■ J-PARC News 第165号より       (2019/01) 
●K-中間子と二つの陽子からなる原子核の発見
- クォークと反クォークが共存する"奇妙な"結合状態 - (2019年1月24日、プレス発表) 
  理化学研究所の岩崎雅彦主任研究員らの国際共同研究グループは、J-PARCハドロン実験施設のK1.8BRビームラインにて、クォークと反クォークが共存する「中間子束縛原子核」の生成実験に世界で初めて成功しました。原子核内で「仮想粒子」として振る舞う中間子は、真空中では固有の質量と寿命を持った「実粒子」として振る舞います。しかし、中間子が、「実粒子」として陽子や中性子とともに原子核を作ることができるかは分かっていませんでした。今回、K-中間子ビームを2つの陽子と1つの中性子からなるヘリウム原子核標的に照射し、中間子束縛原子核 "K-pp"を作ることに成功しました。この結合状態はコンパクトな高密度状態であると予想され、極めて特異的な高密度核物質が自発的に形成されたと考えられます。本研究は、欧州の科学雑誌『Physics Letters B』の掲載に先立ち、1月2日付けでオンライン版に掲載されました。
  詳細はJ-PARCホームページをご覧ください。http://j-parc.jp/ja/topics/2019/press190124.html

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●KOTO実験コラボレーションミーティング開催 (2018年12月14〜16日、J-PARC) 
  ハドロン実験施設では、中性K中間子の稀崩壊を観測する国際共同実験であるKOTO実験が進められています。この研究の推進を図るための会議が年2回程度の頻度で開催されており、昨年12月の会議には、日本、アメリカ、韓国、台湾などから30名の研究者が参加しました。会議では、データ解析、昨年夏から行ってきた検出器増強の進行状況、2月から予定されているビームタイムでのデータ収集などについて報告と活発な議論が行われました。

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●黎明ワークショップ・J-PARCワークショップ「J-PARC-HIが拓く高密度物質とストレンジネスの物理」 (2018年12月15日、IQBRC) 
  J-PARCセンターとJAEA先端基礎研究センターは、J-PARCにおいて陽子ビームより重い重イオンビームを高強度で加速し、宇宙最高密度物質の物理・ストレンジネス物理の研究を行い、国際研究拠点を目指す「J-PARC重イオン計画 (J-PARC-HI) 」を検討しています。昨年12月15日に、国内を代表する原子核物理研究者を招き、計画の学術的意義を議論するためのワークショップをいばらき量子ビーム研究センター (IQBRC) で開催しました。ワークショップには海外からのTV会議による参加者も含め約60名が出席し、計画推進に向け有意義な議論が行われました。

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●J-PARC Workshop 2018 / Deuterium Labeling Study for Neutron Science (2019年1月15〜16日、IQBRC) 
  タンパク質や高分子などライフサイエンス・ソフトマター分野における中性子科学研究において、試料中の水素を重水素で置き換える重水素標識化法※1は、標的分子のみをクローズアップして観測することができるため、よく使われる手法です。今回、重水素標識化法を用いた中性子散乱研究に関わる研究会を米国オークリッジ国立研究所 (ORNL) 、オーストラリア原子力科学技術機構 (ANSTO) の研究者を含む国内外の専門家を招聘して開催し、最先端・先駆的な成果について議論が行われました。J-PARC では、重水素標識化法を用いた中性子科学を推進するため重水素化ラボラトリーを整備しており、本ワークショップでの議論が活かされます。
  ※1 重水素 (D) は安定な水素の同位体で、中性子実験ではその置換えにより生体や構成成分の構造解析や反応メカニズムなどたんぱく質や高分子の特定の部位の役割の解明に利用できるため有効な手法です。
  ※2 国立重水素化施設

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●第27回J-PARC PAC開催 (2019年1月16〜18日、J-PARC) 
  1月16日から3日間、大強度陽子加速器における原子核素粒子共同利用実験プログラム審査委員会 (J-PARC PAC) が開催されました。委員会では、現在J-PARCのハドロン実験施設とニュートリノ実験施設で実施中の実験計画や進捗状況に関する各実験担当者からの報告とともに、新規に計画された実験提案の採否審査が行われました。また、J-PARC加速器の現状や将来計画などについても併せて報告がありました。

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●第6回加速器施設安全シンポジウム開催 (2019年1月24〜25日、IQBRC) 
  1月24〜25日、第6回加速器施設安全シンポジウムが、いばらき量子ビーム研究センター (IQBRC) で国内外の加速器施設関係者約120名が参加して開催されました。今回は、加速器施設における個人線量管理と火災対応を中心テーマに、各施設における取組みが紹介され、活発な意見交換が行われました。火災対応の講演では、ドイツの加速器実験施設の安全業務に従事するFabian Saretzki氏を招聘し、約3kmの加速器トンネルを有するEuropean XFELにおける火災対応の取組みを紹介いただきました。また、28日には、緊急時における加速器トンネルからの避難やトンネル内での個人の位置確認などの安全管理をテーマとした「サテライトワークショップ」をJ-PARC研究棟で開催しました。
  ※ X線レーザー実験施設
   
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●J-PARCハローサイエンス〜J-PARCが作るニュートリノで宇宙進化の謎に迫る〜
 (2018年12月21日、東海村産業・情報プラザ「アイヴィル」) 
 
  2018年12月のサイエンスカフェは、ニュートリノセクションの坂下健氏が、J-PARCで人工的に作った大強度ニュートリノビームを用いて進めている最先端の研究について講演しました。古代ギリシャ時代から今日に至るまで、世界は何からできている?宇宙はどうなっている?と言う人類の根源的な問いに対して、宇宙と素粒子の関係の話から始まり、まだ性質の良く分かっていないこの素粒子ニュートリノを調べることで何故宇宙の進化の解明に繋がるか、などを話しました。そして、この分野の研究でノーベル物理学賞を受賞された小柴・梶田先生の成果を引き継ぎ、反物質が消えた宇宙進化の謎を解き明かしたいと熱く語りました。
   
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●西川公一郎 元J-PARCセンター副センター長ご逝去の報に接して
 
  西川公一郎 高エネルギー加速器研究機構 (KEK) 名誉教授が 2018年11月に永眠されました。西川氏は陽子加速器による長基線 (LBL) ニュートリノ振動実験の先駆者で、世界初のLBL実験:K2K実験を提案し責任者を務めるとともに、J-PARCでのLBL実験かつ大規模国際共同研究であるT2K実験の責任者としてニュートリノ研究を主導されました。J-PARCセンター副センター長、KEK素粒子原子核研究所所長を歴任され、J-PARCでの研究をリードし、2011年の東日本大震災の際には強いリーダーシップで迅速な施設の復旧を実現されました。国内では仁科記念賞 (2005年) 、国際的にはブレークスルー賞 (2016年) やブルーノ・ポンテコルボ賞 (2016年) を受賞されています。
  西川氏の数々の業績に敬意を表し、心よりご冥福をお祈り申し上げます。

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●ご視察者など
 
   1月 23日  国際原子力機関 (IAEA)  Mary Alice Hayward事務次長
   1月 24日  永岡桂子 文部科学副大臣
   
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●加速器運転計画
  2月の運転計画は、次の通りです。なお、機器の調整状況により変更になる場合があります。

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