■ J-PARC News 第12号より       (2006/3) 

●建物建設状況
(1) リニアック棟では電源装置、加速空洞、電磁石、真空ダクト等の組立・調整を継続中。3GeVシンクロトロン棟では、電磁石の搬入据付準備、電源システム、制御システムの組立・調整、冷却水設備の試運転調整を進めている。また、3-50BTトンネルでは、50GeVトンネルへの電磁石の据付、制御設備関連工事を進めている。
(2) 50GeVシンクロトロンのC工区では法面保護吹付・植栽を継続中。D工区のトンネル建設工事では鉄筋組上げ、コンクリート打設等工事を継続中でトンネル完成に伴い埋め戻しを進めている。また関連建家の躯体工事も継続中である。
(3) 物質・生命科学実験施設では、建家のコンクリート打設や外部仕上工事を進めている。また各階の床、壁、天井の塗装等内部仕上げ工事を継続中である。
(4) ハドロン実験施設では、スイッチヤード上流部の建築工事が終了し、請負業者からの引渡しが行われた。今後装置類の据付等が行われる。実験ホールについては引続き躯体工事を進めている。またニュートリノ実験施設では、掘削・山留等土木工事を継続中である。

*クリックすると、大きく表示されます。
Page TOP

●電解研磨技術による長尺ビームダクトの表面処理
 50GeVシンクロトロンのビームダクトには、真空容器用構造材料として最も一般的なステンレス鋼を材料として用いている。ガス放出低減化のための表面処理は広く研究されているが、中でも電解研磨は材料表面の凹凸や加工変質層を除去するのに適した方法で、かつ材料表面に安定な酸化層を形成し水分子の吸着エネルギーを小さくしてガス放出速度を低減させる効果がある。 ビームダクトは断面がレーストラック形状(135×104 mm)の長さが6m(つまり非常に細長い)のパイプ形状で、通常の真空容器に比べダクト内部の研磨条件を一様にすることが非常に難しい。ダクト形状に対応した電流密度、研磨速度、電解液温度などの最適化が必要となる。さらに発生水素の除去法、電極の洗浄頻度などについてもトライ・アンド・エラーの繰返し試験を実施した。 水素の除去が適切でないとピットが発生したり電極(銅)への沈殿物が電解液中に混入したりする。また、電解液からダクトを引上げる際のダクト温度が高すぎると研磨面が白濁化して適切な酸化層が形成されなかった。これら種々の過程において試験を繰返した結果、現在では安定して一様に電解研磨を行うことが可能となった。

*クリックすると、大きく表示されます。
Page TOP

●ハドロン実験施設スイッチヤード(SY)への電磁石搬入
 2006年3月20日、ハドロン実験施設スイッチヤードに放射線管理区域が設定され、KEK12GeV 陽子シンクロトロンからの電磁石の移送・搬入が開始された。これにより、ハドロン実験施設の装置設置作業が本格化した。同日一台目の四極電磁石が搬入されたのを皮切りに、29日までに計19台の大型電磁石が搬入された。今後、ハドロン実験施設では、これらをはじめ計40台以上の電磁石やその他機器の搬入・設置を進めていく。

*クリックすると、大きく表示されます。
Page TOP

●3GeV RCS(Rapid Cycle Synchrotron)用水平シフトバンプ電磁石の通電試験
 3GeV RCSのビーム入射部に設置する4台の水平シフトバンプ電磁石は、リニアックからの入射ビーム(H-)とRCSの周回ビーム(H+)を合流させ大強度の陽子ビームを生成するための重要な機器の一つである。 バンプ電磁石4台の励磁方向の組合せで、図2に示すようにビームをコブ型の軌道とし、荷電変換フォイルにより(H+)に変換された入射ビームが周回ビームに加わる。このため両ビームの軌道変位と大口径の周回ビームに対応できるようセラミック製の電磁石ビームダクトは矩形型で内寸が幅460mm、高さ270mmという大きな空間領域を必要とする。 今回、このバンプ電磁石のI号機を製作し、原子力機構・原子力科学研究所内にて磁場分布測定及び24時間の連続通電試験で抵抗損や渦電流による電磁石端板等の温度上昇の測定を行った。また、20kAの大電流における高速パルス応答性能(励磁電流波形のフラットトップタイム500μsec、リリースタイム150μsec)が良好なものであり、リニアックの初期ビーム出力となる181MeVビームの入射時仕様を十分満足することを確認した。

