■ J-PARC News 第27号より       (2007/6) 
●建物建設状況
(1) リニアックは、24時間体制で3週間連続のビーム調整試験を実施中。3GeVシンクロトロンは、キッカー電磁石及び高周波加速空洞の通電試験を実施中。またビームモニターの設置及び真空ダクトの組込み作業を実施中。
(2) 50GeVシンクロトロンでは、ビームラインの真空試験を継続中。ステアリング電磁石の据付作業、四極電磁石のアライメント(位置調整)及びビームモニター組込み作業、電磁石のケーブル接続及び接地板の敷設を実施中。
(3) 物質・生命科学実験施設では、レーザーを利用した測定器による陽子ビーム輸送ライン電磁石及び中性子源の位置測定を実施。ミュオンターゲットについて遠隔操作によるキャスク内への収納及び定常位置への設置試験を実施。第一実験ホールでは、中性子ビームライン遮蔽体の設置工事を実施中。また建物西側への第三実験室増設工事を実施中。
(4) 原子核素粒子(ハドロン)実験施設は、6月末に竣工した。ニュートリノ実験施設ターゲットステーション部では、鉄筋組上げ及びコンクリート打設工事を継続中。

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●ビーム輸送系電磁石の精密アライメントを開始
 3GeVシンクロトロンから物質・生命科学実験施設へのビーム輸送系電磁石98台(偏向電磁石:9台、四極電磁石:48台、補正電磁石:41台)とビームモニター21台について、位置調整の精密アライメントを6月上旬から開始した。 装置本体上部または側面の2ヶ所ないし3ヵ所に取り付けられた基準台座にセットされたレーザー反射鏡とレーザートラッカーにより座標を自動測定し、パソコン画面にその座標情報が表示される。作業者は座標情報をもとに装置架台の位置調整ボルトを回して精密アライメントが行われ、この調整作業は7月末まで約2ケ月かけて進められる。

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●水銀ターゲット容器材料の新表面処理技術の開発に成功
 中性子源水銀ターゲットへ陽子ビームを入射して中性子が発生する際には、ターゲット内に水銀の気泡が生じる。その気泡が崩壊する際の衝撃圧で水銀ターゲット容器は損傷を受けるが、その耐損傷性を向上させる新表面処理技術を今回開発した。
 まず超高速度カメラ(島津製作所製HPV-1)を用いて、圧力波で成長崩壊する水銀気泡の超高速連続映像化を実現し、損傷を形成する局所衝撃力の定量的な評価に世界で初めて成功した。 この映像から圧力波を受けた液体水銀内では、水銀蒸気からなる微小気泡が急速に成長した後、数十マイクロ秒の瞬時で気泡が崩壊し、その過程でマイクロジェットと呼ばれる数十ミクロン径の水銀ジェットの噴射が生じ、これが容器損傷の要因となることを解明した。この観察結果を踏まえた数値計算結果を基に、プラズマ浸炭と窒化処理技術を融合させて耐損傷性を向上させる新表面加工処理技術を新たに開発した(特許出願中)。
 これにより、水銀ターゲット容器の衝撃パルス模擬試験において、容器の損傷が顕在化するまでの衝撃数を1桁延ばすことを確認した。

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●中性子源用モデレータ冷却システム
 物質・生命科学実験施設(MLF)の中性子源では、中性子源用モデレータ冷却システムの据付け調整を進めている。モデレータは、水銀ターゲットに陽子ビームを衝突させて得られる高速中性子を、物質・生命科学の研究に利用できる約1eV以下のエネルギー領域まで減速するためのものである。その材料としては中性子とほぼ同じ質量の水素原子が使用されるが、モデレータ内には高速中性子を減速させるための極低温水素(超臨界水素:約20K、1.5MPa)が水素循環ユニットから供給される。

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●最大定格電流(320kA)通電試験に成功
 ニュートリノターゲットステーションに設置する第3電磁ホーンプロトタイプが昨年度末に完成し、KEKつくばの実験棟に搬入された。今年3月に85万回のパルス通電試験を達成した第1電磁ホーンと直列に組み合わせたパルス通電試験を行い、6月1日には当初予定した最大電流320kAという定格電流値での運転を達成した。今後は各種測定を進め、その後、長期パルス通電試験を開始する。

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●原子核物理学国際会議:INPC2007
 原子核物理学の国際会議INPC2007が、平成19年6月3日〜8日に東京フォーラムにて開催された。永宮JーPARCセンター長が本会議の組織委員長を務め、3日には湯川秀樹博士の生誕100年を記念したシンポジウムが行われた。 4日の開会式では天皇陛下から当分野研究への期待のお言葉を頂いた。また、会議4日目の6月6日にはパラレルセッション「Coming New Facilities T」で、KEKの永江教授から「JーPARCプロジェクト」と題した報告が行われた。詳細については、KEKのホームページをご覧下さい。

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●国際シンポジウム: Nuclear Physics at J-PARC
 平成19年6月1日〜2日に東海村リコッティにおいて国際シンポジウム:Nuclear Physics at J-PARCが開催された。今回は原子核物理学国際会議INPC2007のプレシンポジウムとしての開催となった。14ケ国から120名(海外29名)が参加し、招待講演10講演を含む計47講演が行われ、J-PARCハドロン物理について活発な議論が交わされた。 特に第1期の重要な実験課題であるストレンジハイパー核の構造および核子との相互作用の研究についての講演が最も多く、関心の高さが伺えた。また、ハドロンの構造や媒質中での性質に関する研究についても多数発表があり、ハドロン実験施設における将来的な計画とその成果に大きな期待が寄せられた。
 また、1日午後にはJ-PARC見学ツアーが実施され99名が参加した。参加者は50GeVリングから陽子取り出しビームラインを経てハドロン実験施設までを関係者の説明を聞きながら見学し、大強度ビームを実現する施設のスケールの大きさを実感した。

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●「大強度陽子加速器計画中間評価報告書」が纏まる
 本計画については、平成12年8月に事前評価が行われ、また平成15年12月には中間評価が行われてきた。今回の中間評価は、計画全体について改めて確認するとともに、前回の中間評価における指摘事項への対応、施設の運用体制や利用体制、運転経費の考え方や国際公共財としての取組みについて妥当であるかどうかという観点から、文部科学省科学技術・学術審議会の作業部会により進められてきた。 平成18年12月5日に第1回部会が開催され、その後半年かけて各種検討項目についての審議が行われてきた。その結果、6月13日の第9回部会において中間評価報告書が纏められ、同日にプレス発表が行われた。
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●利用者協議会
 JーPARCの施設共用に関してユーザーの意見などを運営に反映させるため利用者協議会を開催している。平成19年6月18日に開催の第4回会合では中間評価等について報告された。
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●物質・生命科学ディビジョン全体会議
 平成19年4月のJーPARCセンター組織拡充により物質・生命科学ディビジョンが設置された。同ディビジョンは、中性子源、ミュオン、中性子利用及び中性子基盤の4つのセクションから成り、中性子及びミュオン関係者総勢97名で構成される。
 2007年6月1日、原子力科学研究所大講堂を会場としてディビジョン全体会議が開催され、池田裕二郎ディビジョン長と池田進副ディビジョン長による挨拶の後、各セクションリーダー及び関係者により機器製作、研究開発の説明が行われ、ディビジョン員の相互理解を深める機会となった。

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