■ J-PARC News 第164号より       (2018/12) 
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●MLFユーザー 東京工業大学 菅野了次教授が山崎貞一賞を受賞
 (11月21日、東京・上野/日本学士院) 
  11月21日、東京工業大学の菅野了次教授は、「新規リチウムイオン伝導体の創成と全固体電池の開発」により平成30年度の材料科学技術振興財団 (MST) 第18回山崎貞一賞を受賞されました。現在、世界中で全固体電池 (電池の構成要素がすべて固体) の実用化に向けた競争が繰り広げられています。菅野教授は、物質・生命科学実験施設 (MLF) で固体電解質の開発に長年取り組まれています。今回、トヨタ自動車及びKEKと共同で、BL20「iMATERIA」の中性子線を利用した固体電池材料の結晶構造解析とその導電経路の可視化により、リチウムイオンが液体中よりもよく移動できる固体の物質を発見し、全固体電池の新たな可能性を示した点が大きく評価されました。
  関連記事として、J-PARC NEWS 131号 (平成28年3月25日発行) をご覧ください。
  「2.超イオン伝導体を発見し全固体セラミックス電池を開発〜高出力・大容量で次世代蓄電デバイスの有力候補に〜 (平成28年3月22日、プレス発表) 」http://j-parc.jp/ja/news/2016/news-j1603.html

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●コバルト酸化物でスピンの量子重ね合わせ状態を創出〜量子演算素子の基礎となる励起子絶縁状態の実現へ〜( 12月14日、プレス発表) 
  東北大学の富安啓輔助教、中性子利用セクションの河村聖子研究副主幹らの共同研究チームは、低温で磁石の性質を示さないコバルト酸化物LaCoO3のCoをScで化学置換したLaCo1-yScyO3において、元のLaCoO3とは磁気・電気・熱的性質の全く異なる絶縁状態が現れることを発見しました。また、X線回折・中性子分光実験※1の結果、この絶縁状態が電子スピンの総和が異なる2種類の原子状態 (低スピンと高スピン) の量子力学的な重ね合わせにより現れるという、これまでに例のない発現機構を突き止めました。この成果は、励起子絶縁※2と呼ばれる歴史的に観測例の少ない量子力学的な凝縮状態を示唆するものとして、その出現だけでなく、将来的な新規量子コンピュータ素子への発展が期待されます。本研究の成果は、現地の平成30年10月7日、ドイツの国際科学論文誌Advanced Quantum Technologiesに掲載されました。
  ※1 中性子分光実験には、MLFの冷中性子ディスクチョッパー型分光器「アマテラス」 (BL14) が使用されました。
  ※2 電気を通さない絶縁状態でありながら安定した量子力学的な凝縮状態を物質の中に保つ状態を言う。
  詳細はJ-PARCホームページをご覧ください。http://j-parc.jp/ja/topics/2018/press181214.html

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●第3回中性子・ミュオンスクールを開催 (11月20-24日、東海村、J-PARC&IQBRC) 
  11月20日から24日にかけてJ-PARCセンターと総合科学研究機構 (CROSS) は、国内11組織の共催で、第3回中性子・ミュオンスクールを開催しました。日本、中国・韓国・インド・タイ・ロシア・イギリスから35名の学生や若手研究者が参加、国内で本分野の第一線で活躍する講師陣による講義、MLFの装置担当者らの指導による実験装置を用いた実習を通じて中性子及びミュオン科学の理解と知識を深めました。本スクールは、日本が世界に誇るJ-PARCの国際的人材育成等の場にもなっています。

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●日本中性子科学会〜奨励賞受賞〜川崎卓郎氏 (中性子利用セクション)  (12月4-5日、茨城県民文化センター) 
  12月4-5日に、日本中性子科学会 第18回年会が茨城県民文化センターで開催され、4日の学会賞授賞式で、中性子利用セクションの川崎卓郎氏が奨励賞を受賞しました。川崎氏は、BL18「SENJU」及びBL19「TAKUMI」装置のグループの一員として研究を実施しており、受賞は「J-PARCパルス中性子回折装置の建設・運用・高度化と先導的研究」が高く評価されたものです。
  年会のオープニングセッションでは、「中性子科学の将来に向けて」と題したテーマで6名が講演、金谷利治 物質・生命科学ディビジョン長は、MLFの現状と将来計画について報告し、93%の良好な稼働率、7月の1MW試験運転 (1時間) での安定運転と高強度の中性子ビームから得られた新たな実験成果などを紹介しました。また、JAEA物質科学研究センター長の武田全康氏からは、JRR-3が2020年10月に運転再開予定であることの報告や、ご支援頂いた方々へのお礼の言葉などがありました。

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●第17回ミュオンg-2/EDMワークショップ (11月20〜23日、J-PARC) 
  11月20日から23日、J-PARCで計画しているミュオン異常磁気能率 (g-2) /電気双極子能率 (EDM) の精密測定実験 (E34) に関するコラボレーションミーティングが開催されました。17回目を迎える今回の会議には、日本・韓国・中国・ロシアなどの国際共同研究者約50名が参加しました。ミーティングでは、実験課題がKEK素粒子原子核研究所からステージ2の承認を受けたことを踏まえ、実験の実現に向けた今後の計画などについて議論しました。

