■ J-PARC News 第131号より       (2016/03) 
●ヒドリドイオン"H-"伝導体の発見 (3月18日、プレス発表) 
〜水素を利用した革新的エネルギーデバイスの開発の可能性〜
  分子科学研究所の小林玄器特任准教授、高エネルギー加速器研究機構 (KEK/J-PARC) の米村雅雄特別准教授らの研究チームは、高い電池電位が期待できる水素の陰イオンであるヒドリド (H-) が、イオン伝導する新物質の固体電解質を開発しました。この研究成果は、既存の蓄電池や燃料電池開発の延長線上のものではなく、水素のエネルギー利用に新たな可能性をもたらし、全く新しい作動原理をもつエネルギーデバイスの開発に道を拓くと期待されます。なお、この固体電解質は、物質・生命科学実験施設 (MLF) などでの中性子実験により結晶構造が決定され、SPring-8 (大型放射光施設) の放射光X線で機能が確認されました。本研究は、科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業、日本学術振興会 科学研究費助成事業の助成を受けて行われました。また、本研究成果は2016年3月18日に、米国の科学誌「サイエンス (Science) 」に掲載されました。

  詳細につきましては、J-PARCホームページhttp://j-parc.jp/ja/topics/2016/Press160318.htmlをご覧ください。



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●超イオン伝導体を発見し全固体セラミックス電池を開発 (3月22日、プレス発表) 
〜高出力・大容量で次世代蓄電デバイスの最有力候補に〜
  東京工業大学の菅野了次教授、KEK/J-PARCの米村雅雄特別准教授らの研究グループは、世界最高のリチウムイオン伝導率を示すセラミックスの超イオン伝導体を発見し、それを蓄電池の電解質に応用することで、従来のリチウムイオン二次電池の3倍以上の出力特性を持つ、全固体型セラミックス電池の開発に成功しました。今回、発見された超イオン伝導体は、MLFの粉末中性子回折装置「茨城県材料構造解析装置 (iMATERIA:BL20) 」で結晶構造が解明され超イオン伝導経路が明らかになりました。さらに電極反応機構を電解液を用いるリチウムイオン二次電池と比較し、高出力特性が全固体デバイスの本質的な利点であることを解明しました。

  本研究成果は、2016年3月21日に、英国の科学誌「ネイチャーエナジー (Nature Energy) 」電子版に掲載されました。詳細につきましては、J-PARCホームページhttp://j-parc.jp/ja/topics/2016/Press160322.htmlをご覧ください。

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●国際諮問委員会 (IAC2016)  (2月29日〜3月1日、J-PARC研究棟) 
  J-PARCの施設や運営などについて、国内外の専門家を招聘して国際的視点でレビューを行う各種アドバイザリー委員会が2月中旬から下旬にかけて開催されました。ミュオン科学実験施設、加速器施設に関わる委員会および中性子アドバイザリー委員会 (NAC) が開かれ、NACでは、22日に開催した、中性子標的容器設計の妥当性評価のための国際レビュー委員会の審議結果が報告されました。さらに、これら委員会の上位委員会でJ-PARC全体のレビューを行うIACが29日から開催され、J-PARC関係者から施設の現状や将来計画などについて、また、各委員会から審議結果が報告され議論が行われました。IACからは、これまでの実績を今後のサイエンスの成果によりいっそう結びつけるようにとの御意見を頂きました。

  諮問委員の方は、以下の通りです。
   

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●中性子アドバイザリー委員会 (NAC)  (2月23〜24日、J-PARC研究棟) 
  2月23日、24日の2日間にわたり、2015年度の中性子アドバイザリー委員会 (NAC) がJ-PARC研究棟で開催されました。NACは、物質・生命科学実験施設 (MLF) の1MWパルス中性子源、及び中性子実験装置の技術的課題と、施設の管理・運営についての検討を国際的視点に立って行うための専門部会であり、国内外の中性子源・中性子散乱の専門家10人の委員 (Robert McGreevy委員長、ISIS) を招聘して開催されました。NACでは、平成27年の中性子標的容器 (水銀ターゲット容器) に生じた不具合を受けて、NAC開催前日の22日に行われた中性子標的容器の新しい設計に関する国際レビュー委員会の審議結果が、Bernard W. Riemer委員長から報告されました。また、J-PARC及びMLFの全体概要、中性子源、実験装置及び中性子デバイス等の現状や施設の利用状況に関する報告のほか、MLFの産業利用の現状や、成果の創出を促進する方策、計画外のビーム停止に対するユーザー課題への対応方法などに関して活発な議論がなされました。NACでの審議結果は2月29日から開催されたJ-PARC国際諮問委員会で報告されました。
  諮問委員は、以下の先生方です。

