●建物建設状況 |
(1) | リニアック棟では、加速器機器などの各種保護インターロック確認試験やビーム調整試験を24時間体制で実施中。3GeVシンクロトロン棟では、主電磁石電源通電試験を開始した。3NBTトンネルでは、真空ビームダクト、真空ポンプの据付や電磁石へのケーブル接続、冷却水設備の試運転調整を継続中である。 |
(2) | 50GeVシンクロトロンのトンネルでは、電磁石の搬入据付調整及びビームダクトの真空排気調整運転を継続中である。また第1電源棟他では、電気・機械設備関係の仕上げ工事や周辺外構のアスファルト舗装工事を実施中である。 |
(3) | 物質・生命科学実験施設では、内装の仕上げ工事や実験ホールの床塗装が完了し、建家電気機械設備の調整試運転及び外構工事などを進めている。また、中性子ターゲットステーション水冷遮蔽体プラグ据付けを終了し、現在はホットセル内機器据付や中性子ビームライン遮蔽体の設置工事などを実施中である。 |
(4) | 原子核・素粒子(ハドロン)実験施設では、実験ホールの外壁パネル工事や外壁・屋根塗装工事、ホール内部ではビームライン遮蔽壁工事などを実施中。またスイッチヤード下流部では盛土造成や外構工事を、スイッチヤード内部では電磁石の搬入据付を継続中。ニュートリノ実験施設トンネルアーク部(陽子ビーム導入部)ではトンネル工事が終了し、ターゲットステーション部では基礎掘削山留工事が始まった。 |
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●リニアックのビーム加速試験を開始 |
リニアックは全長約330mの直線型の加速器で、平成20年度後半のJ-PARC供用開始を目指す第I期分として整備した約120mの装置によって、負水素イオンビームをエネルギー約180MeV(1億8千万電子ボルト、光速の約50%のスピード)、ピーク電流30mAまで加速するもの。今回、リニアックの加速器総合調整試験運転を2006年10月初旬から実施し、11月20日からビームの加速試験を開始した。
その結果、リニアックの最初段部分の高周波四重極型リニアック(RFQ)において、約3MeV(3百万電子ボルト)、ピーク電流5mAまでの加速に成功したことが翌21日に確認された。このRFQの後段に組まれてるドリフトチューブリニアック(DTL)の第1空洞までは、KEKつくばにおいて性能試験を実施済みで、リニアックトンネルの完成に伴い昨年7月にそれら装置の移送が行われた。
装置の解体、再組立、各種調整試験後にまずはRFQでのビーム加速を再現できることが、J-PARCリニアックで重要な意味を持つものであった。今後さらにビーム調整試験を進め、2007年夏頃には初期の性能である180MeVまでビームを加速させる予定である。
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●3GeVシンクロトロン電磁石通電試験を開始 |
3GeVシンクロトロンの一周約350mの加速器トンネルに、偏向電磁石(BM)24台、四極電磁石(QM)60台の設置が完了し、それら電磁石への通電試験が11月20日から開始された。これら試験は、J-PARCでの最大使用電力を抑えることから、リニアックの1日24時間2週間運転の合間の週に行うこと、6.6KVの高電圧を印加した通電試験であることから安全を確実に担保することから、夕方から深夜にかけてトンネル内への立入りを制限した試験体制で進めている。
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●垂直偏向電磁石の据付け - 3GeVシンクロトロンから物質・生命科学実験施設へのビーム輸送系 |
3GeVシンクロトロンから物質・生命科学実験施設(MLF)へのビーム輸送系トンネル約310m内に設置される電磁石群は、垂直・水平偏向電磁石9台、四極電磁石54台、補正電磁石45台からなる。垂直偏向電磁石は、3GeVシンクロトロンのビーム調整試験等に使用される4kWビームダンプ部や物質・生命科学実験施設に向かって陽子ビームを振り上げる傾斜部に、水平偏向電磁石はビーム輸送ラインが右左に曲がった個所にビームの向きを変えるために設置されるもの。
また、四極電磁石はビームの発散・収束を制御するため、補正電磁石はビーム軌道を修正するために配置される。これら電磁石の製作は、MLFの建屋内トンネル部に設置の電磁石の数台を除いて完成した。今回、ビームダンプへの垂直偏向電磁石が納入され、現地据付けが完了した。
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●間接水冷型超耐放射線電磁石の開発 |
