■ J-PARC News 第151号より       (2017/11) 
●住友ゴム工業株式会社が第27回「日経地球環境技術賞」最優秀賞受賞 (10月13日) 
  住友ゴム工業 (株) は、低燃費タイヤ「エナセーブ NEXT II」の開発で日本経済新聞社の「2017年度日経地球環境技術賞」最優秀賞を受賞しました。この賞は、資源環境・物質環境など地球環境の持続可能性を確立するための技術開発、研究などで独自性、将来性や実現性を総合判断し表彰されるものです。同社は、大強度陽子加速器施設J-PARC、大型放射光施設SPring-8、スーパーコンピュータ京の連携活用でタイヤゴムの新材料開発技術を確立し、低燃費性能とグリップ性能を高次元で維持して、耐摩耗性能を従来品から51%向上させることに成功しました。

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●透過中性子によるスピン配列の観測に成功〜従来の回折中性子の測定により装置設計の自由度が増し、未知のスピン配列観測が容易に〜 (11月17日、プレス発表) 
  物質・材料研究機構は、日本原子力開発研究機構及び同J-PARCセンターと共同で、MLFの中性子源特性試験装置 (NOBORU) を使い、入射した中性子ビームが試料をどれだけ透過したかを測定して物質の電子スピンの配列を観測することに世界で初めて成功しました。透過中性子は中性子ビーム源と試料を結ぶ直線上で観測できるため、従来の測定方法に比べ、未知のスピン配列が潜む超高圧・強磁場などの多重極限環境を実現する装置の設置が容易となり、スピン制御による新材料開発の進展が期待されます。研究の一部は日本学術振興会科研費15K13278の支援を受けたもので、研究成果は、2017年11月14日にSpringer Nature 発行の学術雑誌Scientific Reports誌にオンライン掲載されました。
  詳細は、J-PARCホームページをご覧ください。
  http://j-parc.jp/ja/topics/2017/Press171117.html
   
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●J-PARC Workshop「Deuterated Materials Enhancing Neutron Science for Structure Function Applications」開催 (10月19-20日、IQBRC) 
  重水素化物質による中性子科学研究の活性化を目指した「J-PARC Workhop 〜Deuterated Materials Enhancing Neutron Science for Structure Function Applications (重水素化分子が先導する機能性構造材料の中性子科学研究) 〜」がいばらき量子ビーム研究センターで開催されました。
  ワークショップには、海外からANSTO*1 国立重水素化施設 (NDF) の研究員であるTamim A. Darwish博士 (化学重水素化) とAnthony Duff博士 (生物重水素化) 、 ESS*2 重水素化研究室の研究員であるAnna Leung博士 (化学重水素化) の3名を迎え、日本の重水素化研究者・中性子科学研究者を合わせた62名が一堂に会し、J-PARCにおける重水素化研究発展のための戦略について集中的に議論しました。
  重水素化技術については、ANSTO-NDF、ESS重水素化研究室、岐阜薬科大学佐治木研究室から最先端の研究成果についての講演があり、大スケールの重水素化反応装置とその分析機器の導入が重要であることが示されました。
  サイエンスの講演では、試料重水素化のハードルを下げるための工夫が必要であるといった提案があり、重水素化技術と利用者の相互理解を深める良い機会となりました。
  フリーディスカッションでは、大量合成装置及び分析装置導入の意義、ヨーロッパ重水素化ネットワークとの連携の可能性、日本国内での重水素化コミュニティ設立に関する議論が展開され、さらに核磁気共鳴分野との連携といった他分野への広がりについても言及されました。その他にも重水素化物質による中性子科学研究の活性化にかかわる多くのテーマが議論され、ワークショップは盛況のうちに終了しました。
  ※1:Australian Nuclear Science and Technology Organisation (オーストラリア原子力科学技術機構) 
※2:European Spallation Source (欧州核破砕中性子源、スウェーデン) 

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«J-PARCハイライト»
●日欧の加速器の高性能化に貢献 - CERNでも使う金属磁性体を製造 -
  先端技術の粋を集めて自然の極限を探る最先端の加速器は、さまざまな工夫を積み重ねて増強が迫られる宿命にあります。J-PARCセンターに所属する高エネルギー加速器研究機構 (KEK) の大森千広教授らのリング高周波加速 (RF) グループは、RFシステムに必要な電場勾配の高い金属磁性体の製造装置を開発しました。この磁性体は、これまでJ-PARCの加速器に導入されたほか、欧州合同原子核研究機関 (CERN) の加速器用にも使われ、日欧の大型加速器の増強を支えています。CERNの加速器LHC (大型ハドロン衝突型加速器) は、陽子ビーム入射器である陽子加速器PSBの増強のため、この磁性体を組込んだ加速空洞の入替えを計画しています。

