■ J-PARC News 第33号より       (2007/12) 
●50GeVシンクロトロン(MR)、電磁石の総合通電試験を開始
 12月下旬からMR電磁石への高電圧通電試験が開始される。MRはJ-PARCの最終段加速器で、来春にはビーム試験が実施している3GeVシンクロトロンから、陽子ビーム入射を予定している。今後、高周波加速空胴の調整試験等に加え、電磁石単体通電試験、区分けされた電磁石群(ファミリー試験)の通電試験等を進め、電磁石全数の通電及び高周波加速空胴通電などを行い、機器の健全性を確認する。

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●産業利用促進に向けた活動
(1) 第2回非破壊分析・可視化研究会
 中性子利用促進を目指した中性子の産業利用の有効性を産業界等に広く知らせることを目的とした茨城県中性子利用促進研究会では、12の研究会が活動を行っている(http://www.sf21-ibaraki.jp/kenkyukai/index.html)。 そのうち、非破壊分析・可視化研究会が第2回研究会を2007年12月6日につくば国際会議場で開催した。日本原子力研究開発機構の松江秀明研究員が「中性子を利用した非破壊分析装置(PGA)の将来計画」について、また同機構の大島真澄研究員が「多重即発ガンマ線分析(MPGA)の現状」について報告を行った。 平成18年度から同機構ではJRR-3原子炉の中性子ビームを利用したトライアルユースが実施されており、例えばPGAを利用しての海岸壁コンクリート中の塩分濃度分布測定、MPGAを使った岩石中のイリジウム測定による隕石落下の研究などが紹介された。また、首都大学東京の海老原充教授が「利用者からの提案」を説明した。

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(2) 「産業界のためのJ-PARC見学会」
 平成19年12月7日に産業界関係者に向けたJ-PARC見学会が、中性子の産業応用フォーラム及び日本中性子科学会の主催で実施された。現地見学会に先立ち東海村の「テクノ交流館リコッティ」において、日本原子力研究開発機構・J-PARCセンターの大山副センター長が「J-PARCの現状について」、また量子ビーム応用研究部門の森井部門長が「中性子の産業利用の動向について」等、全体概要の説明を行った。 参加者からは「照射された試料の扱い」、「原子炉からの定常中性子とJ-PARCのパルス中性子による試験・研究の違い」などについて質問があった。続いてJ-PARC施設見学が行われ、50GeVシンクロトロン、ハドロン実験施設及び物質・生命科学実験施設などの見学を行った。

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●特集:JーPARCを利用して出来ること
< 基礎物理:例えば、物質の質量の起源は?>
 素粒子とは自然界の物質を構成する最小単位である。100年前までは原子が素粒子と考えられていたが、研究が進むにつれ原子は原子核と電子から、原子核は陽子と中性子、さらにそれらはクオークから構成されていることが解った。また電子もレプトンと呼ばれる素粒子であることが解った。
 従って現在、素粒子と考えられるのは電子の仲間が属するレプトン族と、原子核を構成するクオーク族となる。これら素粒子の姿、性質などを突き止める究極の研究が行われるのが、原子核素粒子(ハドロン)実験である。例えばバラバラのクオークが集合体になるとなぜ重くなるのか、強い結合が質量を生み出すのか、物に重さがあるのはなぜなのか?など、基礎科学の研究が行われる。
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●施設建設状況
(1) 加速器関連
 3GeVシンクロトロンについて、国の安全審査となる加速器運転時検査((財)原子力安全技術センターが代行)を11月28日と12月21日に実施。50GeVシンクロトロンは、電磁石電源ケーブルの敷設作業を継続実施し、順次ケーブル耐圧試験を実施した。
(2) 実験施設関連
 物質・生命科学実験施設は、ミュオンターゲット交換試験、ターゲット台車遠隔操作試験、中性子モデレータ遠隔操作試験等を実施。中性子ビームラインでは遮蔽体据付工事、建屋東側に建設の長尺ビームライン建屋建設工事を継続実施。原子核素粒子実験施設では、実験ホールで電磁石組立てが進められ、また遮蔽体の移動等が行われた。 ニュートリノ実験施設は、設備棟建設工事、ターゲットステーション構造体のコンクリ打設、ディケイボリューム下流部掘削工事を継続実施中。またモニター棟では地中連壁内側の土砂掘削工事を開始した。

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●第3電磁ホーンのフルセットアップ試験
 プロトタイプの第3電磁ホーンについてパルス通電試験等がKEKつくばサイトで実施された。現在は、電磁ホーンをJ-PARCのニュートリノターゲットステーションに組上た大型ヘリウム容器(間口4×11m、深さ15m)に吊込む事のモックアップ試験等を富士実験棟で行っている。吊り下げ治具に組込まれた電磁ホーンを天井クレーンで大型ヘリウム容器模擬支持体に設置、パルス通電のためのブスバー接続、冷却水配管の接続などが行われた。 また吊り下げ治具の四隅に取り付けられている電磁ホーン位置調整機構による電磁ホーンの位置調整試験では電磁ホーン中心軸位置で精度1mm以内での調整、今月末から通電試験などフルセットアップ試験が続けられる。現地への据付けは、他の2台の電磁ホーンと併せて平成20年度夏頃が予定されている。

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●ターゲット台車遠隔操作試験
 物質・生命科学実験施設(MLF)の水銀ターゲット容器はターゲット台車前方に取り付けられ、それら台車、ターゲット容器等は全て遠隔で操作されるシステムとなっている。ターゲット容器はMLF中性子源が1MWフルパワー運転された場合、半年毎に交換する設計となっている。 今回、来春のビーム受入に向けた中性子源各装置の各種試験が進められているが、放射化機器取扱室内部に設置された遠隔操作カメラによる台車操作、パワーマニュピュレータ等を使ってのターゲット容器着脱試験等が進められている。以下の写真は、台車に装着したターゲット容器の固定ナットを遠隔操作で締めている様子である。

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●ドイツ・ヘルムホルツ協会ユルゲン・ムリュネーク会長が視察
 ドイツのヘルムホルツ協会(注1)のユルゲン・ムリュネーク会長とハーンマイトナー研究所(注2)シュタイナー所長が12月12日にJ-PARCを視察された。J-PARCセンター永宮センター長がJ-PARCの概要について説明を行い、その後J-PARCを視察した。 物質・生命科学実験施設や50GeVシンクロトロンなどの視察では、施設や装置についての活発な質問や意見交換が行われた。当日はドイツ大使館 科学担当シュレーダー参事官も同行した。
  (注1): 国の使命を負ったドイツの国立研究センターの包括的ネットワーク組織
  (注2): 最先端の技術開発を担う研究施設

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