■ J-PARC News 第148号より       (2017/08) 
●ニュートリノの「CP対称性の破れ」、可能性さらに高まる (8月4日、プレス発表) 
  T2K (Tokai to Kamioka) 実験国際共同研究グループは、宇宙の物質起源の謎を解明する鍵となる粒子と反粒子の性質の違い (CP対称性の破れ) を明らかにするニュートリノ振動現象の観測実験を進めています。2016年までに取得したデータから、性質の違いがあり得ることを90%の信頼度で示したことを昨年公表していましたが、今回新たに2016年10月〜2017年4月に取得したデータを加え、さらに新しい解析手法を用いることで、ニュートリノと反ニュートリノの間でニュートリノ振動が起きる頻度の違いを世界最高感度で検証しました。その結果、ニュートリノと反ニュートリノの違いがある確率は95%に高まり、レプトンでの「CP対称性の破れ」が存在する可能性がより明瞭になったことを公表しました。
  詳細は、J-PARCホームページをご覧ください。
  http://j-parc.jp/ja/topics/2017/Press170804.html
※レプトン:電子やミュオンなど電子の仲間の粒子と、対応する中性のニュートリノからなる一群の粒子の名称。

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●新しい半導体を使った太陽電池の設計に道筋 (8月10日、プレス発表) 
  日本原子力研究開発機構とJ-PARC センターおよび総合科学研究機構 (CROSS) の研究チームは、次世代太陽電池の材料として期待される有機-無機ハイブリッド型ぺロブスカイト半導体「ヨウ化鉛メチルアンモニウム (MAPbI3) 」の原子運動を、物質・生命科学実験施設 (MLF) に設置された2台の中性子実験装置を用いて調べ、光が電気に変換される際のエネルギー変換効率の高さに原子運動が強く関与していることを明らかにしました。この物質に含まれる有機分子のジャンプ回転運動により低い熱伝導が実現し、光によって励起されたキャリヤーから無機格子へのエネルギー散逸を妨げることで、極めて長い時間キャリヤーが励起状態を保つという、太陽電池として望ましい特性を得ていることを示しました。有機分子の置換が容易なこのペロブスカイト半導体において、より高効率な物質設計への指針が得られ、次世代型の太陽電池開発を促進することが期待されます。本研究は、2017年6月30日付で英国科学雑誌「NatureCommunications」のオンライン版に掲載されました。
  詳細は、J-PARCホームページをご覧ください。
  http://j-parc.jp/ja/topics/2017/Press170810.html
ダイナミクス解析装置DNA (BL02) と冷中性子ディスクチョッパー型分光器AMATERAS (BL14) 

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●世界初!白色中性子線を用いて微量な軽元素を含む物質の超精密原子像取得に成功 (8月19日、プレス発表) 
  名古屋工業大学の林好一教授、茨城大学の大山研司教授は、広島市立大学、高輝度光科学研究センター、熊本大学、日本原子力研究開発機構、J-PARCセンター、高エネルギー加速器研究機構 (KEK) 、東北大学金属材料研究所と共同で、白色中性子線を用いたホログラフィーの実用化に世界で初めて成功しました。このホログラフィーは、様々な波長の中性子線を含む白色中性子線を用いて物体を三次元的に記録する撮像法です。今回開発したものは、J-PARCで発生させる多重波長の中性子線を活かし、同時に測定する合計100波長程度のホログラム (写真) から、従来の技術をはるかに凌駕した精密な原子像を取得することができます。微量な軽元素不純物の構造を感度よく観測できる点に特徴があり、添加元素によって性能を制御する半導体材料、電池材料、磁性材料などの機能解明とともに新規材料開発のブレークスルーが期待されます。
  詳細は、J-PARCホームページをご覧ください。
  http://j-parc.jp/ja/topics/2017/Press170819.html

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●第14回日本加速器学会年会 (8月1〜3日、北海道大学) 
  加速器学会年会が開催され、加速器各分野の研究者や技術者による成果発表および情報交換などが盛況に行われました。今回、口頭発表とポスター発表が全体で約400件、そのうちJ-PARC関係の発表は約60件でした。初日の特別講演では、「え!ガン治療も日本刀も電池も...秘密が分かる?」と題し、4人の講師による小型〜大型加速器中性子源を使ってできる研究の紹介がありました。その中で、J-PARCでの最近の成果として、KEKの米村雅雄特別准教授から物質・生命科学実験施設 (MLF) の中性子実験装置を使ったリチウムイオン電池の開発 (BL09) 、名古屋大の鬼柳善明特任教授から日本刀の非破壊検査 (BL10) についての報告が行われました。

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●J-PARC施設公開2017開催 (8月20日、J-PARC) 
  J-PARCセンターは、昨年に引続きJ-PARC施設の一般公開を実施しました。J-PARCでは、夏場で運転を停止しているこの時期に、一般の人が普段立入ることが出来ないMR (Main Ring) 加速器や物質・生命科学実験施設 (MLF) 、ニュートリノモニター棟、ハドロン実験施設を公開しました。当日は天候に恵まれ、県内外から約1,500名の方が来場しました。J-PARCの最先端研究の話が聞ける「J-PARC講演会」、サイエンスについての気軽なトークを研究者と一緒に楽しめる「MLFサイエンスカフェ」や「素粒子サロン」が同時開催され、会場を埋め尽くす多くの方が詰めかけました。いろいろな科学を体験したり工作ができるコーナーとして、水素自動車の体験乗車や、放射線検出器、光の万華鏡作りも行われ、夏休み中の多くの親子連れが楽しそうに参加していました。また、J-PARC等を利用して開発されたエコタイヤを製品化した住友ゴム工業株式会社によるタイヤの展示やスーパーボール作りの教室の開催、J-PARC講演会では同社の研究開発本部分析センター課長 岸本浩通氏による講演も行われ、最新の研究成果に聞き入る聴講者で会場はいっぱいになりました。

