■ J-PARC News 第141号より       (2017/01) 
●平成29年に向けた齊藤直人J-PARCセンター長からのメッセージ
  新しい年を迎えて最初のJ-PARC NEWSをお届けするにあたり、一言ご挨拶申し上げます。

  昨年は、J-PARCにとって成長の年であったと思います。ハドロン事故から3年をむかえ、施設の安全な運営が、ようやく軌道に乗りつつあると考えています。これからも慢心することなく、施設運営に関わる一人一人が当事者として安全意識をもって、質の高い研究に結びつける努力を続けていきたいと思います。


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  また、自分だけでなく他人の安全にも気を配ることを目標として、「Mindful of Others」という標語を作りました。日本語にすると「周囲のことも気にかけよう」といった意味です。不安全な行為を見かけたら、躊躇することなく声をかけ、どうしたら安全に作業できるか考えることを促すものです。一見、おせっかいにも見えますが、注意する側と注意される側、双方の安全意識を高めるものとして、安全監査をしていただいている先生方からも、さらに進めるべき運動として評価いただいているところです。このように、利用者や業者も含めた安全をさらに追求して参る所存です。

  研究成果に目を向けると、昨年は合計12件のプレスリリースを行いました。ニュートリノ振動実験T2K (Tokai to Kamioka) によりCP対称性の解明に第一歩を踏み出し、高圧氷の新しい秩序状態や、充放電しているリチウム電池の内部挙動、パーキンソン病発症につながるタンパク質分子の異常な振る舞いの観測に成功するなど、J-PARCを使った実験で多岐にわたる成果が上がっています。

  このような成果を地域の方々とも共有するべく、T2K実験のコラボレータでもありノーベル賞を受賞された梶田先生を東海村にお招きして、小中学生との交流会もふくむ講演会を開催させていただき、会場が溢れるほどの大盛況になりました。さらに4年ぶりとなる施設公開も行い、地域社会の方々に少しずつ成長するJ-PARCを見ていただく機会も設けました。

  今年は、より一層の成果を利用者とともに創出し、地域社会だけでなく世界とも共有するべく、地道な努力を続けて参ることを誓って、私のご挨拶とさせていただきます。
  平成29年1月4日
J-PARCセンター長 齊藤直人
  
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●リチウムイオン蓄電池の高容量化実現につながる正極材料の発見 (12月23日、プレス発表) 
〜 次世代の蓄電池の実現により、電気自動車の高性能化などに期待 〜
  東京電機大学の藪内直明准教授らの研究グループは、リチウムイオン電池用電極材料として酸素の酸化還元を充放電反応に用いる、汎用元素から構成された高容量化実現につながる新規電極材料の開発に成功しました。この成果は、大型放射光施設SPring-8、高エネルギー加速器研究機構 (KEK) 物質構造科学研究所のフォトンファクトリー、および、J-PARC物質・生命科学実験施設 (MLF) の中性子ビームラインBL09「特殊環境中性子回折装置 (SPICA) 」を使った実験により得られたものです。本研究の一部は、科学技術振興機構の特別重点技術領域「次世代蓄電池分野」により助成されたもので、この成果は12月23日にNature Publishing Groupの学術雑誌、「Nature Communications」に掲載されました。
  詳細につきましては、 J-PARCホームページをご覧ください。http://j-parc.jp/ja/topics/2016/Press161223.html

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●地球形成期におけるコアの軽元素の謎に迫る 〜 鉄へ溶け込む水素を中性子でその場観察 〜 (1月13日、プレス発表) 
  東京大学の飯塚理子特任教授 (研究当時、愛媛大学) らは、岡山大学の奥地拓生准教授と日本原子力研究開発機構 (JAEA) J-PARCセンター中性子利用セクションの服部高典主任研究員、佐野亜沙美副主任研究員との共同研究で、地球形成の初期に、鉄を主成分とする地球中心核 (コア) に、「水素」が他の軽元素に先駆けて溶け込んだ可能性があることを実験で明らかにしました。この成果は、J-PARCの物質・生命科学実験施設 (MLF) のBL11「超高圧中性子回折装置 (PLANET) 」において、始源物質 (地球形成の始まりとなる物質) をモデル化した水を含んだサンプルを、高温高圧下で長時間保つことができる高圧アセンブリを今回新たに開発したことにより得られた結果です。本成果は、1月13日にNature Communicationsのオンライン版に掲載されました。
  詳細につきましては、J-PARCホームページをご覧ください。http://j-parc.jp/ja/topics/2017/Press170113.html

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●第23回J-PARC PACの開催 (1月11-13日、J-PARC) 
  1月11日から13日にかけて、大強度陽子加速器における原子核素粒子共同利用実験審査委員会 (J-PARC PAC) が、海外から8名を含む15名の委員を迎えて開催されました。この会議は、J-PARCの50GeVシンクロトロン (MR) 加速器を主に用いて行う原子核・素粒子実験の審査会で、J-PARC施設の現状や今後の見通しの報告、ニュートリノおよびハドロン実験施設で行われている実験の進捗確認、新規課題の採否審査などが行われました。1日目から2日目にかけて行われたオープンセッションでは多くの施設関係者やユーザーが会場に詰め掛け、20件を超える実験課題などの発表に耳を傾けていました。

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●KEK公開講座「J-PARCが拓く物質の起源と成り立ち」開催 (12月10日、KEKつくば) 
       
