■ J-PARC News 第19号より       (2006/10) 

●建物建設状況
(1) リニアック棟では、10月11日から放射線管理区域が設定され、加速器機器などの総合調整試験が始まった。3GeVシンクロトロン棟では、11月から始まる電磁石の全体通電試験に向けて最終据付調整を実施中。3NBTトンネルでは、電磁石の搬入・真空ダクトの組込、据付・調整及び冷却水系の試運転調整を継続中。
(2) 50GeVシンクロトロンでは、電磁石の搬入据付をトンネル内残り半周の部分で継続実施中。また関連建家では、建家仕上工事及び建家設備工事を継続実施中。
(3) 物質・生命科学実験施設では、内装仕上げ工事を継続中で、外壁にある仮開口部の閉鎖工事も実施中。また建家内部では、中性子ビーム遮蔽体の据付など実験装置関連の工事も同時に行っている。
(4) ハドロン実験施設では、実験ホールの外壁成形工事やクレーン設置工事を実施中。またスイッチヤード下流部では擁壁工事や埋戻を、スイッチヤード内部では電磁石の据付を継続中。ニュートリノ実験施設トンネルアーク部(陽子ビーム導入部)では、トンネル部の盛土造成や躯体内部の塗装工事を進めており、ターゲットステーション部では基礎杭打設工事が始まった。

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●リニアック加速器空洞の高周波供給試験開始
 原子力安全技術センターによるリニアックの施設使用前検査を経て10月11日に管理区域設定が行われ、それを受けて19日から加速空洞への高周波供給試験がいよいよ開始された。今後、11月下旬のビーム試験開始に向けて、順次投入電力を増やしていくエージング試験、また24時間体制の総合運転等をクリアしていく予定である。

 (リニアックの施設使用前検査)
 平成18年10月4-5日の両日に実施。J-PARCセンター側はリニアック関係者及び安全ディビジョン放射線安全セクションが対応した。初日は検査項目、要領、スケジュール等を確認し、続いて放射線遮蔽に関る施設の図面による確認及び標識についての検査が行われた。 2日目はインターロック立会い検査、中央制御棟と現場に分かれて検査手順書に沿って放射線モニター、入退室管理装置等PPS(Personnel Protection System)に関る設備全てについての動作確認が行われた。 検査官から「施設、インターロック、標識ともに申請書通りで特記すべきことはない」との講評を頂き、10日にはビーム試験開始の許可の連絡が放射線安全セクション入り、11日に予定通り管理区域設定の運びとなった。

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●自走式エリアモニタ
 自走式エリアモニタは、J-PARCの加速器運転停止後に加速器トンネル内の残留放射線レベルを無人で測定し、作業者入域に際しての安全確認を行うための装置である。J-PARCでは、放射線管理室員の放射線被ばくを低減するため、本モニタの開発を進めており、現在、第1号機を導入してフィールドテストを行っている。本モニタは加速器運転中、トンネル内から退避した場所で待機する。モニタ走行中はトンネル床に貼られたアルミテープのルートを認識しながら走行する。 また線量率測定位置及び測定点の高さ情報等については、予め決められたポイントの床に貼られたバーコードシールを検知し自動測定が行われる。測定データは無線通信によりデータ処理計算機に伝送される。今後、フィールドテストによって問題点を抽出し、実用化に向けた改良を進めていく予定である。

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●マイクロピクセル型二次元中性子ガス検出器の開発(MPGC:Micro-pixel Gas Chamber)
 J-PARCのパルス中性子源を用いた中性子散乱実験用として高性能な二次元中性子検出器の開発が求められ、高い位置分解能と検出効率、応答速度の高速化及び長期安定性が必要とされる。これまでに開発を進めてきた個別信号読出し型の中性子計測システムの成果を基に、マイクロピクセル型素子を用いた個別読出し型二次元中性子ガス検出器システム(MPGCシステム)を開発した。 今回試作した中性子検出素子は有感面積が50mm角、有効厚みが20mmのもので、試験ではJRR-3で細い中性子ビームを利用して位置検出分解能の測定評価を行った。素子はアノードとカソードの検出ピクセルが400μmの間隔でマトリックス状に平面配置されている。封入ガスはヘリウムと四フッ化炭素(He+CF4)の混合ガスで封入圧力は5atmとした。測定はビームポートからの波長3.9Åの冷中性子ビームをコリメータで0.3mm角の矩形形状に絞って検出器に入射し中性子ビームプロファイルを測定した。 測定ポイントは5点としたが、MPGCシステムはいずれの測定点においてもガスゲインの変化は殆どなく、安定に作動することが確認できた。位置分解能を示すFWHMもアノード及びカソード方向とも2.3mm以下が得られ、測定個所いずれにおいても大きな差異は無く、今後中性子イメージ計測に適用できる見通しが得られた(詳細については、日本原子力学会「2006年秋の大会: E45」の報告を参照願います)。