原子核素粒子(ハドロン)実験施設では、これまでのR&Dの成果を基に実機K1.8D1用電磁石の間接水冷型MICコイルを製作し、現在その通電試験をKEK東カウンターホール内のモックアップにおいて実施中。ハドロン実験施設の2次粒子生成標的T1は50GeV、750kWの陽子ビームに照射され、そのうち約30%のビームパワーが開放される。
よって、その直下の真空ビームパイプが膨大な量の放射線や熱に曝され、その冷却が非常に困難になるため、電磁石全体を真空槽に配置するシステムが考案された(図1)。電気絶縁体に無機材料を使用したMICコイルの開発では中空MICの実用化がなされてきたが、MIC両端末で水と電気とを切り離すためにセラミック絶縁チューブが使われた。
しかし、今回の標的直下流の極めて放射線の厳しい環境に置かれる電磁石については、中実MICを別の冷却水配管と半田で一体化したものとすることで、セラミック絶縁チューブが不要になり最高の耐久性が実現された(図2)。特に、真空槽内への冷却水導入ではコイルの中までを1本の継ぎ目なしSUSチューブを用いることが可能となり、真空中での漏水の危険性を極限まで小さく出来た。
また、真空槽内に置かれる電磁石は空気中への放熱ができないため、ハンダで充填されたSUSケース内を水冷してもケースの外の端末部が高温になる問題があった点については、構造を見直して接続部のブスバーまでの長さを極力短くし、さらにブスバーに黒塗装を施し輻射率をあげることで、1000Aの通電においても冷却水温度(〜25℃)に対して120℃程度の温度上昇に抑えることが出来た。
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●日本中性子科学会第6回年会 |
第6回日本中性子科学会年会が2006年12月5-6日、水戸市の茨城県立県民文化センターにて開催された。5日は開会式に引続き茨城県の後援により公開講座が開かれた。会場は一般約60名を含む約300名の大勢の聴講者で埋まった。開会式では、遠藤康夫会長の開会宣言のあと橋本昌茨城県知事からご挨拶いただき、東海村に完成するJ-PARC施設、中性子利用に対する期待が述べられた。
公開講演は「ナノ世界から日常生活まで - 中性子が観る世界」と題され、まず永宮J-PARCセンター長が「J-PARCが拓く科学技術」について、一般者向けに内容を易しく説明された。また次に、KEKの内藤幸雄氏が「パーキンソン病や認知症の原因タンパク質の構造異常と発症」と題して、中性子利用によってそれら病気の原因となるタンパク質構造の異常等を解明することが新薬の開発に大きく寄与する等の内容の講演を行った。
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●文部科学省科学技術・学術審議会の第1回J-PARC評価作業部会 |
2006年12月5日に標記作業部会の第1回が開催された。これは、J-PARC計画の中間評価を行うために、同審議会の研究計画・評価分科会原子力分野の研究開発に関する委員会と学術分科会研究環境基盤部会の合同により設置されたものである。委員は全部で16名、主査には井上明久東北大学総長が就かれた。
平成15年12月に実施した前回中間評価における指摘事項への対応、多目的研究施設としての適切な運用体制の構築、実験施設における円滑な利用体制の構築などについての検討が行われ、2007年5月頃を目途に報告書がとりまとめられる予定である。
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●自然環境の保全と再生に向けた取組みに対して感謝状 |
J-PARCの施設建設に当って自然環境の保全と再生の重要性を深く理解し取組んだ事、鳥類保護に貢献したことに対して、2006年11月18日に日本鳥類保護連盟の山口萬壽美茨城県支部長から感謝状が原子力機構に贈られた。
東海研究開発センター原子力科学研究所構内に建設中のJ-PARCでは、建設工事にあたり建物配置や工事方法に工夫を凝らすなどして可能な限りの松林の保全を行い、工事終了後には森林再生のため松苗木の植栽をしている。平成15年及び平成17年の春先には植樹祭を実施し、地元小中学生を含む一般参加者、延べ約1,300人が15,000本を超える広葉樹の苗木を敷地内に植栽するなど努力を払ってきた。
また、1周約1,600mに及ぶ50GeVシンクロトロン内側の残地森林内に、茨城県内の地元自然石を利用した小鳥の水浴び・水飲み場である「バード・バス」を設置して、小鳥たちが集る環境整備も行った。その周囲には小鳥が好む実を付ける木を植栽し、ボランティアによる周囲の草取りなども行なわれた。バード・バスには常時ヤマガラ、シジュウカラやメジロなどの小鳥が集まりバードウォッチングが楽しめる。
今回はこの取組に対して感謝状が贈られたものである。J-PARCではこれを励みに、今後もより一層の自然保護活動に努力したい。
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