■ J-PARC News 第126号より       (2015/10) 
●梶田隆章教授がノーベル物理学賞2015を受賞 (10月6日) 、おめでとうございます!
 - ニュートリノが質量を持つことを示す「ニュートリノ振動」の発見 - 
  東京大学宇宙線研究所 所長の梶田隆章教授は、岐阜県飛騨市神岡町にあるニュートリノ観測装置スーパ―カミオカンデ (SK) を用いた大気ニュートリノの観測により、「ミュー型」ニュートリノが別の種類に変わる現象 (ニュートリノ振動) を発見、その功績が認められてノーベル物理学賞を受賞されました。従来の素粒子理論ではニュートリノの質量は 0 (ゼロ) であると永らく考えられて来ましたが、受賞した研究によりニュートリノには非常に小さいながら質量があることが分かり、素粒子理論に大きな変革を迫るものとなりました。

  ニュートリノは素粒子の1種であり、「電子型」「ミュー型」「タウ型」の3種類があります。その後、どの型のニュートリノがどの型に変化するのかを詳細に調べるための実験が、世界各地で精力的に進められて来ました。

  梶田教授も中心メンバーとして初期から参加しているT2K国際共同実験グループは、J-PARCにあるニュートリノ実験施設とSKを用いた実験を強力に推し進め、平成25年7月に、「ミュー型」が「電子型」に振動する事象を世界で初めて発見したことを欧州物理学会で報告しました。現在は反ニュートリノ (ニュートリノの反物質) を用いた、ニュートリノにおける粒子と反粒子の性質の違い(CP対称性の破れ)を解明するための実験を行なっています。ニュートリノ研究は宇宙における物質の起源の謎を解明する鍵を握ると考えられ、J-PARCではその解明に向けた研究が着実に進められています。



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●The International workshop on future potential of high intensity proton accelerator for particle and nuclear physics (HINT2015) 
  J-PARCなどの大強度陽子加速器を使った素粒子原子核物理の現状とメガワット級の大強度のビームに向けた計画、およびそれによって拓かれる新しい領域の展望について議論する国際ワークショップを10月13〜15日に、東海村にあるいばらき量子ビーム研究センターで開催し、12か国から130人以上の研究者が集まりました。初日にはNHKの取材も行われ、会議の冒頭、齊藤直人J-PARCセンター長が、ニュートリノ研究で東京大学宇宙線研究所長の梶田隆章教授がノーベル物理学賞を受賞したことを報告すると、会場は拍手に包まれました。会議では、加速器施設とその技術、大強度ビーム技術、また大強度ビームを使った幅広い分野の実験の話題について40件を超える講演が行われ、熱い議論が交わされました。最終日の午後には、MLF、ニュートリノ実験施設、ハドロン実験施設の見学会を行いました。

  今回、会議の合間に、外国人若手研究者や小林隆素粒子原子核ディビジョン長が、国際共同研究グループが進めるT2K実験などニュートリノ研究についての取材を受けていました。


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●磁気渦を押すだけで生成・消去できる新手法を発見 (10/13、プレス発表)  - 超省電力型の磁気メモリデバイス実現へ前進 - 
  本成果は、理化学研究所(理研)、総合科学研究機構(CROSS)などの共同研究グループが、物質・生命科学実験施設(MLF)の中性子小角散乱実験装置「大観」(BL15)の利用実験で得たものです。実験では、MnSi合金試料への応力を変化させながら振動磁場を加えて中性子を照射し、中性子の磁気散乱パターンの変化を直接的に確かめることで、磁気渦(スキルミオン)の生成および消滅を明らかにしました。この結果は、スキルミオンを用いた次世代型メモリの開発の新たな指針になるものと期待されます。本研究は、10月13日の国際科学雑誌『Nature Communications』に掲載されました。

  詳細は、http://j-parc.jp/ja/topics/2015/Pulse151013.htmlをご覧ください。
   


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●SiCワークショップ "SiC複合材料の加速器材料としての可能性の探索"  (9/29、J-PARC研究棟) 
  近年、炭化珪素 (SiC) 複合材料は、先進的な製作技術であるNITE (Nano-Infiltration and Transient Eutectic phase) 法により、高密度で性能の良いものが得られるようになり、世界的に注目されています。今回、加速器材料としての可能性を探索する目的で、研究開発を進める室蘭工業大学OASIS (環境・エネルギーシステム材料研究機構) とJ-PARCセンターはワークショップを開催しました。室蘭工業大学などから、SiC複合材料開発の現状とそれらの使用実績について4件の紹介講演、J-PARCからはMLFのミュオン生成標的 (二次粒子標的) 、MLF中性子源ビーム窓や、ハドロンビームラインにおけるビーム窓、3GeVシンクロトンでのSiC複合材料使用の可能性など、様々な要素材料の要求性能などについて5件の講演が行われ、有意義な情報交換が行われました。


