■ J-PARC News 第135号より       (2016/07) 
●梶田隆章先生ノーベル物理学賞受賞記念講演会
「ニュートリノでつなぐ宇宙と素粒子」 (7月16日、東海文化センター) 
  J-PARCセンターは東海村との共催で、2015年ノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章東京大学宇宙線研究所長をお迎えして、7月16日に東海文化センターで講演会を開催しました。村内を中心に県外からも小中学生から大人まで約700名が参加しました。講演会では、科学コミュニケーション分野を専門とする東京大学の横山広美准教授に講演会の司会進行を務めていただきました。はじめに、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構の村山斉機構長が「父なるニュートリノ」と題して、ニュートリノが宇宙や私たちの存在に大きく影響を与えた素粒子であることを分かりやすくお話しされました。続いて、梶田先生は「ニュートリノでつなぐ宇宙と素粒子」をテーマに、学生の頃からの写真を交えながらノーベル賞受賞に至った研究の経緯、今後のニュートリノ研究の未来の研究についてお話されました。講演には、会場から多くの質問があり、両先生は一つ一つ丁寧に答えられていました。第二部では、「交流セッション」として、梶田・村山両先生にJ-PARCやT2K (Tokai to Kamioka) 実験に携わる研究者が加わり、村内の小中学校を代表する生徒や、会場参加者からの質問や疑問に答えました。多岐にわたる熱心な質問と人柄のにじむ答えに会場が沸く場面が多くあり、講演会は盛況のうちに終えました。
   


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●充放電リチウム電池の内部挙動の解析に成功 (6月30日、プレス発表) 
〜中性子線を用いた非破壊かつリアルタイム観測により実現〜
  東京工業大学の田港聡研究員、菅野了次教授、高エネルギー加速器研究機構 (KEK) の米村雅雄特別准教授・神山崇教授 (J-PARCセンター中性子利用セクション) 、京都大学の森一広准教授、福永俊晴教授、荒井創特定教授、右京良雄特定教授、内本善晴教授、小久見善八特任教授らで構成した研究グループは、特殊環境中性子回折計 (SPICA:BL09) と新たに開発したデータ解析システムを用いて、実際に充放電しているリチウムイオン電池の内部で起こる材料の複雑な構造変化を原子レベルで解析することに成功しました。刻一刻と変化する電池反応をリアルタイムで観測し、解明できる手法は、蓄電池の信頼性や安全性に関する詳細な情報が容易に得られ、さらなる高性能化だけでなく、全固体電池などの次世代蓄電池開発にも大きく貢献すると期待されます。本研究成果は、新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) との共同研究によるもので、6月30日の英国科学誌「Scientific Reports」に掲載されました。詳しくは、J-PARCホームページをご覧ください。http://j-parc.jp/ja/topics/2016/Press160630.html
※革新型蓄電池先端科学基礎研究事業 (RISINGプロジェクト) に基づいて開発されMLFに設置されたものです。

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●高圧氷に新たな秩序状態を発見〜氷の五大未解決問題の一つを解決〜 (7月4日、プレス発表) 
  我々に身近な氷は、温度と圧力により様々な結晶構造をとることが知られています。そのうち、低温高圧下 (およそ絶対温度50K、1万気圧) で形成される氷XV相に関して、これまで提唱されているモデルではその物性が説明できないという矛盾があり、氷研究における五大未解決問題の一つになっていました。今回、東京大学大学院理学系研究科の小松一生准教授、鍵裕之教授らの研究グループは、低温下でも圧力を自在に調整できる装置 (通称「Mito system」) を開発し、日本原子力研究開発機構の佐野亜沙美副主任研究員・服部高典主任研究員 (J-PARCセンター中性子利用セクション) 、総合科学研究機構中性子科学センターの町田真一研究員と協力し、物質・生命科学実験施設 (MLF) の超高圧中性子回折装置 (PLANET) に導入し、低温高圧下における氷XV相の中性子その場観察に成功しました。その結果、氷の構造に関して、酸素の骨格構造の中で水素が一方向に偏った秩序相や、完全にランダムな無秩序相とも異なり、部分的に秩序化した状態であることを明らかにしました。このことから、酸素骨格構造の異なる他の氷に関しても、秩序相あるいは無秩序相だけに分けられるものではなく、部分的に秩序化した状態を考慮に入れる必要があることが提案されました。詳しくは、J-PARCホームページをご覧ください。http://j-parc.jp/ja/topics/2016/Press160704.html
   

