■ J-PARC News 第132号より       (2016/04) 
●パーキンソン病発症につながる
「病態」タンパク質分子の異常なふるまいを発見 (4月21日、プレス発表) 
  量子科学技術研究開発機構の藤原悟上席研究員・松尾龍人主任研究員、大阪大学、鳥取大学、J-PARCセンター中性子利用セクションの柴田薫研究副主幹 (日本原子力研究開発機構) 、総合科学研究機構の研究チームは、物質・生命科学実験施設 (MLF/BL02) の中性子準弾性散乱装置DNAを用いて、パーキンソン病の発症と密接に関係する脳内のあるタンパク質の動きを分子レベルで調べ、このタンパク質同士が繊維状に集合した状態で異常なふるまいを示すことを世界で初めて発見しました。本成果は、病気発症のカギとなるタンパク質の集合状態の形成過程や、その形成が関係する種々の疾病の発症の仕組みの解明、また、それら疾病の抑制に貢献することが期待されます。

  本研究成果は、オープンアクセスの国際科学雑誌「PLOS ONE」に、4月20日 (米国東部標準時間) に掲載されました。詳細につきましては、http://j-parc.jp/ja/topics/2016/Press160421.htmlをご覧ください。



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●副作用の少ない骨粗しょう症薬剤の開発につながる新たな知見 (茨城県中性子ビームライン) 
  富山大学の横山武司助教 (大学院医学薬学研究部・薬学) 、茨城大学の田中伊知朗教授 (工学部生体分子機能工学科) 、日下勝弘教授 (フロンティア応用原子科学研究センター) らの研究グループは、骨粗しょう症薬剤ビスホスホネートとその疾患に大きく関わる標的タンパク質であるファルネシル二リン酸合成酵素 (FPPS) 複合体の中性子結晶構造解析を、J-PARCの茨城県生命物質構造解析装置 (iBIX) とドイツのハインツ・マイアー・ライプニッツ中性子源 (FRM U) の中性子回折装置 (BIODIFF) を利用して行いました。その結果、ビスホスホネートのリン酸基の水素原子が取れてすべて完全な脱プロトン化状態 (負イオン) となり、正の電荷を帯びた標的タンパク質の水素や水分子の水素と結合していることを明らかにしました。このことは、水素と親和性の高い部分が豊富な薬剤の方が標的タンパク質阻害剤として効率が良いことを示唆しており、副作用の少ない薬剤の設計の重要な手掛りとなります。

  本研究成果は、2015年8月に米国化学会誌、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー (Journal of Medicinal Chemistry,ACS) に掲載されました。詳細につきましては、http://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jmedchem.5b01147をご覧ください。

※用語解説 ビスホスホネート:骨に対して高い親和性を持ち、破骨細胞にて骨の吸収を阻害する薬剤

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●平成27年度西川賞を三部勉KEK准教授らが受賞 (2月15日、東京・アルカディア市ヶ谷) 
  素粒子のひとつであるミューオン (ミュオン、ミュー粒子とも呼ぶ) の基本的性質である異常磁気モーメント (g-2) の精密測定と、電気双極子モーメント (EDM) の発見を目指すミューオンg-2/EDM実験の実現には、大量の超低速ミューオン生成が不可欠です。そのため、J-PARCハドロンセクションの三部勉 高エネルギー加速器研究機構 (KEK) 准教授と理化学研究所の石田勝彦 副主任研究員らが中心となり「極冷ミューオンビーム実現のためのミューオニウム標的開発」研究を推進してきました。今回、この技術開発がミューオニウム生成量の大幅な増大に貢献すると評価され、三部氏と石田氏は公益財団法人高エネルギー加速器科学研究奨励会から平成27年度西川賞を共同で受賞され、2月15日にアルカディア市ヶ谷にて授賞式典が行われました。また、「核物理研究センター大強度ミューオン源の開発と建設」の研究により同賞を、J-PARC低温セクションの吉田誠助教と大阪大学大学院理学研究科の佐藤朗助教が、共同で受賞しました。

  この西川賞は、加速器ならびに加速器利用に関る実験装置の研究において、独創性に優れ、かつ論文発表され、 国際的にも評価の高い業績をあげた、原則として50才以下の研究者・技術者に授与されるものです。

  詳細につきましては、J-PARCホームページhttp://www.heas.jp/award/h27zyusyou.htmlをご覧ください。

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●J-PARCへのユーザー来所者の推移 (〜平成27年度) 
  平成20年12月の施設利用開始以来、多くのユーザーがJ-PARCを訪れています。平成27年度末日までのユーザー来所者の総数は、延べ189,557人・日となりました。右の図は、これまでの来所者数を年度毎に集計したものです。平成21年度以降は、平成23、25年度にそれぞれ震災とハドロン事故の影響で減少したものの、各年度概ね3万人・日前後の来所者数となっています。
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●施設の状況
  ■加速器運転計画

