■ J-PARC News 第18号より       (2006/9) 

●建物建設状況
(1) リニアック棟では、10月の放射線管理区域設定に向け各種の保護インターロック試験、装置の調整運転、消防や建家などの使用前立会検査が行われている。3GeVシンクロトロン棟では、電磁石の据付調整、真空ダクトの組込・据付、電源システムの立ち上げに向けた工事を進めている。3NBTトンネルでは、電磁石の搬入、真空ダクトの組込、据付・調整を実施中。
(2) 50GeVシンクロトロンでは、D工区トンネルの工事がほぼ完了し、トンネル全周がつながった。トンネル内部では電磁石の搬入据付を約半周について終了し、残り部分についても継続して実施している。また関連建家は、建家建築をほぼ終了し引続き設備工事を実施中。
(3) 物質・生命科学実験施設では、建家内・外部の仕上げ工事を継続中であり、外周足場が撤去され建家の全貌が現れた。また建家内部では、中性子ビーム遮蔽体の据付など中性子源設備関連の工事も同時に行っている。
(4) ハドロン実験施設では、実験ホールの壁躯体工事を継続中。またスイッチヤード下流部では擁壁工事や埋戻を、スイッチヤード内部では電磁石の据付を継続中。ニュートリノ実験施設では、陽子ビームを導入するトンネルアーク部で盛土造成や躯体内部の塗装工事を進めている。

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●リニアック粒子数監視システム
 加速器施設は、放射線障害防止法に基づく放射線発生装置の使用許可を受ける必要がある。リニアックでは、今年12月からのビーム加速を目標に、現在使用許可を得るための手続きを進めている。J-PARCは、これまでにない大強度の陽子ビームを加速するため、ビームが正常に加速されることが重要である。これを確認するため、放射線発生装置の許可条件として、「リニアックで加速されるビーム粒子数を管理し、計画制限値以下であることを担保すること」が挙げられた。 これを満足するため、リニアックでは加速器初段のビームラインに組込むビーム電流モニタ(CT:Current Transformer)を用いて粒子数(∝電流値)の監視が行えるシステムを整備した。システムは、監視設定値に達すると警報を発しビームの量を調整する。また電流値が制限値を越えたときには、インターロックシステム(Personnel Interlock System:PPS)に信号を出し、直ちにビームストッパを挿入し、更にはイオン源電源を停止させてビーム発生を完全に停止させることができる。 このシステムは、粒子数監視装置を中間エネルギービームラインにメインとサブの2台、ドリフトチューブ・リニアック部にバックアップとして1台組み多重化することで確実に動作するようにしている。

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●3GeVシンクロトロン(RCS)のビームコリメータシステム
 3GeVRCSはリニアックからの入射ビームを1周約350mの円形加速器でビームエネルギーを3GeVまで加速して物質・生命科学実験施設及び50GeVシンクロトロンへのビーム輸送系に送り出す。J-PARCのような大強度の加速器ではビームロスによる機器の放射化、それに伴うメンテナンスの困難さを克服するためビームロスを最小化する設計を行なうとともに、ビームコリメータを設置しビームロスをビームコリメータに局所化することで対応している。 リニアックから入射する細い陽子ビームに比べて、RCS内ではビーム径を拡げて加速を行うが、ビームハローについては6台のビームコリメータで取除く。これらコリメータのビーム吸収部には銅ブロックが使われ、通過可能なビームのサイズを可変にすることでビームロス量の調整が可能となっている。また、高周波加速空洞下流のアーク部ではエネルギーのずれたビームを取除くコリメータ1台が設置される。 これらビームコリメータシステム近傍は非常に高い放射線レベルとなるため、コリメータ冷却システム、コリメータブロックを動かすステッピングモータ等について耐放射線性の試験を実施した。更に装置全体の交換が必要な場合のために、真空フランジの繋ぎ部を遠隔で開放する遠隔操作システムについても開発を進めた。これらの結果、完成することができたビームコリメータについてベーキングを終了し、3GeVRCSトンネルへの搬入を進めている。

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●中性子源ステーションターゲットシステム
 物質・生命科学実験施設の中性子源ステーションターゲットシステムの組立総合試験が製作工場にて進められている。今回はターゲット容器及び台車接続部でのシール試験として、水銀配管、重水配管、加圧配管、ターゲットフランジ、He配管全てについて接続部の真空リーク試験を実施した。その結果、Heリーク試験器による検査でリーク量が合格基準となる1.0x10-6Pa m3/s以下であることが確認された。 ターゲット容器及び中性子源ステーションに付随するこれら配管等は、テレビカメラ等による監視下で遠隔操作による着脱が行われる。水銀配管については模擬試験によってSUS製メタルOリングから純鉄ナイフエッジシールの変更が行われた。これら装置は総合試験完了後に解体されJーPARCに運び込まれる。今後は現地で再度、組立総合試験が行われる予定である。