  12月10日、2016年度2回目のKEK公開講座が、「J-PARCが拓く物質の起源と成り立ち」と題してKEKつくばキャンパスで開催され、J-PARCセンターから、中性子利用セクションの大友季哉氏 (KEK教授) と、素粒子原子核ディビジョンの小松原健副ディビジョン長 (KEK教授) が登壇しました。
  大友氏は、「最も小さな元素の大きな役割―水素の科学―」と題して、一番単純で、宇宙で最初にできた原子である水素について、実演付きで講演。自然界に占める割合や科学的な性質、そして現在J-PARCでも研究が進む水素をエネルギー源として走る電気自動車のための燃料電池の仕組みなどを話しました。
  続いて小松原氏は、「奇妙なクォークのふしぎな話―原子核と素粒子の世界―」と題して、宇宙から地球に降り注ぐ宇宙線から生じるさまざまな素粒子、中でも、J-PARCで進行中の、なかなか崩壊しない"ストレンジ"粒子と呼ばれるK中間子の研究や、中性子星の解明にもつながる原子核の研究を紹介。同氏が携わるK中間子の崩壊を観察するKOTO実験の装置の組み立ての模様を、数々の写真を使いながら説明しました。
  会場を埋めた聴衆と活発な質疑応答も行われ、閉会後も質問を続ける参加者の姿も見られました。
   
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●The 37th REIMEI Workshop on Frontiers of Correlated Quantum Matters and Spintronics (1月13〜17日、東海村産業・情報プラザiVil (アイヴィル) など) 
     
  1月13日から17日にかけて、日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センター (ASR) は、国際共同で行う「黎明研究」の活動の一つとして、東京大学、米国コロンビア大学、J-PARCセンターと第37回REIMEIワークショップを開催しました。ASR、J-PARCセンター、iVil、東京大学と会場を移して行われたワークショップには、全体で95名の参加者がありました。
  初日の13日には、約40名の大学院生や若手研究員の参加者に対して、永宮正治 元J-PARCセンター長と齊藤直人J-PARCセンター長が、量子ビームを使った最先端研究の全体像、及びJ-PARCで行われている実験・研究の現状と将来を紹介する講演を行いました。また、J-PARC施設の見学会も行われ、参加者は、ハドロン実験施設で計画されているCOMET実験や、物質・生命科学実験施設の中性子実験やミュオン実験について、担当研究者の説明に熱心に耳を傾けていました。

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●J-PARCハローサイエンス「チョコレイト・サイエンス」 (1月21日、イオン東海店) 
  J-PARCセンターは、昨年12月より、JR東海駅前のイオン東海店フードコートを会場として、研究者と地域の方の交流を目的としたイベント「J-PARCハローサイエンス」を始めました。
  第2回目となる1月21日は、J-PARCセンター中性子利用セクションの山田悟史氏が講師となって、チョコレートの美味しさを結晶構造の面から科学的に考え、作り方の違いで美味しさが変わることを体感する「チョコレイト・サイエンス」を開催し、小学生から大人まで計20名の参加がありました。また、会場周りでは来店者が立ち止まり興味深く見入る様子も見受けられました。
  講義では、チョコレートの美味しさは「視覚」、「触感」、「食感・味覚」などから感じるもので、その違いは、チョコレートを作る際に溶かした原料 (の中のココアバター) が冷えて固まる際の結晶構造によることが話されました。その後、2人1組となった参加者が、作り方の異なる3種類のチョコ作りに挑戦しました。冷蔵庫で冷やし、出来上がったチョコの「口どけ」、「味覚」、「食感」などの違いを体感し、参加者からは「こっちが甘い」、「これ硬い」など、弾んだ声が多数聞かれました。食べ比べた感想はグラフにまとめられ、山田氏が講評し、さらに、美味しさの違いはチョコレートの結晶構造によることが、放射光 (X線) 実験や中性子実験 (J-PARC) で検証できていることを説明しました。
  J-PARCハローサイエンスは、今回から東海村の後援を受け、今後も毎回話題を変えてイオン東海店を中心に開催する予定です。日程、内容などについては、J-PARCホームページやポスターなどでお知らせ致します。立寄り自由ですので是非お越し下さい。
  なお、今回のイベントの詳細は、KEK物質構造科学研究所の「チョコレイト・サイエンス」のホームページもご覧下さい。http://www2.kek.jp/imss/education/chocosci/
  ※共催:高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所
   後援:東海村・東海村教育委員会、 協力:東京フード株式会社

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●J-PARC 2016年度フォトコンテスト受賞作品 (12月20日、J-PARC) 
  J-PARCセンターは、当施設内で研究・業務に従事している全ての方を対象に「フォトコンテスト2016」を開催しました。目を見張るような機器や、研究の過程や成果、施設で機器を操る活き活きとした人物などをテーマとして募集を行い、今回は、過去2回の開催を大幅に上回る64作品の応募がありました。審査委員会の厳正なる審査を経て10点の作品が入賞となり、最優秀作品には中性子利用セクションのステファヌス ハルヨ氏の作品が選ばれました。ハルヨ氏は、MLFの中性子ビームラインBL19「工学材料回折装置 (匠) 」の装置責任者の一人で、受賞作品は、高温下における実験試料の様子を撮影したものです。実験などを行っている環境下では、見方を変えるととても美しい事象が生まれている場面があり、本作品はその瞬間をタイミング良く捉えている点が高い評価を受けました。12月22日にはコンテスト入選者表彰が行われ、作品はJ-PARC研究棟の階段に次回コンテストまで飾られます。
  実験施設ならではの「美」の世界を、受賞作品でご紹介します。以下のURLよりご覧ください。http://j-parc.jp/PhotoCon/2016/index.html
  ※フォトコンテストは2012年に始まり、2015年、2016年の開催となっています。

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●加速器運転計画
  2月の運転計画は、次のとおりです。なお、機器の調整状況により変更になる場合があります。

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