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●初段加速器からの3MeVビームのレーザ荷電変換試験に成功 (6月28日、リニアック棟) 
  J-PARCでは、核変換実験施設の建設を検討しており、将来、施設ではリニアックからの負水素イオン (H-) ビームにレーザ光を照射して電子を剥ぎ取りH0ビームとし、更に荷電変換フォイルで電子を剥ぎ取りH+ビーム (最大10W) として取り出します。これまで、リニアック棟クライストロン準備室でレーザ荷電変換実証試験のための荷電変換装置および初段加速器試験装置などの準備を進めてきましたが、6月28日に初段加速器からの3MeVビームによる荷電変換試験に成功し、H+ビームを11度ダンプに取出しました。荷電変換されたH+ビームの強度を施設完成時の条件に換算すると約5Wとなり、要求出力 (最大10W) を概ね満足しました。
   

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●第12回ミュオンg-2/EDMコラボレーションミーティング (6月29日-7月2日、J-PARC研究棟) 
  Muon g-2/EDM collaboration meetingをJ-PARC研究棟で開催し、日本、カナダとアジア圏の3ヶ国から約65名の研究者が参加しました。今年5月のKEK-PIP諮問委員会で議論されたJ-PARCに関するプロジェクトでは、ミュオン施設のHライン建設とg-2/EDM実験計画が確認されました。会議冒頭、齊藤直人J-PARCセンター長が挨拶し、その後、関係者による極冷ミュオンビームを用いたミュオンg-2/EDM (異常磁気能率/電気双極子能率) の精密測定の計画についての報告と意見交換、MLFのミュオン実験施設Hラインの建設状況の紹介と見学が行われました。
※KEKのプロジェクト実施計画について助言を得るための諮問委員会
   

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●第2回J-PARC請負業者等安全衛生連絡会 (7月6日、いばらき量子ビーム研究センター) 
  J-PARCの職員と年間請負契約業者らJ-PARCで作業を行う業者の方が「安全確保を徹底する」という安全意識を共有することを目的として、昨年度から連絡会を開催し、今回は66社74名が参加して行われました。石井哲朗安全担当副センター長が、まずJ-PARCの概要、最近の研究成果について話し、続いて、J-PARCにおける最近の事故・トラブルの報告や作業時の注意事項、新たな取り組みとして、「Mindful of Others:危ないと思ったら声を掛けよう」の運動についての説明を行いました。最後の意見交換では、参加者からトンネル内など携帯電話の一般通信が良くない作業環境下での対応策についての要望が出されました。

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●J-PARCハローサイエンス (6月22日東海村立村松小学校、7月7日白方小学校) 
  J-PARCセンターは6月と7月に、東海村内の2つの小学校の科学クラブでJ-PARCハローサイエンスを開催し、電池と磁石で作る不思議な世界を披露しました。白方小学校での開催は初めてで、実験風景を見守る顧問の先生は「子供達だけでは出来ない実験です (・・また来年もお願いします・・) 」と感想を述べていました。各種体験型実験では、磁石を付けた乾電池が銅線のコイルの中を走り回る"走る乾電池"は、今回も大人気でした。また、コイルに流す電流の向きをタイミングよく切り替える"手動モーター"の実演を交えて、モーターは永久磁石と電磁石の間で働く引き合う力と、反発し合う力をうまく使って回転することを説明し、モーターの原理について分かりやすく解説しました。さらに、世界で初めて作られたモーターと言われるファラディーモーターの模型も子供達は好奇心いっぱいに観察していました。このような活動から理科好きの児童が増えていくのを願います。

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●TIA Flower arrangement class (7月7日、原子力科学研究所) 
  東海村国際交流協会 (TIA:Tokai-mura International Association) などとの共催の生花教室を原子力科学研究所・先端基礎交流棟で行いました。今回の生花では、ゆり、バラ、グラジオラス、クルクマ、ケイトウなどを花材として用いて、先生方の指導のもと、出来上がりをイメージしながら剣山に主枝、客枝、中間枝などを差してかたちをつくりました。初夏をイメージさせる爽やかな作品を作り上げた11名の参加者は、お互いの作品を鑑賞し、それぞれの職場に飾るべく大切に持ち帰りました。

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●ご視察者など
    6月 28日  文部科学省 科学技術・学術政策局 研究開発基盤課 量子研究推進室 橋本一郎室長補佐
   
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