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●50GeVシンクロトロン(MR)の真空排気試験
 1周約1600mの50GeVシンクロトロンは平成19年後半からのオフビーム試験に向け、電磁石等機器の搬入・据付け及び、電磁石のアライメント、ビームモニター、真空ダクト等の組込みを順次進めている。今回、加速器装置の据付調整を進めたMRビームライン約150mの区間についてビームダクトを接続しての真空排気試験を開始した。ダクトは製作時にベーキングによる脱ガス処理が行われたのち窒素ガスに置換された状態で保管されて来たもの。 真空ダクトには両端に接続フランジがあり、各電磁石に組み込まれたダクト間にベローズや排気用ダクトなどを挿入してチェーンクランプで繋いで行く。繋ぎ合わせの個所は凡そ160箇所を数える。今回の真空排気試験は仮設の粗排気ポンプ1台を接続し、真空排気のデータ収集などを行うのが主な目的。これらをもとに今後の真空試験計画が立てられる。今後据付調整を進めながら、各パート毎に真空試験を進めていく。尚、加速器運転時の目標到達圧力は10-7Pa台。(参考:電解研磨技術による長尺ビームダクトの表面処理

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●J-PARC運営会議
 平成18年9月20日、原子力科学研究所において運営協定に基づく第5回(建設協定に基づく第19回)J-PARC運営会議が開催された。前回開催以降の全体の進捗状況の報告、加速器の現状報告、50GeVにおける実験課題審査の結果について報告があった。引き続き、環境整備についてなど各検討チーム(環境整備について、物質生命施設の共用について、ユーザーズオフィスの準備について)からの報告と議論が行われた。 またプロジェクトチームにある委員会の今後のあり方や、J-PARCの今後の大きなセレモニーの内容や開催時期、プレス発表を行うマイルストーン等が議論された。
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●日中 中性子源技術会合
 平成18年9月11-15日、中国中性子源(CSNS)建設グループ5名と核破砕中性子源(SNS)に関する技術会合を実施した。CSNSは陽子ビームパワー100kW(1.6GeV、62.5μA、25Hz)で、ターゲットをタングステンとし、水、液体メタン、液体水素の3つのモデレータを有する中性子源を検討している。2008年から4年間かけ、Guangdong州 Dongguan市(広東省の香港北西部、バスで2時間程度)に建設され、2011年12月に完成が予定されている。
 J-PARCからは、JSNS各担当者が計画概要、建設状況について報告すると共に、個別に技術会合が持たれた。またJ-PARCツアーを行い装置据付け状況などを視察した。

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●J-PARC放射線作業従事者講習会開催
 J-PARCリニアック棟は10月から各種機器の試験調整のため放射線障害防止法に基づく放射線管理区域設定が予定されており、このため、9月7日、22日にJ-PARC関係者、業者への放射線業務従事者教育訓練を実施した。リニアック棟での管理区域設定に先立ち、本年3月20日にハドロンスイッチヤードが放射線管理区域に設定されており、今回は2番目の区域設定になる。 講師はJ-PARCセンターの安全ディビジョンに所属の職員で、内容はJ-PARCの放射線障害予防規程、加速器施設の安全管理、リニアック施設の安全設備など。加速器施設での管理区域への出入りはインターロックシステム(Personnel Interlock System:PPS)が必須であり、加速器運転中に誤って入室することが無いこと、また、加速器運転開始時には入室者が完全に退去していることが確保されるもの。 講習会では出入りする実際の様子をビデオに撮った映像が使われ、大変に分かり易いものであった。
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●J-PARCの緑化計画 −保全と再生への取り組み−
 2006年9月15-17日、明治大学駿河台校舎で開催された第37回日本緑化工学会大会において、J-PARCの緑化計画について「−保全と再生への取組み−」と題して報告が行われた。J-PARCの建設工事は平成13年度末に着手され、貴重な動植物や自然植生が残る緑豊かな区域を含む33haに及ぶ松林の伐採が行われた。しかし、J-PARCでは事前に自然環境の保護、復旧計画について動植物専門家を交え綿密に検討を進めてきた。 そして造成地の緑化計画として景観復旧への配慮、高次団粒緑化システムによる緑化試験、クロマツの試験植栽等や、動植物の生態調査、貴重植物の移植・保護、野鳥が集う水辺空間整備等を実践してきた。また復旧植栽の基本としている抵抗性クロマツ2年生苗木の育苗期間を確保できない緑化工事については播種による緑化で成果を上げている。 現在J-PARCの建設は約70%程度の進捗率、平成20年度後半には施設の共用開始が予定されており、緑化計画についても供用開始に向けて最終調整の段階を迎えているところである。(関連記事:「J-PARCでの自然環境保護の取組み −動植物専門家との協力−」

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