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●放射線安全講演会 (9/29、J-PARC・原子力科学研究所大講堂) 
  J-PARCセンターで働く放射線業務従事者への平成27年度再教育訓練で、放射線安全講演会を開催しました。KEKつくばをサブ会場とした3号館へは、テレビ会議システムを利用しました。今回は講師に、弘前大学被ばく医療総合研究所の床次眞司教授をお招きし、「放射線被ばくによる人体への影響〜福島原発事故から自然放射線被ばくまで」と題して講演を頂きました。講演では、大きく分けて、放射線の基礎知識、福島原発事故の概要、自然放射線被ばくの現状について話され、最後に「放射線に対する正しい知識を持ち正しく判断し行動することが必要である」と結ばれていました。同大学は、事故後直ちに文部科学省の要請を受けて、教職員の福島派遣を決定され、福島県民への支援を進めてこられました。また、講演会終了後は、J-PARCの放射線安全担当者から、J-PARCでの放射線業務従事者としての注意事項の説明と、その理解度確認が行われました。


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●施設の状況
  1. 加速器運転計画
   10-11月の運転計画は、次のとおりです。なお、機器の調整状況により変更が生じる場合があります。
   


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   2. 実験施設関連
   (1) 物質・生命科学実験施設 (MLF) では、中性子標的容器の交換作業を9月28日に実施しました。4月に発生した中性子標的容器の不具合に対する再発防止策を施した新しい容器が9月14日にMLFへ搬入され、後日、標的を搭載する台車のある放射化機器取扱室へ移動しました。標的容器の交換作業は、28日に約12時間かけて完了しました。その後、水銀循環系、冷却水配管等の気密確認など一連の作業を行い、10月27日からMLFの利用運転を再開致しました。
   


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   (2) 50GeVシンクロトロン (MR) では、ハドロン実験施設 (HD) へのビーム取り出し用低磁場セプタム電磁石の直近上流部に、マルチリボンビームプロファイルモニター (MRPM) を設置しました。MRを周回する陽子ビームの形状を測定することで、実験施設へより効率の良いビーム取出しが行えます。
   


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   (3) ハドロン実験施設 (HD) では、南実験棟の地下1階にCOMET実験のミューオン輸送ソレノイド電磁石が搬入・設置され、10月21日に実験関係者による見学会が行われました。
  詳細は、高エネルギー加速器研究機構 (KEK) のホームページをご覧ください。
  http://www2.kek.jp/ipns/articles/comet-solenoid/index.html
   


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●折り紙体験教室 (10/8、原子力科学研究所) 
  外国人研究者などの文化交流活動の一環として、JAEA主催の折り紙体験教室が開催されました。海外からのJ-PARCユーザーなども積極的に参加し、昼休みの短い時間でしたが、先生の指導の下、色々な作品作りに取り組んでいました。中には手の込んだものを完成させたり、折り紙の兜を頭にかぶって、日本人参加者と和む姿が見られました。
   


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●大空マルシェin大神宮・村松山虚空蔵堂 (10/11、東海村) 
 
   大空マルシェは、東海村の文化と歴史を後世に伝えるイベントとして東海村観光協会が毎年開催しており、今年も大勢の人が会場を訪れました。J-PARCセンターは、地元との交流を促進し、"科学に興味を"とのねらいで、昨年から「科学実験コーナー」を開いています。マイナス196℃の液体窒素を使った“冷える世界”と“超伝導コースター”の実験、今年は、磁力による“走る乾電池”実験を新たに行い、親子連れの来場客が途切れなく実験を楽しみました。パネル展示では、梶田氏がニュートリノ研究でノーベル賞を受賞したこともあり、T2K実験に関心を示す方が多く見られました。


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●ご視察者など
    10月    7日  上田光幸 文部科学省量子放射線研究推進室長
    10月   14日  オークリッジ研究所 Andrew Payzant氏
    10月   19日  駐日英国大使館 環境・エネルギー部 部長 Jonathan Joo-Thomson氏
   
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