■ J-PARC News 第29号より       (2007/8) 
●建物建設状況
(1) リニアックは運転を停止し、夏期のメンテナンスや各種試験調整を実施。3GeVシンクロトロンは、9月からのビーム試験に向けて各種電磁石及び高周波加速空胴の総合調整試験を実施。また入出射部近辺では真空ダクトの接続作業やビームモニターの設置を実施、出射部のセプタム電磁石の据付けを完了した。
(2) 50GeVシンクロトロンは、レーザーを利用した電磁石の精密アライメントや、ビームラインの真空試験を実施中。また、各電磁石への電源ケーブル接続作業や、ビームダクト、ベローズ組込み作業を実施中。
(3) 物質・生命科学実験施設は、陽子ビームラインのM2トンネル上部遮蔽体の設置工事を終了。第2実験ホールの中性子ビームライン遮蔽体設置や、長尺ビームライン実験施設工事を開始。また、マニュピレータの遠隔操作試験を実施。
(4) 原子核素粒子(ハドロン)実験施設は、第2機械室で冷却水配管接続作業を実施。ニュートリノ実験施設ターゲットステーション部は、大型機器となるヘリウム容器搬入据付工事を実施。またディケイボリューム下流部は、基盤造成工事を実施中。

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●3GeVシンクロトロン出射部のセプタム電磁石の設置
 ビーム出射部のキッカー電磁石で周回ビーム軌道から蹴りだされた陽子ビームをビーム輸送系に導くセプタム電磁石3台についての据付けを完了した。

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●ヘリウム容器上部構造体の輸送(ニュートリノ実験施設)
 ニュートリノ実験施設では、50GeVシンクロトロンからの陽子ビームを標的に衝突させたときに発生するパイ中間子が崩壊トンネルを通過する際に生成されるミューニュートリノを使った次期ニュートリノ振動実験(T2KTokai to Kamioka)が行われる。 ターゲットステーション地下部には標的グラファイト棒を内蔵した第1電磁ホーンと、発生したパイ中間子を前方方向の崩壊トンネルへ揃えるため、更に2台の電磁ホーンが設置される。これら電磁ホーン周りは極めて放射線レベルが高いため雰囲気を空気からヘリウムとする。 そのため厚み10cmの鋼板で幅4m、長さ11m、深さ15m、総重量約300tという大型のヘリウム容器が設置される。ヘリウム容器は各部パーツの状態で2007年8月3日から15日にかけて、常陸那珂港からJーPARCまで約3kmを主に夜間、周辺の交通を制限してスーパーキャリアと呼ばれる大型特殊トレーラーにより運搬された。 8月8日午後には、今回の最大運搬物となった幅4m、長さ11m、高さ3m、重量約60tのヘリウム容器上部構造体の搬入が実施され、併せてプレス見学会が開かれた。

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●中性子遮蔽コンクリートの開発
 KEKは、普通コンクリートに比べて約1.7倍の中性子遮蔽性能を持ち(壁厚を約40%減らすことが可能となる)、コンクリート強度や長期耐久性及び中性化深さ量がそれと同等以上である新たな中性子遮蔽コンクリートを(株)ハザマと共同開発した(特許出願中)。 中性子遮蔽コンクリートは中性子を減速させる水素を多く含んだ特殊骨材と、中性子を吸収するホウ素を多く含んだ特殊骨材を用い、中性子の減速と吸収の両方の性能を持たせたもので、高速中性子に対しても十分な遮蔽効果がある。 コンクリート材料の製造コストは、特殊骨材の分だけアップするがPC板製品※1では普通コンクリートの約2割増で、建物重量を軽減できるため基礎工事費を低減できると考えられる。J-PARCの物質・生命科学実験施設等における中性子ビームライン遮蔽体への利用が有効と考えられる。
(※1:PCは「プレキャスト・コンクリート」の意味。工場で型枠を使用して必要とする形のコンクリート板を作るもので、正確な形状、緻密なコンクリート打設、季節に関わらず均一な製品が可能になる、などの特徴がある)

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●グラファイト製ビームダンプの開発 (ニュートリノ実験施設)
 ニュートリノ実験施設では、50GeVシンクロトロンからの陽子ビームを標的に衝突させたときに発生するパイ中間子が崩壊トンネルを通過する際に生成されるミューニュートリノを使った次期ニュートリノ振動実験(T2KTokai to Kamioka)が行われる。 パイ中間子は電磁ホーンによって前方方向に揃えられ、約100mの崩壊トンネルを通過する際にミュー粒子とミューニュートリノに崩壊する。これらミュー粒子や標的と反応しなかった陽子等は崩壊トンネル最下流部に設置するビームダンプで吸収する。 ダンプは写真1に示すコアモジュール14体を2列に組上げたもので、横幅約2.2m、高さ 4.9m、奥行き約3.2mとなる。ビームダンプの熱除去のためにグラファイトには水冷アルミ冷却板が取り付けられ、それら接触面の熱伝達を良好なものとするため接触面仕上げ精度は0.1mm以下としている。 これはコアモジュール相互においても同様としている。更にグラファイトとアルミ冷却板の熱伝達はそれらの締結力で変化するため、熱膨張による影響を吸収させるため多重バネ座金構造としている。また、これらコアの支持機構については5mmの熱変位を許容するスライドサポート設計としている。

