●世界最大強度のパルス中性子源を実現した先進技術 - マイクロバブルによる圧力波の抑制 - |
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物質・生命科学実験施設 (MLF) のパルス中性子源では大強度のパルス中性子を得るため、光速に近いスピードまで加速した高エネルギーの大強度陽子ビームを水銀標的に照射し、原子核がバラバラになる核破砕反応から生成される中性子を利用する。しかし、入射する陽子ビームの極めて強力なエネルギーが、流動する水銀中に強大な圧力波を発生させ、それらから誘発される衝撃力が硬い金属表面を損傷 (専門用語で、「ピッティング」と呼ぶ) し、破壊へと繋がる可能性がある。そのため、損傷の抑止策として水銀中にヘリウムガスの微小気泡 (マイクロバブル) を混入させて、気泡が圧力波により押しつぶされるクッション効果を利用することで、衝撃力を弱めることがモックアップ試験などで解明されていた。今回、水銀標的内にマイクロバブルを発生させる気泡生成器を内蔵させた実機の性能試験を行った結果、衝撃力を数分の1に低減できることを世界で初めて実証した。 (1/30、プレス発表)
詳細については、プレス発表記事 (http://j-parc.jp/ja/topics/2013/MLFPulse130113.html) や、平成24年11月30日発行のJ-PARC News 92号 (J−PARC/MLFで530kW試験運転を実施) などをご覧下さい。 |
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(水銀標的容器は、流体水銀の内部で発生する圧力波により振動し、その振動速度は圧力波の強度に対応する。本データから、マイクロバブル注入により振動速度の大きさ、持続時間が大幅に減少したことが分かり、圧力波が低減していることが分かる。) |
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物質・生命科学実験施設のミュオン実験エリアに整備されたミュオンビームラインD1の実験装置では、ミュオンスピン回転法 (μSR) による実験で陽電子検出器が使われて、物性・材料研究などが進められている。現在、このビームラインではミュオンビームの大強度化が進み、世界最高強度のパルスミュオンが利用できる。
これまでの陽電子検出器は、試料に照射されたミュオンが試料内部で崩壊する時に放つ陽電子をシンチレータで検出し、その際に発光した微弱な光が光ファイバーで光電子増倍管 (PMT) に伝送され、電気信号に変換・増幅される。今回開発した新型検出器には、PMTに比べて磁場の影響をほとんど受けず、サイズは約10,000分の1と極めて小型な光半導体素子 (ピクセル型アバランシェフォトダイオード:p-APD) を採用した。そのため、シンチレータのサイズを小さくでき、更に、光ファイバーをシンチレータ内部に埋め込んで一体化させた。陽電子をより効率的に捉えることができるよう試料近くに配置し、取付け個数/チャンネル数 (ch) も従来の256chから384chに増やした。また、p-APDからの電気信号 (アナログ信号) をデジタル信号へ変換するイベントデータ化の集積回路などは、手のひらに載るほどコンパクトな一つのボード上に組み込まれた。プログラムソフトの導入で、これら電子回路などの調整時間が短縮でき、処理データのコンピュータへの転送も世界標準のインターフェースを採用し、実験の利便性、性能が格段に向上した。
詳細については、KEKホームページをご覧ください。 (http://www.kek.jp/ja/NewsRoom/Highlights/20130124170000/) |
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●加速器ビーム運転の現状 |
加速器の安定運転を維持するため、週1回のペースで運転を数時間停止し、メンテナンスを実施。1月23日のメンテナンス中には、リニアックのイオン源電流を増加させ、現在、MLFへの入射陽子ビームは300kW、ニュートリノ実験施設へのビーム取出しは215kWの出力に上げた運転を安定に実施している。このため、ニュートリノT2K実験においては、陽子ビームの入射積算量が順調に伸び、ニュートリノ振動の解明につなげるデータ収集の現時点における期待値に追いつくまでに至った。 |
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●加速器施設 |
リニアックでは、建家周辺の陥没部埋戻し、外周道路補修、側溝補修など建家外の復旧工事が進んでいる。3GeVシンクロトロンでは、物質・生命科学実験施設及び50GeVシンクロトロンに同時にビーム供給を行っているが、今後のビーム強度の増加に向け設置された可変偏向電磁石システムが昨年11月以降稼働中で、現在、順調に各々の施設に最適なビーム形状のビームを供給している。50GeVシンクロトロンでは、設計仕様値のビーム出力750kWの達成に向け、ビームの加速・取出し繰り返しサイクルを短くするため、主電磁石電源、および高勾配加速空洞の開発が進んでいる。 |
●実験施設関連 |