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●大井川和彦茨城県知事のJ-PARCご視察 (11月20日、J-PARC) 
  平成29年8月の茨城県知事選で初当選した大井川和彦氏が、11月20日にJ-PARCのご視察のため来訪されました。齊藤直人J-PARCセンター長が全体概要を説明後、MLF実験ホールで、茨城県中性子ビームラインのプロジェクトディレクターである富田俊郎企画部技監からiMATERIA、iBIXを中心に中性子実験装置の説明を受けました。続いて、J-PARCで進めている加速器駆動核変換システムの標的材兼冷却材である鉛・ビスマスに関する技術開発のための実験装置類を見学され、担当者からの研究内容の説明に興味深く耳を傾けていました。

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●KEK-CERN委員会で、ニュートリノ実験での協力計画 (10月31日、KEKつくばキャンパス) 
  欧州合同原子核研究機関 (CERN) では大型ハドロン衝突型加速器 (LHC) のアップグレードが2019年以降に計画されています。CERNでは、J-PARC同様にニュートリノ研究が行われており、今回、J-PARCでのニュートリノ実験での協力計画などについてグループを代表して小林隆素粒子原子核ディビジョン長 (KEK教授) が発表しました。委員会のメンバー一行は、ニュートリノ・ハドロン・MLFの各実験施設なども視察しました。
   
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●平成29年度JAEA理事長表彰 (11月6日、JAEAアトムワールド) 
   
  平成29年度の日本原子力研究開発機構 (JAEA) 理事長表彰において、中性子利用セクションの柴田薫氏ら7名のダイナミクス解析装置グループの「ダイナミクス解析装置DNAの建設とそれによる先導研究」が、画期的研究開発の完成に係るものとして研究開発功績賞を、放射線安全セクションの佐藤浩一氏が、「J-PARCにおける放射線モニタ情報共有化の完遂」の業績で模範賞をそれぞれ受賞しました。
  «J-PARC関連の受賞者一覧»
【研究開発功績賞】
[画期的研究開発の完成に係る業績]
〇業績:「ダイナミクス解析装置DNAの建設とそれによる先導研究」
・グループ名:ダイナミクス解析装置グループ
・氏名:柴田薫氏、川北至信氏 (物質・生命科学ディビジョン 中性子利用セクション) 、
中川洋氏 (物質科学研究センター 中性子材料解析研究ディビジョン 階層構造研究グループ) 、神原理氏 (日本アドバンストテクノロジー株式会社) 、山田武氏、松浦直人氏、富永大輝氏 (一般財団法人総合科学研究機構 (CROSS)  中性子科学センター) 
【模範賞】
〇業績:「J-PARCにおける放射線モニタ情報共有化の完遂」
・氏名:佐藤浩一氏 (安全ディビジョン 放射線安全セクション) 
   
●第10回J-PARCハローサイエンス「東海村から世界へ!ニュートリノ実験の最新成果」開催 (10月27日、東海村産業・情報プラザ「アイヴィル」) 
 
  J-PARCセンターニュートリノセクション関口哲郎氏が、10月27日に開催した第10回サイエンスカフェで、T2K (Tokai to Kamioka) 実験の最新成果について話しました。T2K実験は、J-PARCから発射する大強度ニュートリノビームを岐阜県飛騨市神岡町のスーパーカミオカンデ (SK) で捉え、粒子・反粒子の性質の違い (CP対称性の破れ) の謎にせまる実験です。これまでのニュートリノビームと反ニュートリノビームを用いた実験結果から、95%の確率でCP対称性が破れている兆候が見え始めたと紹介しました。なお、今後ビーム強度の増強や、ハイパーカミオカンデの建設により、更にデータ量を上げた実験が必要であると話し、来場者からは質問も多数寄せられました。

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●ご視察者など
    11月  8日  山根一眞氏 (ノンフィクション作家・獨協大学経済学部特任教授) 
    11月 20日  大井川和彦 茨城県知事
   
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●加速器運転計画
  12月の運転計画は、次の通りです。なお、機器の調整状況により変更になる場合があります。

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