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●加速器アドバイザリー委員会 (A-TAC)  (2月25〜27日、J-PARC研究棟) 
  2月25日から27日の3日間にわたり、2015年度の加速器アドバイザリー委員会 (A-TAC) が、J-PARC研究棟で開催されました。A-TACは、J-PARC加速器の技術的課題と、施設の管理・運転などについての検討を国際的視点に立って行うための専門部会であり、国内外の加速器の専門家10名の委員 (Thomas Roser委員長、BNL) を招聘して開催されました。最初に、J-PARC 側から施設全体と加速器の現状報告が行われました。続いて、加速器担当者から加速器全体のビームスタディやコミッショニングの状況、各加速器のアップグレード将来計画、50GeV シンクロトロン (MR) の新しいビーム入射システム、ビームの速い取り出しシステムおよび電磁石電源の開発状況などについて、前回開催の委員会から受けた諮問内容への対応状況を含めて報告し、活発な議論が行われました。A-TACでの審議結果は、2月29日から開催されたJ-PARC国際諮問委員会で報告されました。
  諮問委員は、以下の先生方です。

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●第1回ANSTO-J-PARC国際研究協力ワークショップ (3月2〜3日、J-PARC研究棟) 
  3月2日、3日の2日間にわたり、第1回ANSTO-J-PARC国際研究協力ワークショップ (WS) がJ-PARC研究棟で開催されました。平成27年7月、高エネルギー加速器研究機構 (KEK) 、日本原子力研究開発機構 (JAEA) とオーストラリア原子力科学技術機構 (ANSTO) は、中性子科学分野の相互協力に関する取決め (MOU) を締結し、今回、その取決めに基づく実質的な研究協力の進め方が、在ワシントンDCオーストラリア大使館のAnthony Murfett参事官の視察の下、 議論されました。 ANSTOからはAdi Paterson最高責任者 (CEO) を含む12名の研究者が来訪しました。

  オープニングでは、齊藤直人 J-PARCセンター長、Adi Paterson CEO、山田和芳 KEK物質構造科学研究所所長、横溝英明 総合科学研究機構 (CROSS) 東海センター長が各組織を代表して挨拶され、続いて、Rob Robinsonブラッグ研究所所長がMOUに至る経緯を、金谷利治 物質生命科学ディビジョン長が主旨説明を行いました。本WSでは研究協力分野として、サイエンスと装置開発、産業利用、中性子偏極技術、重水素化技術、試料環境、安全文化を選び、それぞれの分野で日豪それぞれのコーディネータが準備段階から議論を積み重ねてプログラムを作成しました。1日目は、両機関の研究者や広島大学からの参加者による固体物理と食品科学を含むソフトマターの研究トピックの紹介に始まり、産業利用、中性子偏極技術、試料環境におけるコーディネータによるANSTO、J-PARCの現状分析と研究協力の方向性についての講演が行われました。

  2日目は、安全に関わる取組みの紹介、測定試料の重水素化技術についてのコーディネータによる講演が行われるとともに、各協力分野でパラレルセッションが組まれ、茨城大学、CROSS、京都大学、JAEA量子ビーム応用研究センターからの参加者の講演を含め、研究協力プロセスの活発な意見交換が行われました。WSの最後には、各コーディネータによるセッション報告を受けて、川北至信 中性子利用セクションサブリーダーと、Jamie Schulzブラッグ研究所運転担当部長による各協力分野の詳細検討、金谷氏とRobinson氏によるWS全体のまとめが行われました。WS後に、J-PARC研究棟1階に整備中の実験室や、CROSSがいばらき量子ビーム研究センターに整備している実験室などユーザーサポート施設の見学が行われました。

  また、4日にはポスターセッションが、同日開催の日豪中性子科学に関する国際ワークショップ (東京大学物性研究所主催J-PARCセンター共催) と合同でJ-PARC研究棟アトリウムで行われました。

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●拡張ハドロン実験施設における物理に関する国際ワークショップ (3月5〜6日、KEK東海1号館) 
  日本学術会議は、日本の科学者コミュニティの代表として学術の大型研究計画に関するマスタープランを策定しており、現在、マスタープランの見直しと策定を行うための公募を行っています。今回、ハドロン実験施設のユーザーコミュニティであるハドロンホールユーザー会がJ-PARCの高度化計画のうち、ハドロンホール拡張に焦点を当てた研究会を開催しました。実験施設を利用する国内外の研究者が多数参加し、高輝度・高精度の新しいビームラインを使っての研究展望や、それらを実施するために必要なホールの拡張などについて、終始活発な議論が交わされました。

