■ J-PARC News 第134号より       (2016/06) 
●新材料開発技術 ADVANCED 4D NANO DESIGN が
第28回日本ゴム協会賞を受賞 (5月19日、日本ゴム協会2016年年次大会) 
  住友ゴム工業株式会社がSPring-8、J-PARCの物質・生命科学実験施設 (MLF) 、スーパーコンピュータ「京」の連携活用により開発したタイヤ用新材料開発技術「アドバンスド 4D ナノデザイン」が、第28回日本ゴム協会賞を受賞しました。この賞は、日本ゴム協会が設けたもので、ゴムならびにその周辺領域における科学、技術又はその産業分野の発展に寄与した者に与えられます。住友ゴム工業は、この新技術により、低燃費性とグリップ性を維持しながら耐摩耗性能を200%に向上させたコンセプトタイヤの開発に成功しています。
  詳しくは、J-PARCホームページをご覧ください。http://j-parc.jp/ja/topics/2016/Award160606.html


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●金属強磁性体SrRuO3を用いて電子状態の量子力学的な位相をスピンの運動として初めて観測 (6月8日、プレス発表) 
  大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 (KEK) 物質構造科学研究所の伊藤晋一教授 (J-PARCセンター・中性子利用セクション) のグループは、国立研究開発法人理化学研究所創発物性科学研究センター (CEMS) の永長直人副センター長、十倉好紀センター長のグループ、および、ソウル大学のJe-Geun Park教授のグループと共同で、茨城県東海村にある大強度陽子加速器施設J-PARCのMLFに設置された高分解能チョッパー分光器HRC (以下、HRC) を用いて、次世代型太陽電池への応用などが期待される金属強磁性体SrRuO3のスピン波のエネルギーを温度の関数として正確に測定することで、「電子状態の量子力学的な位相」に関する情報を得て、それが電子輸送現象である「ホール効果」と関連づけることができることを世界で初めて明らかにしました。この成果は、磁性体におけるスピンの挙動 (スピンダイナミクス) の研究に新しい視点を与えるものです。
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  この研究成果は、Nature Communications誌に6月8日掲載されました。
  詳しくは、J-PARCホームページをご覧ください。http://j-parc.jp/ja/topics/2016/Award160606.html
   
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●電池の特性を左右するSEI被膜〜その正体に迫る手法を開発〜 (5月13日、KEK-HPに掲載) 
  豊田中央研究所の川浦宏之主任研究員のグループは、KEKの山田悟史助教 (J-PARCセンター・中性子利用セクション) との共同研究で、リチウムイオン二次電池を充電する動作環境下における負極と電解液の界面に形成されていくSEI (Solid Electrolyte Interphase) 被膜の観察に、MLFの中性子反射率計SOFIAを用いて成功しました。SEI被膜が電池性能を大きく左右すると考えられており、この成果から、電池の性能向上に繋がる知見が得られるものと期待されます。本研究成果は、アメリカ化学会のACS APPLl. Mater. Interfaces誌に掲載されました。詳細につきましては、KEK/物質構造研究所のホームページをご覧ください。http://www2.kek.jp/imss/news/2016/topics/0513SEI/
論文情報
  H. Kawaura, M. Harada, Y. Kondo, H. Kondo, Y. Suganuma, N. Takahashi, J. Sugiyama, Y. Seno, and N. L Yamada
  "Operando Measurement of Solid Electrolyte Interphase Formation at Working Electrode of Li-ion Battery by Time-slicing Neutron Reflectometry", ACS Appl. Mater. Interfaces 8 (2016) pp 9540-9544. (DOI: 10.1021/acsami.6b01170)

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●MR (50GeVシンクロトロン) における陽子ビームの強度が425kWに到達 (5月26日) 
  現在、T2K (Tokai to Kamioka) 実験では電子型ニュートリノの反粒子である反電子型ニュートリノの出現現象の証拠を世界に先駆けてとらえ、ニュートリノにおける「CP対称性の破れ」の謎に迫ろうとしています。この実験を成功させるためには、MRからの陽子ビームでニュートリノをいかに大量に生成できるかが鍵であり、陽子ビームの大強度化がきわめて重要です。建設当初からMRの達成目標とするビーム強度は750kWで、これまでのビーム調整試験の結果、今回、ビーム強度が425kWに到達しました。この強度は、ニュートリノ生成標的に打込むパルス当たりの陽子数で比べたとき、2011年から世界最高記録を更新し続けています。詳細につきましては、J-PARCホームページをご覧ください。http://j-parc.jp/ja/topics/2016/MR425kw-j.html
  ※自然界で反粒子から作られる反物質がほとんど存在しない非対称性のこと