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●T2Kコラボレーションミーティング (12月3-7日、IQBRC) 
  12月3日から7日に、T2Kコラボレーションミーティングが東海村のいばらき量子ビーム研究センター (IQBRC) で開催され、世界中から約200名の共同研究者が集まりました。今回は、年内に開催される国際会議で今年5月までに取得したデータを報告するための最終確認が行われました。5日午後の全体会議冒頭では、齊藤直人センター長がJ-PARCの現状を紹介しました。

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●J-PARCハローサイエンス〜鉄筋コンクリートを支える力を中性子で観る〜 (11月30日、東海村産業・情報プラザ「アイヴィル」) 
  11月のサイエンスカフェは、中性子線を利用した応力ひずみ解析技術の開発、材料強度研究を専門としているJAEAの鈴木裕士氏を講師に招き開催しました。講演では、私たちの身近にある鉄筋コンクリート建造物が、鉄筋とコンクリートの強い絆によって地震にも負けない性能を生みだしていること、そのお互いを支える力 (絆) を中性子によって調べ、安全安心な社会を実現する新しい施工技術の開発に活かされていることが紹介されました。中性子によって材料内部のひずみ測定ができる原理が良く分かるもので、参加者からは数多くの質問が飛び交いました。
  ※物質科学研究センター 応力評価技術研究グループリーダー

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●アウトリーチ活動 (11月23日、西東京市/11月28日、東海村/12月2日、日立市) 
  J-PARCセンターは、子供から大人まで科学に興味を持ってもらう活動として、坂元眞一科学コミュニケーターが中心となり、学校や各種イベントに出かけて科学実験教室を実施しています。この11月下旬から12月上旬にかけて、@11月23日、西東京市の多摩六都科学館で開催の「KEKサイエンスカフェ」で、小学4年生以上の参加者を対象に、生活に欠かせない「エネルギー」を題材に実験を交えた講演を行いました。電気照明、電池、太陽光など色々な形のエネルギーの変身ぶりを実験を通して考えてみました。A11月28日、中丸小学校の理科クラブで、静電気についての授業と実験実演 (静電クラゲなど) と、振り子ベル工作を実施しました。B12月2日、日立市で開催された青少年のための科学の祭典で、「光はなに色?」をテーマに、光についての解説と万華鏡工作を実施しました。子ども達は興味深く話に耳を傾け熱心に実験・工作に取り組んでいました。

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●J-PARCフォトコンテスト開催 (J-PARC、平成30年度) 
  平成30年度J-PARCフォトコンテストの受賞作品の表彰式が11月29日に行われました。応募者11名、応募作品数36点。受賞作品の選考には地元在住の写真家も加わり、最優秀賞1点、優秀賞2点、佳作7点が選ばれました。最優秀賞には、加速器第五セクションの魚田雅彦氏が応募した「KOTOの心臓部」が輝きました。HD (ハドロン) ホールのKOTO実験装置では、心臓部となるメインカロリーメーターからの信号出力部にイーサーネットのコネクタが使われていることに着目したものです。

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●日本中性子科学会 市民公開講座「役に立つ?!中性子ビーム〜暮らし、産業、医療そして宇宙〜」 (12月8日、東海村/IQBRC) 
  12月8日、日本中性子科学会の市民公開講座が、東海村のいばらき量子ビーム研究センター (IQBRC) で開催されました。講座は、「役に立つ?!中性子ビーム〜暮らし、産業、医療そして宇宙〜」と題して3名の講師が講演しました。@「未来を拓く中性子ビームの利用〜暮らしや産業、そして医療にも〜」、A「しっておきたい、がん粒子線治療の話」のテーマによる講演後、齊藤直人センター長は「素粒子ミュオンに刻まれた宇宙の歴史ーJ-PARCで探る宇宙・物質の起源」をテーマに講演しました。
  センター長は、J-PARCセンター全体のマネージメントに尽力する傍ら、東京大学理学系研究科に齊藤直人研究室を所管し、学生らと量子線研究を進める研究者でもあります。研究室は、総合研究大学院大学ミュオン精密測定研究室と共に、主にμ (ミュー) 粒子のミュオン異常磁気能率 (g-2) /電気双極子能率 (EDM) を精密に測定することを通じて標準模型を超えた新たな物理の探索研究を進めています。
  講演ではJ-PARCで行われている研究の全体概要から、これら研究が宇宙の始まりを知る上でどんな役割を担っているか、新たな物理の探索研究に何故ミュオン精密測定が重要かなど多岐にわたって語りました。
  ※講演者、講演概要については、日本中性子科学会のホームページなどでご確認ください。http://www.jsns.net/jp/html/nenkai/public-seminar.html

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●生け花教室 (11月15日、原子力科学研究所・先端基礎研究交流棟) 
  11月15日、今年度3回目となる生け花教室を、東海村国際交流協会の先生に指導を受け、原科研・先端基礎研究交流棟で開催しました。今回は、原子力人材育成センターの研修コースに参加中の海外からの受講生も参加し、20名以上となりました。可憐な花々を思い思いにアレンジし、楽しそうに記念写真を撮る姿が見受けられました。

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●ご視察者など
 
   12月 3日  茨城県副知事 宇野善昌氏
   12月 5日  中国原子能科学研究院 Weping LIU副理事長
   
●加速器運転計画
  1月の運転計画は、次のとおりです。なお、機器の調整状況により変更になる場合があります。

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