機器安全審査の例1. 高温炉

100℃以上の高温を発生する装置は高温炉として、ビーム実験に先立ち、事前試験を含む安全審査を行い、安全性が確認されたのち、ご使用いただくことになっています。規定(高温炉)
安全審査に際して、以下のポイントを参考にして下さい。

電気保安上の安全性

ケーブル、コネクタが機器の仕様に適合するものなのか確認します。
配線上の不具合がないか(接続コネクタがむき出しになっていないか等)、確認します。
アースがとられているか、確認します。

インターロック

何らかの理由で機器制御が効かず、暴走をした場合に、これを自動的に止めるインターロックシステムを有していることが求められます

過昇温防止

次の2つの方法があります。

1. 制御用の温度計を用いる

制御用の温度計で、ある設定した温度を超えると、コントローラーがこれを感知し、自動的に出力を止めます。多くの市販の温度コントローラーが有している機能です。

2. (制御用とは異なる)モニター用の温度計を用いる

制御用とは異なる、モニター用の温度計を用意し、これがある設定した温度以上になると、出力が停止されます。市販のコントローラーがこの機能を有していることは少ないです。しかし、この機能が有効に働く場合として、例えば、本来試料位置に置かれるべき温度計が何らかの原因で外れて別の場所にある場合や、 設置する温度計の種類を間違い、正常な温度計測がされなかった場合、さらには、ヒーター制御はうまくいっているが、本来上がってはいけない場所で温度が上がってしまった場合等があり、機器の安全性を確保する上で重要なシステムです。

MLFでは、原則として、上記2つの過昇温防止インターロックシステムを備えた高温炉の持ち込み、使用をお願いしています。

水冷

水冷が必要な場合、水量または水圧によるインターロックシステムを組み入れることは有効です。

真空(圧力)

真空またはある特定の圧力範囲での使用が必要な場合、圧力値で制限するインターロックシステムを組み入れることは有効です。

インターロックの解除

インターロックが動作し、自動停止がなされたら、動作条件から外れても(例えば過昇温で自動停止後、温度が下がった場合)、自動復帰して動作が再開されることのないようにされるべきです。インターロックの解除は、原因が究明されたのち、オペレーターによって手動で行われるようにしておく必要があります。

非常停止

何らかの異常が認められたとき、すぐさま、高温炉の出力動作を停止できる非常停止装置(ボタン)を設置することが望まれます。また、その設置場所は、異常感知後、直ぐに停止動作が行えるところである必要があります。

表示灯の設置

高温炉の動作、異常の発生が直ぐに認知できる表示灯の設置を推奨いたします。
表示の色と意味の対応について、MLFでは以下の方式を推奨しています。
○高温炉の動作:赤点灯
○異常の発生:赤点滅+警告音

尚、表示灯については、今後、MLFで準備することを検討しています。

動作確認試験

実験で使用する予定の最大温度に10℃程度プラスした温度まで昇温し、安定して制御されることを確認いたします。

火傷の防止

高温測定を終え、試料を交換する時等は、熱い状態になった試料に触れることで火傷をしないよう注意してください。試料近くに設置した温度計をモニターし、試料交換をするのはこの温度が何℃になったときに行うことにする、といった実験手順書を作成しておくとよいでしょう。

監視体制

現状、MLFでは、ユーザー持ち込み高温炉については、昇温動作中は常時監視していただくことをお願いしています。測定が長時間に及ぶことが予想される場合、監視要員の確保についても、予めご検討ください。

特殊な高温炉について

上記では、高温炉一般にあてはまる説明でしたが、以下では、高温の発生、試料周辺の環境という点で特殊ものについて説明します。

ランプ加熱炉

コイル式の電気炉では、炉心管が試料回りにあるため、中性子ビームが当たり、バックグラウンド発生の要因になります。これに対し、ランプ光を照射しての高温発生では、試料回りに余計なものを置かなくてもよい利点があります。さらに、この方式では、高温状態が比較的短時間で達成できます。安全上の問題点としては、ランプが発生する光の輻射により温められるため、設計上のミスや機器の破損等が影響して、集光もしくは光が照射される場所が予定とは異なることになった場合、その場所が加熱されることになり、思わぬ問題を生じる可能性があるということです。このため、事前運転試験において、この種の問題が生じないか、種々の場所での温度モニターを行います。

レーザー加熱炉

特性は上のランプ加熱炉と同じですが、レーザー加熱炉の場合、指向性の良いレーザーを用いているという点が異なります。また、J-PARCセンターレーザー安全専門部会による安全審査対象機器となり、MLF機器安全チームによる審査とは別の安全審査が必要となります。7.高出力光源

雰囲気炉

試料回りをある特定のガス雰囲気にして高温実験する場合があります。この場合、機器安全チームによる高温炉の安全審査以外に、ガス安全チームによる安全審査が必要となりますので、この点を装置担当者にご相談ください。特に、爆発性のあるガスについては、事前の相談が必要となります。