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●加速器運転計画
 
  4月の運転計画は、次の通りです。なお、機器の調整状況により変更になる場合があります。

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●2015年度量子ビームサイエンスフェスタ (第7回MLFシンポジウム)  (3月15-16日、エポカルつくば) 
   
  KEK物質構造科学研究所 (物構研) とMLFによる合同サイエンスフェスタは、今年度から名称を「量子ビームサイエンスフェスタ」に変更し、2日目のMLFシンポジウム、PFシンポジウムを含めて約570名の参加者を迎えて3月15、16日につくば国際会議場で開催されました。二日目のPF (KEK放射光科学研究施設) シンポジウムとパラレルで開催されたMLFシンポジウムでは、まず、MLF施設報告として金谷利治 物質生命科学ディビジョン長などにより将来計画、ユーザープログラム、実験装置などの開発状況、標的容器不具合とその対応状況などについて報告されました。その後、MLFのパルス中性子源とパルスミュオン科学実験施設の完成に深く関わられた、故渡邊昇先生と故西山樟生先生の追悼セッションが持たれ、中性子源セクションの高田弘リーダーと、ミュオンセクションの三宅康博 KEK物構研主幹が追悼講演を行いました。シンポジウム特別セッションでは、東京大学の岡田真人教授から「スーパーモデリングによる量子ビームからの潜在構造抽出」と題した講演があり、量子ビーム科学と計算科学との融合による新しい研究の方向性について活発な議論が行われました。ユーザーからの要望の紹介では、MLF利用者懇談会から、事前のアンケートによる調査結果の報告、実験装置を所掌するJAEA、KEK及びCROSS関係者から装置や利用実験に関わる情報提供があり、活発な質疑応答・意見交換が行われました。続く2つのセッションの7件講演では、近い将来のMLF1MW運転に向けた「MLFにおける大強度ビームコミッショニングの現状」と題した施設側からの講演や、利用実験の紹介として物質・材料研究機構の内藤昌信 主幹研究員による「中性子反射率測定を用いた塗膜・接着剤中の水分析」と題した講演が行われました。

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●J-PARC分室設置に関わるMOU署名式 (3月18日、J-PARC) 
  現在、大阪大学と高エネルギー加速器研究機構 (KEK) の間には、両機関の連携及び協力を推進するための協定が結ばれています。大阪大学は、ハドロン実験施設などを利用した研究に多数参画しており、今回、両機関の協力協定に基づき、J-PARCにおける両者の緊密な研究協力関係を構築するための拠点として、KEK東海1号館に、大阪大学J-PARC分室を設置することとなりました。18日には覚書 (MOU) の署名式が、J-PARC研究棟で齊藤直人 センター長なども同席して行われました。

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●サイエンスカフェ「魅力度ランキング最下位ってホント!?〜中性子で探る生命の謎から食文化まで、魅力いっぱいの茨城〜」 (3月19日、東海村産業・情報プラザ) 
  JAEAが主催のサイエンスカフェにおいて、量子ビーム応用研究センターの中川洋 研究副主幹が、J-PARC広報セクションの坂元眞一アドバイザーが進行役のもと、標記テーマで講演を行いました。中川氏は、MLFで中性子利用実験を行っている研究者です。初めは出身県の話から都道府県別魅力度ランキングの話題で会場を和ませたあと、本題に入って行かれました。生命科学研究で利用する中性子や中性子実験の特徴、その実験で蛋白質の形や動き、DNA (遺伝子) 情報などを調べることができて創薬開発につながることを話されていました。蛋白質は、アミノ酸が鎖状 (ほどけた状態) に連なり、鎖状の蛋白質が折り畳まれて立体構造を取ることで、初めてその機能が現れるとの話でした。この状態の違いを、蛋白質溶液に熱を加えて色が変化する"蛋白質の折り畳み実験"で実演されました。また、茨城県の名産品「ほしいも」を例に、食品の保存性研究を目的とした中性子利用実験の話もあり、20名の参加者からは、身近な話題に多くの質問が出ていました。

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●ご視察者など
    3月 11日  Nisamaneephong Pornthep タイ国家原子力技術研究所長、他
    3月 18日  大阪大学 西尾章治郎総長、他
   
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