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●第7回J-PARCハローサイエンス「超伝導のおはなし〜巨大科学実験を支える先端技術〜」開催 (7月28日、東海村産業・情報プラザ「アイヴィル」) 
  第7回J-PARC ハローサイエンスは、「超伝導」をテーマに取り上げ、夏休み中の子ども向けに開催時刻を日中に早めて行いました。超伝導とは、特定の物質をどんどん冷やしていくと、ある温度で突然電気抵抗がゼロになり、磁力を跳ね返すようになる現象で、J-PARCをはじめとする世界の加速器施設では、この不思議な現象を応用して作られる様々な装置を用いて、宇宙や物質の根源を探す巨大な科学実験が行われています。今回は、超伝導を専門とする低温セクションの飯尾雅実氏ら5名が講師となり、電気、磁石、超伝導の関係の話をし、子ども全員が参加して、超伝導コースターの実験を行いました。超伝導体がコースターの最後まで走り抜けると、子どもたちは喜びの声を上げていました。170名近くの方に参加いただきました。

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●J-PARCセンターアウトリーチ活動
 
  J-PARCセンターは、子どもたちの科学に対する興味増進を目的に、加速器の原理やニュートリノ振動の不思議など様々なテーマの「J-PARCハローサイエンス・科学実験教室」を、各種イベント会場や学校への出張授業の場などで行っています。今月は、下記3件を開催しました。
   
■夏休み科学実験教室「何もないのに何かある!真空の科学」
 (7月31日、8月9日、28日、東海村産業・情報プラザ「アイヴィル」) 
 
  夏休みの期間に、東海村の小学5〜6年生を対象として、今年は"真空"について勉強するJ-PARCハローサイエンス科学実験教室を3回に亘って開催しました。前半は、実験しながら空気の重さをみんなで調べ、正確な値と照らし合わせました。次に全員で、1平方センチメートルにかかる空気の重さを計算した後、同じ重さのレンガを使って実際の重さを体験しました。続いて、紙コップを使って吸盤を作る工作を行い、完成した吸盤で、カップに入れた消しゴムや小石を持ち上げる実験を行いました。後半は、空気がなくなると何が起こるかをテーマとして、重いものと軽いものの落ち方、音の聞こえ方、光の伝わり方、気温変化などの空気がある時と空気がない時を比べて実験しました。最後に、装置にマシュマロを入れて真空にする実験で、真空にするとマシュマロが大きくなり、空気を入れると元の大きさよりも小さくなる様子に、子どもたちは一喜一憂していました。各回20名ほどの参加があり、どの回もにぎやかに進められました。

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■平成29年度「こども霞ヶ関見学デー」 (8月2〜3日、旧文部省庁舎) 
 
  「こども霞ヶ関見学デー」は、文部科学省をはじめとした府省庁等が連携して、業務説明や省内見学などを行うことにより、親子の触れ合いを深め、子供たちが夏休みに広く社会を知る体験活動の機会とするとともに、府省庁等の施策に対する理解を深めてもらうことを目的とした取組みです。今年は、25府省庁等が業務説明や職場見学等を開催し、J-PARCセンターは参加プログラムの一つとして出展しました。展示ブースは「びゅーんと走って、どーんとぶつかる。かんたん加速器を体験しよう!」というタイトルで、磁力で鉄球を加速する装置「ガウス加速器」を使い、加速器の仕組みを実験で紹介しました。J-PARCセンターのブースには約2,000名の多くの親子連れが訪れ、鉄球が加速されてぶつかる迫力ある実験に見入っていました。また、J-PARCの施設に関する質問もあり、多くの方々にJ-PARCで行われている研究を知っていただく良い機会となりました。

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■「光の万華鏡を作ろう!」 (8月5日、大洗わくわく科学館) 
 
  J-PARCセンターは、大洗町にある大洗わくわく科学館の夏休みのイベントとして、J-PARCハローサイエンス「光の万華鏡を作ろう!」を開催しました。講師は、広報セクション宇津巻竜也氏が務め、午後に2回、同伴の家族も含め約90名が参加しました。J-PARCセンターが同館で科学実験教室を開催するのは初めてで、万華鏡作りの教室は、これまで他の施設や小学校などで開催実績のある大変人気がある教室です。参加者は、光の三原色の実験で三色の液体を混ぜると白色に変化する様子に感嘆の声を上げたり、完成した光の万華鏡を覗くと模様が虹色に浮かび上がる様子を楽しんでいました。

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●ご視察者など
     8月  2日  河戸光彦 会計検査院長 他
     8月  7日  文部科学省 科学技術・学術政策局研究開発基盤課
西山崇志 量子研究推進室長 他
     8月 22日  第11回サマーチャレンジ参加者79名
     8月 25日  Paolo Giubellino 欧州反陽子イオン研究施設 (FAIR) 所長
   
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