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●ハドロン実験ホール完成記念見学会
 J-PARCハドロン実験ホールの建築工事が6月末に完了し、これを記念して関係した方々へ謝意を表しホールを披露するための見学会を平成19年7月27日、午後1時30分から午後4時30分まで開催した。当日は、KEK、JAEAの役職員、建設に尽力された関連会社、ハドロンホールでの実験を企画している各大学・研究所のユーザー等約250名の参加となった。 完成記念式では永宮正治J-PARCセンター長、 高崎史彦KEK素核研所長、ハドロンホールユーザー会長の仲澤和馬岐阜大学教授、田中敏夫KEK施設部長から挨拶があった。施設内では、二次粒子生成標的・T1ターゲ ット、ビームダンプ、K1.8やK1.1、KLなどのビームライン、スイッチヤードなどの各所で担当者による説明が行われた。 また、各ビームラインでの実験を準備しているユーザーからは実験に関する説明も行われた。見学会の前半には、NHKなどメディアによる取材も併行して行われた。ハドロンホールでは、今後ビームラインの設置や実験装置の準備を進め、平成20年12月までに最初の陽子ビームを受け入れる準備を整える予定である。

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●第4回日本加速器学会年会で技術貢献賞
     「単層超伝導コイルによる複合磁場磁石の開発」
 2007年8月1〜3日、埼玉県の和光市民文化センター「サンアゼリア」を会場に、第4回日本加速器学会年会・第32回リニアック技術研究会が、当学会研究会主催;理研・仁科加速器研究センター共催で開かれた。3日間での口頭発表件数は69件(その内J-PARC関連が11件)で、ポスター発表件数は229件(同40件)となった。 初日の一般公開講演では、理研・仁科加速器研究センターの阿部氏が「加速器を使って植物の新品種を創る」と題して新品種の花や植物の改良試験などについて、また櫻井氏が「加速器を利用した現代錬金術」と題した興味深い話をされた。 2日目に行われた加速器学会総会では学会賞受賞式が行われ、KEKの荻津、中本、東氏がニュートリノビームラインアーク部に使用できる超伝導電磁石の開発成果「単層超伝導コイルによる複合磁場磁石の開発」に対し技術貢献賞が贈られ、3日目には受賞講演も行われた。

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●J-PARC視察・見学者が一万人達成!
 平成17年4月からの累計で、J-PARCの視察・見学者が平成19年8月8日に一万人に到達した。当日、物質・生命科学実験施設に訪れた東北大学のグループで理学部の高橋沢弥さんが一万人目となった。これを記念して、永宮J-PARCセンター長から一万人目の認定書及び建設記録のDVD等記念品が手渡された。J-PARCについては、「壮大なプロジェクトが行われている!」と驚きの様子を見せていた。

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●物理チャレンジ参加の高校生がJ-PARCを見学
 物理チャレンジは、20歳未満の高等教育機関入学前の青少年を対象に物理の面白さを体験してもらうことを目的とした、全国規模の物理コンテスト。日本物理学会などが企画し県教育委員会が共催した今年の「物理チャレンジ2007」は、筑波大学を主会場に平成19年7月29日から8月1日の3泊4日で開催され中高生98名(中学生は2名)が参加した。 これは全国50会場で第1チャレンジが実施され500名程度の参加者から100名程度が選抜される。更に第2チャレンジが行われ理論・実験問題コンテストの結果で優秀な方には賞が授与される。また来年の国際物理オリンピックへの日本代表選手の選考を兼ねている。 この企画では最先端研究施設の見学や第一線研究者や物理学研究者との語らいを深める機会なども織り込まれており、今回物理チャレンジ参加の中高校生、筑波大学生及び教員等を含め150名程度がJ-PARCを見学し、研究者との懇談を持たれた。J-PARCを訪れた「物理チャレンジ2007」の様子は、平成19年8月19日のフジテレビ「おはよう茨城」で放映された。 高校生の一人が「自分が喘息を患っている、このような施設が出来て喘息に効く薬が開発されることを願っている」と、期待を込めてコ メントを出していた。

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