■ J-PARC News 第160号より       (2018/08) 
●銅酸化物高温超伝導体で2次元の強磁性ゆらぎを世界で初めて観測
- 高温超伝導体の磁性状態の全貌を解明 - (8月3日、プレス発表) 
  銅酸化物の高温超伝導体では、反強磁性の絶縁体である母物質に正孔または電子キャリアを注入することで超伝導が発現します。しかし、さらに大量にキャリアを注入すると超伝導が消失してしまう原因が何かは分かっていませんでした。今回、上智大学の足立匡教授の研究グループは、J-PARCセンターなどとの共同研究で、大量に正孔を注入した銅酸化物で2次元の強磁性ゆらぎを世界で初めて観測しました。これは、キャリアの注入とともに反強磁性から強磁性へと磁性状態が変化することを意味し、銅酸化物の磁性状態の全貌を明らかにしたものです。本成果は、高温超伝導に対する強磁性ゆらぎの関りを新たに示す重要な成果です。本成果の詳細は、2018年8月1日に米国物理学誌「Physical Review Letters」でオンライン公開されました。
  ※ 理化学研究所RAL及び物質・生命科学実験施設ミュオンD1実験装置を使用
  詳細はJ-PARCホームページをご覧ください。http://j-parc.jp/ja/topics/2018/press180803.html

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●負のミュオン素粒子で視る物質内部
- 世界最高計数速度の負ミュオンビームで長年の夢が実現 -  (8月24日、プレス発表) 
  株式会社 豊田中央研究所の杉山純主監、ミュオンセクションの下村浩一郎 (KEK) 、髭本亘 (JAEA) らの共同研究グル−プは、負電荷を有する素粒子ミュオン (μ-) が物質中では水素以外の原子核に捕獲されて動かないことに注目し、負ミュオンスピン回転緩和 (μ-SR) 測定により、水素化合物中の水素の作る微小な磁場とその揺らぎの観測に世界で初めて成功しました。ミュオン研究者の長年の夢が、J-PARCの大強度負ミュオンビームと多素子検出器を組み合わせることで、初めて実現しました。固体内の水素の運動を検出できるようになったことで、高性能な水素貯蔵材料の開発へ期待が高まります。本研究成果は8月21日米国のPhysical Review Letters誌にEditors' Suggestions、Featured in Physicsとして掲載されました。
詳細はJ-PARCホームページをご覧ください。http://j-parc.jp/ja/topics/2018/press180824.html

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●平成30年度J-PARC MLF産業利用報告会 (7/23-24、東京 秋葉原コンベンションホール) 
  物質・生命科学実験施設 (MLF) の産業利用と学術成果に関する報告会が7月23、24日に都内で開催され、産学官から300名を超える来場者がありました。MLFの供用運転開始から10年目、同時に発足した中性子産業利用推進協議会が10周年という節目を迎えた記念セッションでは、発起人の一人である庄山悦彦副会長が挨拶し、齊藤直人センター長が、これまでの500件以上に及ぶ産業利用に関する課題採択の現状と、7月上旬のビーム出力1MW約1時間の安定運転成功について報告しました。特別講演では産業界を代表し、日立製作所 村上元氏が、稼働中のモーターの磁場の可視化から「アモルファスモーター」開発の成功例を紹介しました。この成果は、日刊工業新聞社主催の「第47回日本産業技術大賞」で最高位の内閣総理大臣賞を受賞しています。

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●第3回J-PARCメディア懇談会 (8月3日、J-PARC) 
  各方面のメディアに向けて、J-PARCセンターにおける最先端の研究活動を紹介するメディア懇談会を8月3日に開催しました。参加した茨城県内外の報道機関4社、合計8名は齊藤直人センター長から燃料電池やタイヤ用新素材、地球科学、及びT2K実験などの研究活動の現状について説明を受け、その後加速器施設と実験施設を見学しました。夏季メンテナンス期間中にのみ入域できる加速器のリニアックとメインリング を特別に公開し、参加者は各現場での説明に聞き入り、終始熱心にメモを取る姿が見受けられました。

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●エコフェスひたち2018にJ-PARCブース出展「J-PARCで加速するエコ」 (7月21日、日立市) 
  日立シビックセンターで7月21日に開催されたエコフェスひたち2018に出展し、J-PARCの研究紹介を行いました。J-PARC施設の説明とともに、MLFの中性子ビームを使った成果として製品化され2016年に発売が開始された、住友ゴム工業  の耐摩耗性能を向上させた高性能タイヤを展示しました。また、超伝導コースター体験では、液体窒素で冷やした超伝導体が磁石を並べたスロープを走り抜ける科学実験に、猛暑の中、多くの子ども達が夢中になって取り組みました。

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●J-PARCハローサイエンス、超伝導のおはなし
〜超強力電磁石でビームを操る〜 (7月27、日東海村産業・情報プラザ「アイヴィル」) 
  7月のハローサイエンスは、常連の皆様に加え、夏休み中の小学生の親子連れなど、21名が参加しました。今回はニュートリノビームラインの超伝導電磁石を開発した、低温セクションの飯尾雅実氏が講師を務め、超伝導について語りました。前半、加速器の原理と二極・四極電磁石の役目などを説明し、続いてニュートリノ実験施設の一次ビームラインにおいてメインリングからの高エネルギーの陽子ビームを更に強く曲げるため、超伝導体を使った複合電磁石を開発したことを紹介しました。超伝導体を非常に低い温度へ冷却すると電気抵抗がゼロになり強力な磁場を作り出せます。その超伝導体の不思議な振る舞いを体験するコースター実験も行いました。

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  ※ 液体窒素で冷やした超伝導体は、磁石の磁気との斥力で浮かび (マイスナー効果) 、一部の磁気が内部に入り込み (ピン止め効果) 、レールから落ちない。
   
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●J-PARC施設公開2018開催 (8月19日、J-PARC) 
  8月19日、J-PARC施設公開2018を実施しました。好天にも恵まれ、県内外から約1,500名もの方々に来場していただきました。来場者は見学ガイドを片手に、トンネル内に並ぶ加速器や実験施設など、普段入ることのできない施設を思い思いに見学しました。今年もJ-PARCの最先端の研究についての講演会、アットホームな雰囲気の中、サイエンスをより身近に感じられる素粒子サロン、MLFサイエンスカフェ等を同時開催し、立ち見が出るなど好評でした。その他にも実験教室、水素自動車の体験乗車、超伝導コースターや光の万華鏡の工作など、体験型のプログラムも多く、たくさんの親子連れが楽しみました。

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●ご視察者など
 
    8月 19日  東海村 山田修村長
    8月 21日  KEKサマーチャレンジ参加者
   

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