により構造体が高温になるためパイプ内面を水冷する。 完成箇所については当面、窒素充填の密閉状態とし、残り部分の建設工事で施設全体を完成する。

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●永久磁石を用いた残留ガスビームプロファイルモニタ(RGIPM)の実証機が完成
 ハドロンビームラインでは、陽子ビームの断面形状を見るためのプロファイルモニタとしてRGIPMを開発している。RGIPMは、陽子ビームがビームダクト内に存在する残留ガスを電離するとき生成する電離電子を、電場によって収集することによりビーム形状を測定する非接触モニタである。 この測定では、電磁石で磁場をかけることにより精度をあげることができる(J-PARC News第2号を参照)。今回、電磁石の代わりに永久磁石を使うことで、コンパクトでメンテナンスも容易な実証機を製作した。今後、東北大サイクロトロンRIセンターで、数μAの50MeV陽子ビームを用いて大強度のビームに対する特性を調べ、J-PARCでの適用性を確認する。

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●中性子散乱国際会議(ICNS2005)
 11月27日〜12月2日、International Conference on Neutron Scattering (ICNS2005)がシドニーで開催された。ICNSは、中性子散乱分野で最大規模の会議で、今回は、数百人規模、日本からは、141人の参加があった。 分光器、デバイスグループからは新井グループリーダーの基調講演をはじめ20件超のJ-PARC中性子実験装置、検出器・デバイス開発、シミュレーション等に関する発表を行った。 また、茨城県と合同でJ-PARC茨城県ブースを設置し、J-PARCをアピールした。世界トップクラスの施設が出来ることへの期待や羨望など参加者の反応が高く、J-PARCが国外に広く周知されるものとなった。

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●J-PARCでのハドロン構造ワークショップ
 11月30日〜12月2日、Workshop on Hadron Structure at J-PARC がKEKつくば3号館セミナーホールにて開催された。登録参加者が91名(国外からの参加者は23名)で総参加者は約100名となり、盛況であった。国外からは Robert Jaffe氏や Stan Brodsky氏、Xiandong Ji氏など、ハドロン物理分野を代表する研究者の参加を得た。 会議では、核子構造を研究の中心とするハードプロセスを用いた研究、及びマルチバリオン状態等のソフトプロセスを用いた研究の双方が議題となった。講演では、J-PARCでのハドロン物理実験について多くの期待が寄せられ、K中間子ビームを用いたハドロン核物理研究に加え、ミュオン対測定実験に関して強い関心が示された。 また、スピン自由度の入ったハドロン物理実験がハドロン物理研究にとって大切であることも強調された。加えて、ニュートリノビームを使った実験の可能性も紹介された。また、Sattelite Workshop on Polarized Proton Beam at J-PARC がWSの前日にKEKつくばにて開催された。 参加者はBNLのThomas Roserなど加速器関係者を中心に約25名であり、50GeVシンクロトロンにスネークマグネットを追加することによる、偏極陽子の50GeVまでの加速可能性について議論が行われた。

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●第8回加速器電源シンポジウム
 12月8-9日、第8回加速器電源シンポジウムが東海村(駅前)のリコッティを会場に開催された。参加者約50名。最初に、日本原子力研究開発機構・量子ビーム応用研究部門の山崎加速器開発グループリーダーが開会の挨拶を行い、続いて3GeVRCSの電磁石を担当する谷副主任研究員がJ-PARCの建設状況全体を報告した。
 講演では、原子力機構、KEK、放医研等の6加速器施設と電源メーカから合わせて15件の発表と招待講演2件が行われた。各報告では、技術的に深い内容の議論が活発に行われた。本会では、加速器の重要な性能としてビームの安定化が求められ、その性能を大きく左右する要因として、電源の安定化が必須となっていること、 また、電源の安定化には電源の温度環境を支配する空調、冷却水等の管理が重要であることが強調された。シンポジウムの最後に、J-PARC見学会が持たれ、HENDEL棟で実施している3GeV電磁石の磁場測定、加速器施設などを見学した。

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●「失敗学のすすめ」コロキウム
 12月8日、KEK主催(東海キャンパス)で「失敗学のすすめ」 と題した第1回コロキウム(講 演会)が、日本原子力研究開発機構の原子力科学研究所において開催された。同名の著書で知られる畑村洋太郎先生(工学院大学教授、東京大学名誉教授)を講師に招き、「失敗学のすすめ」についてご講演頂いた。 内容は、人は誰でも新しいことに挑戦すれば必ず失敗する。技術の世界にもこのことはあてはまり、失敗を分析し、新しい知識を樹立することによって新しい技術が生まれ、社会を豊かにしてきた。このように失敗のマイナス面だけに目を向けるのではなく、失敗をプラスに転化するための考え方と方法を取り扱うのが「失敗学」であり、 そこでは、失敗の必要性・失敗の原因と結果の関係・失敗を生かす工夫などについて具体的な例を取り上げながら講演された。畑村先生の、聴講者に説き聞かせるような柔らかな口調が印象的であった。当日は、職員及びJ-PARC建設工事関係者等160人を超える参加者があり、熱心に耳を傾けていた。 参考:一般公開されている失敗知識のデータベース(http://shippai.jst.go.jp/)

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