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●The 3rd International Meeting for Large Neutrino Infrastructures (5月30日〜6月1日、KEK・小林ホール) 
  「第3回大型ニュートリノ施設に関する国際会議」が、12か国、30余りの機関から約80人が出席し開催されました。この会議は、次世代大型ニュートリノ実験施設について、科学的な側面と組織的な側面から各プロジェクトの進捗状況を共有し、国際協力体制や関連実験、開発研究等に関して議論するものです。会議の冒頭、東京大学宇宙線研究所の梶田隆章所長が物質の起源解明に繋がる可能性があるハイパーカミオカンデ実験の意義などについて話をされました。また、J-PARCの齊藤直人センター長は、将来ハイパーカミオカンデに向けて発射するニュートリノビームの増強の展望などを紹介しました。2日間に渡る会議では、各国参加者から約30件の発表があり、次世代大型ニュートリノプロジェクト実現に向け、活発な議論が行われました。参加者の一部は、6月1日にJ-PARCを訪れ、ニュートリノ実験施設などを視察しました。

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●T2Kニュートリノコラボレーションミーティング (5月23〜28日、IQBRC) 
  T2K実験は、J-PARCのニュートリノ実験施設で生成したニュートリノを295km離れた岐阜県神岡町のスーパーカミオカンデ (SK) へ打込み、ニュートリノ振動 (変身) の謎を解明する国際共同実験で、年に3回ほど、世界中の実験参加機関から研究者が集まりコラボレーションミーティングを行っています。T2K実験は平成26年5月から、ミューニュートリノの反粒子である反ミューニュートリノビームモード運転で実験が行われ、今回の会議では、今年5月までの期間内に実施された最新のデータ解析結果の報告や来月4日からロンドンで開催予定の「第27回ニュートリノ・宇宙物理国際会議NEUTRINO2016」に向けたまとめなどが議論されました。また、27日にはT2K実験に関わる各国の学生11名が自己紹介を交えて各自思い思いのテーマでショートスピーチを行いました。

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●J-PARC-ESS collaboration workshop (6月1〜2日、J-PARC研究棟) 
  2019年度の稼動を目指して欧州17か国が関わるヨーロッパ核破砕中性子源 (ESS) の建設が、スウェーデン・スコーネ県の都市ルンドで進められています。ESS建設にあたり、2010年11月に関係者による視察団がJ-PARCを訪れ、施設建設やインフラ整備等について東海村や茨城県など自治体関係者を含めて情報交換が行われ、2012年6月にはESS開発に関わる協力協定がJ-PARCとの間に結ばれています。ESS建設には、昨年3月に退職された新井正敏 前物質生命科学ディビジョン長が加わり、現地で建設全般についてアドバイザーとして活躍しています。本計画は現在、施設の基本的な設計や中性子源装置などが概ね決定され、本格的な建設フェーズに移行する段階となりました。そこで今回、主に技術者を中心とした現場スタッフ16名のJ-PARC視察に合わせてワークショップが開催されました。ワークショップでは加速器、中性子源、中性子実験装置に関する技術、安全を含めたそれらの運用について、両者の最新の開発、研究、知見に関する口頭発表が行われ、活発な議論が行われました。施設見学は、6月1日の加速器保守日の午後全般で、リニアックトンネルなどに立入り加速器本体と3GeVシンクロトロンからMLFへのビーム輸送系を、中央制御棟では加速器制御室を、MLFでは水銀ターゲットのある放射化機器取扱室など施設全体と、中性子源前置き遮蔽体を一部開放した状態と分光器室内などを現場担当者の案内で見学しました。ワークショップ終了後、ESSの参加者からは「とても実りがあった」との声が寄せられました。

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2nd SUMI-E PAINTING LESSON (5月27日、KEK東海ドミトリー) 
  日本の伝統的な技法で描く墨絵の体験教室を、海外から大勢の外国人研究者が参加するT2Kコラボレーションミーティング開催期間中に原子力機構国際室と協力して行いました。墨絵体験教室の参加者は、4月に初回を開催した時のリピーターを含めて30名を超えました。竹、草木、動物、食べ物などの墨絵のサンプルを見ながらそれぞれ和紙で練習し、慣れたところで、自国に持ち帰るお土産用に準備された扇子や色紙に描きました。今回の参加者も、墨絵が初めてとは思えない出来栄えの作品ばかりでした。

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●ご視察者など
    5月 30日  ジョージア教育科学大臣 Tamar Sanikidze氏、他
    6月 22日  文部科学省 原子力損害賠償対策室 山下恭範次長、赤間圭祐次長、他
   
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※お詫びと訂正
  5月発行のJ-PARC NEWS 133号の「10.ご視察者」の中で、理化学研究所の表記に誤りがあり、正しくは「国立研究開発法人 理化学研究所」となります。訂正して、お詫び致します。
   
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