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●J-PARC静電型粒子分離装置
 J-PARCハドロン実験施設のK1.8ビームラインに設置される静電型粒子分離装置/ES(Electrostatic)セパレータ は、二枚の対向平面電極間に高電場を発生する装置。ESセパレータの上流と下流に設置する双極電磁石による直交する磁場との組合わせにより、T1標的で生成される二次荷電粒子を選別して実験エリアに導く。K1.8ビームラインでは6m長のESセパレータ二機を使用しK-中間子ビームの純度を上げる。生成標的に近い初段のESセパレータには一次ビームライン要素に準ずる高い耐放射線性が要求される。 よってKEKつくばで使用していた既存のESセパレータの設計を元に高い放射線環境下でも十分に使用に耐え、かつ長期に安定に動作するような改良型の設計・製作と試験を進めている。今回、既存のセパレータの電圧供給部に使われてきた有機材料であるFRP(Fiber Reinforced Plastics)をセラミックスで成形する事とした。また、放電を抑制するために内部電界を緩和する様に真空容器枝管接合部を引っ張り成形とすることで曲率を大きく持たせた。 新型機は、全長6mの内、電圧印可側(ビーム下流側)の3m部分が製作され、現在は上下に配置の平行電極が真空容器内部へ取付けられた状態である。コッククロフトウォルトン型の高電圧発生装置については正負一組の製作を終えている。下側平行電極(+)に電圧を供給するためのサイドチェンバーを利用した高電圧発生装置単体での各種試験を進め、正・負極ともに最大定格の400kVの印可に成功した。8時間の連続運転においても漏れ電流10μA以上の負荷を生じる放電頻度は1時間に数回程度と少なく、良好な結果を得ている。 (詳しくはhttp://www-ps.kek.jp/jhf-np/hadronbeam/technical_report/index-ja.htmlの各中間報告書のセパレータの項をご参照ください)

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●J-PARC利用者協議会
 2006年9月29日、上野の日本原子力研究開発機構・システム計算科学センターにおいてJ-PARC建設協定に基づく第7回利用者協議会及びJ-PARC運営協定に基づく第2回J-PARC利用者協議会が開催された。利用者協議会の委員の所属変更等に伴う委員の変更が確認された。続く各種報告や協議内容は、平成18年9月20日に開催のJ-PARC運営会議とほぼ同じものとなった(文末に抜粋)。また、橋本委員長から利用者協議会をより一層機能的にするための体制変更に対する提案が行われ、分野別に代表を立てて委員長と幹事会的なコアを作り、自主的に意見を発信していくような体制作りを行うこととなった。
(J-PARC運営会議から)  平成18年6月に開催以降の全体の進捗状況の報告、加速器の現状報告、50GeVにおける実験課題審査の結果について報告。環境整備についてなど各検討チーム(環境整備について、物質生命施設の共用について、ユーザーズオフィスの準備について)からの報告と議論。プロジェクトチームにある委員会の今後のあり方や、J-PARCの今後の大きなセレモニーの内容や開催時期、プレス発表を行うマイルストーン等の議論、が行われた。
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●「3GeV棟からの展望」と「50GeVトンネル体験」
 2006年10月21日、土曜日(10:00〜15:00)に原子力科学研究所の施設一般公開が行われた。J-PARCでは2つの見学コースを設定し、参加希望者に現在建設中のJ-PARC施設を見学頂いた。見学コースは「3GeVシンクロトロンからの展望」と「50GeVトンネル体験」と名づけられ、両コースとも1日4回、所要時間50分程度で、各回約30名の見学希望者を募った。見学バスは大会本部の情報交流棟を出発し、目的の施設までの往復時はJ-PARCについての説明を行い、また車内から完成した建家や建設中の施設の見学が行われた。 各施設に到着してからは3GeV棟では地上15mの展望塔から全施設を見学頂き、また50GeVトンネルでは1周1600mのトンネルのうち約500mを歩いて大きな電磁石等を身近に見て頂いた。各コースともJ-PARC関係者が施設の説明と安全確保に務め、予想を越える多くの参加者に好評であった。

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