物質・生命科学実験施設 (MLF) では、ミュオンビームラインD1に設置した新型検出器「KALLIOPE」による実験が本格化、超低速ミュオンエリアでは実験装置の整備が進む。建家の避難ドアには窓ガラスが取り付けられ、実験ホールへの採光が実験環境を良くした。また、津波発生時に屋外から直接屋上に昇ることのできる避難階段の設置工事が始まった。ハドロン実験施設では、実験ホール南側でK1.1ビームラインの建設に向け、重量物移動用レールを敷設する床面の工事が開始された。ニュートリノ実験施設では、この夏交換を予定している第2、第3電磁ホーンの専用吊り具が搬入された。 |
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●韓国科学技術政策研究院の取材 |
1月25日、韓国の政府系研究機関である科学技術政策研究院 (STEPI:Science and Technology Policy Institute) のチョン・ドチェ博士 (Dochai Chung) が、J-PARCについてのインタビューのため、池田裕二郎J-PARCセンター長を訪問。現在、韓国では慶尚北道 (キョンサンブクド) 地域の科学技術の振興に対するプロジェクトが進められており、稼働中の浦項 (ポハン) 放射光施設に加え、慶州 (キョンジュ) 市に陽子加速器施設の建設が進められている。インタビューでは、産業利用の側面から企業の施設利用状況、また、J-PARC施設の利用に係るプログラムについて、茨城県など地方自治体レベルでの科学技術振興事業の状況、基礎科学研究以外の応用研究、中性子の産業利用の面で有望と考える分野などについて、約1時間の質疑応答、情報交換などが行われた。その後、各実験施設を見学された。 |
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●第12回日韓中性子科学研究会 |
2月3〜6日、第12回となる日韓中性子科学研究会が、日本から36名、韓国から23名が出席のもと、琉球大学 (沖) で開催された。本研究会は平成12年に開始され、両国が開催地を持ち回り毎年実施してきた。日本ではJ-PARCのパルス中性子源が、また、韓国では研究炉「HANARO」 (30MW) が安定な稼働状態となり、中性子利用研究におけるアジアの拠点となってきている。そのため、今回よりJ-PARCとHANAROの主催で継続実施することとなった。今回の研究会では、5つのセッションとポスターセッションにおいて、両国の中性子利用施設・研究の現状、成果などについて情報交換が活発に行われた。 |
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●中性子アドバイザリー委員会 (NAC-2013) |
2月14-15日、いばらき量子ビーム研究センターで中性子アドバイザリー委員会が開催された。J-PARC関係者らが、MLFの現状及び昨年の委員会で得られた提言への対応状況などの報告を行った。また、今後のMWクラスのビーム強度の増強、及び国際的なサイエンス拠点を目指した施設整備などについて、個々の開発要素に携わる研究者などから夫々説明があった。委員会のまとめでは、MLFの現状及び今後への取組み方について高い評価をいただくとともに、MLFのあり方などの提言を受けた。 |
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●ストレンジネス核物理スクール2013 |
2月14〜20日、第2回ストレンジネス核物理スクー (SNP School 2013/International School for Strangeness Nuclear Physics) が、 国内外の学生、若手研究者70名 (海外30名) 参加のもと、J-PARCサイトと東北大学を会場に開催された。スクール前半 (14〜16日) は、J-PARCサイトで開催し、最初に、いばらき量子ビーム研究センター (IQBRC) で講義が行われ、15日午後にはJ-PARCツアーが実施された。物質・生命科学実験施設、中央制御棟、ニュートリノ実験施設、ハドロン実験施設を廻り、各施設で活躍の研究者から詳細な説明を受け、参加者からの質問が絶えなかった。本スクールでは、参加者全員が各自の研究テーマなどのポスターを事前に準備することが課題となっていた。16日午後には、若手研究者によるプレゼンテーションとポスター発表が行われ、スクール受講成果との関連を念頭に活発な議論が行われた。そして、優秀なポスター発表、及びベストプレゼンテーション者に対し、橋本賞が贈られた。17日には、東北大学に移動しスクール後半 (18〜20日) が実施された。
注) 橋本賞:故・橋本治教授が東北大学理学研究科に在職中、ストレンジネス核物理を日本に根付かせ、発展させた功績から、本スクールに橋本賞が設定された。 |
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●ご視察等 |
1月25日 韓国科学技術政策研究院 チョン・ドチェ博士 2月 1日 中国科学院理論物理研究所 周善貴 (しゅう ぜんき) 教授 2月15日 公益財団法人 高輝度光科学研究センター (JASRI) 藤田浩常務理事 2月15日 ストレンジネス核物理スクール2013 (International School for Strangeness Nuclear Physics) 受講生 |
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