*クリックすると、大きく表示されます。
Page TOP

●第5回国際アドバイザリー委員会(IAC)
 2006年2月27-28日、第5回国際アドバイザリー委員会が文部科学省研究振興局の斎藤量子放射線研究推進室長も出席されたなか、日本原子力開発機構・原子力科学研究所内で開催された。委員会へは、IAC直前に開催された第5回ATAC及び第4回MuSACからの報告を含めJ-PARCについて多くの報告が行われた。 2日目後半の施設見学会の後、White委員長からsummary of recommendationsが出された。J-PARCの建設予算に関した両機関の努力に関して評価される一方、施設運転維持費についての心配も示された。また、センター長の下のJ-PARCセンターが上手く機能することで両機関の結束が果たされる事などの助言があった。

*クリックすると、大きく表示されます。
Page TOP

●第5回加速器アドバイザリー委員会(ATAC)
 2006年2月23-25日に、第5回加速器アドバイザリー委員会が日本原子力開発機構・原子力科学研究所内で開催された。今回報告の重点項目は、リング高周波の技術的課題、ビームコミッショニングのフェーズに向けてのマンパワーの配置、ビームコミッショニングシナリオ作成と運転フェーズへの移行、3GeVシンクロトロンと50GeVシンクロトロンのビーム出力についてであった。 今後、J-PARC関係者での議論を深め対応策を検討し、3ケ月程度を目処に検討状況をATAC委員へ連絡することとなった。

*クリックすると、大きく表示されます。
Page TOP

●第4回ミュオン科学実験施設委員会(MuSAC)
 2006年2月25-26日にミュオン科学分野では最重要としている第4回J-PARC・ミュオン科学実験施設委員会(MuSAC)がKEKつくばで開催された。委員会はトライアムフ研究所のJ. M. Poutissou氏を委員長とし、国内9名、国外4名の物質科学、ミュオン科学、加速器の専門家で構成されている。 会議では永宮ディレクターに提出されたミュオン科学の24件のLOI(Letter of Intent:実験提案)のうち代表的な提案の説明が各提案者から行われ内容の審議、今後の方針について等が議論された。また、LOIならびにユーザープログラムをJ-PARCで行うためにも、DAY1の時期に最低1つのミュオンビームラインが整備されていることが重要であること等の答申がなされた。
*クリックすると、大きく表示されます。
Page TOP

●「水銀ターゲット容器の圧力波抑制技術」に関する日米協力ワークショップ
 2006年3月9-10日、日本(JSNS計画)と米国(SNS計画)で進めている核破砕中性子源の水銀ターゲット容器の圧力波抑制技術に関して、ターゲット設計研究者等によるワークショップを原子力機構・原子力科学研究所で開催した。 米国ORNLのB.Riemer氏とM.Wendel氏が来所し、物質・生命科学実験施設の中性子源ターゲット開発担当者のニ川研究主席、他ターゲット開発に関る関係者及び基礎科学分野の研究者を交えて、水銀中のヘリウムガスの挙動や圧力波抑制についての技術開発に関して活発な議論が行われた。 また、WSに先立ちニ川研究主席とB.Riemer氏らは詳細に圧力波事象の解析検討等を行い、今後のR&Dの進め方についての協議を行った。

*クリックすると、大きく表示されます。
Page TOP

●放射性同位元素等使用許可証の授与式
 2006年3月7日に文部科学省放射線規制室において、原子力安全監の科学技術学術政策局下村次長から永宮センター長にJ-PARCでの放射性同位元素等使用に関る許可証が渡された。センターからは大山、山崎両副センター長、他数名が同席した。 また3月20日には、ハドロン実験施設のスイッチヤードが放射線管理区域に設定され、KEKつくばで使用していた電磁石19台を3月末までに運込び込んだ。この秋にはいよいよリニアックのビーム試験を開始できることとなり、J-PARC本格稼動開始への第一歩が踏み出されることとなった。 (※スイッチヤードには、50GeVシンクロトロンからの陽子ビームをハドロン実験ホールへ導くビームラインが設置される)
*クリックすると、大きく表示されます。
Page TOP

●J-PARCセンター設立記念式典
 2006年3月16日、東海駅前のテクノ交流館リコッティにてJ-PARCセンター設立記念式典を開催した。文科省、茨城県、東海村、産業界、大学、報道関係等から多くの方々にご出席頂き、J-PARC関係者を含め約200名の出席者となった。 式典では主催者である殿塚JAEA理事長、戸塚KEK機構長の挨拶で開始され、来賓者からは近藤文部科学審議官、角田茨城県副知事、村上東海村長から夫々に祝辞を頂戴した。続いて、永宮J-PARCセンター長がビデオを混じえてJ-PARCの建設を振り返った。 懇談会では石川茨城県議会議長にセンター設立を祝う乾杯の音頭を頂き、その後和やかに懇談が行われた。また、式典に先立ち開催したJ-PARC建設現場の見学会では80名近い参加があった。

*クリックすると、大きく表示されます。
Page TOP

Copyright 2006 JAEA and KEK Joint Project. All rights reserved.