  5月の運転計画は、次のとおりです。なお、機器の調整状況により変更になる場合があります。

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  ■実験施設関連

   (1) ハドロン実験施設では、実験ホール北側のK1.8ビームラインで使用されてきた超伝導電磁石を、新たな実験課題の実施に向けてホール南側のビームラインへ移設しました。

   (2) J-PARCでは、核変換実験施設の建設を計画しており、将来使用予定のレーザー光と薄膜によるレーザー荷電変換技術の実証試験に向けた装置整備を進めています。また、同施設の核破砕ターゲットに用いる液体鉛ビスマス共晶合金による構造材腐食特性試験用大型ループの整備を完了しました。

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  ■液体鉛ビスマス構造材腐食特性試験用大型ループが完成

  核変換実験施設や加速器駆動システム (ADS) の核破砕ターゲット材料や未臨界炉心冷却材候補材である、液体鉛ビスマス共晶合金 (LBE; Lead Bismuth Eutectic) とさまざまな鋼材との共存性に関するデータを取得するための試験装置、OLLOCHI (Oxygen-controlled LBE LOop Corrosion tests in HIgh-temperature) が完成しました。OLLOCHIは最高550℃でのLBEによる鋼材の腐食試験を酸素濃度制御下で行うことが可能な大型の試験ループです。最大の特徴は試験部が3箇所に分岐していることで、内2箇所には通常の腐食試験片を装荷可能です。残り1箇所には、応力を加えながら腐食試験を行える装置を設置予定です。頭となる試験部が複数有り、胴体となる主配管は一本で熱応力緩和のため複雑に屈曲している様子が神話に登場する八岐大蛇に似ていることから、OLLOCHIと名付けました。今後は、調整運転、酸素濃度制御試験といったLBE流動に関する機能試験を開始し、年度内に各試験部へ流量計を増設後、鋼材の腐食試験を開始する予定です。
   
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●「時・時間・時計 ママと一緒に実験!発見!」
J-PARCハローサイエンス in 東京 (3月30日、西東京市) 
  西東京市にある学校法人裕学園谷戸幼稚園では、外部講師を招いた課外教室「創造的思考の工房 チビッ子アトリエ」を開いています。科学的、創造的思考力を養うことを目標とした様々な活動を、園児だけでなく小学生も参加して行っています。平成27年3月に、東京で最初の「J-PARCハローサイエンス」をこのアトリエで開催し今回2回目となりました。前回同様に坂元眞一広報アドバイザーが、アトリエ卒業の中高校生と保護者40名に"時"をテーマに話され、工作を指導しました。毎年同じ時期に花が咲き始めるのはなぜだろうと、子供たちから"時"について疑問が投げかけられ、それを受けて動植物が持っている時計や、時間についての話をしました。時を刻む時計、昔の人は太陽や水、砂など自然の中で日時計、水時計、砂時計を考えつき、そうして、より正確な時を刻むものとして棒テンプ時計などが発明され、それらについて説明が進められました。その後、園児は砂時計に挑戦、小学校低学年生は水時計、難易度の高い棒テンプ時計は高学年生以上と、グループに分かれて工作に挑戦していきました。棒テンプ時計は微妙な調整が必要で、子どもが作った棒テンプ時計がチクタク動き出すと手を叩いて喜ぶお母さんの姿があり、科学と触れ合うひと時が持てました。

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●KEKサイエンスカフェ "水素を深読み" (4月3日、西東京市・多摩六都科学館) 
  KEKは3日、多摩六都科学館で"水素"をテーマとしたKEKサイエンスカフェを、物質構造科学研究所 (物構研) の餅田円広報コーディネータと、MLFの中性子実験装置NOVAで水素貯蔵合金の研究を進める大友季哉教授 (J-PARC中性子利用セクション) を講師として開催しました。

  今回のサイエンスカフェは、子供から大人までの広い世代に“水素”について改めて知ってもらうためのもので、午前中は小中学生、午後は高校生から大人を対象に話しました。来場者は、小学生などの同伴者を含めた約40名でした。水素の誕生から未来の水素利用の可能性まで、幅広い内容にクイズを交えた講師の話に、多くの質問が飛び交いました。また、科学実験では水素の性質を体感するシャボン玉を使った実験、水素で動く模型の車やフィルム状の水素吸蔵合金が水素を取り込むと透明になる実演など、皆さん興味深く見入っていました。

  なお、今回のサイエンスカフェのテーマ"水素"は、平成28年度科学技術週間に向けて物構研が企画・制作し、文科省が発行した"水素"ポスターに因んで取上げられました。

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●ご視察者など
    4月  5日  文部科学省 高等教育局専門教育課 土生木 茂雄 視学官
    4月  5日  産学協力研究委員会「材料中の水素機能解析技術第190委員会」
    4月 21日 文部科学省 研究振興局基礎研究振興課
素粒子・原子核研究推進室 堀之内 豊 研究推進係長
文部科学省 研究振興局学術機関課 細野 亮平 機構総括係長
   
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