Hadronハドロン
ここは、ハドロン実験施設です。写真の右側の大きな体育館のような建物はハドロン実験ホールと呼ばれ、そこで素粒子、原子核物理に関する実験が複数行われています。J-PARC加速器から供給される一次陽子ビームを金属製の標的(生成標的)まで輸送し、ビームを生成標的に衝突させます。この衝突で発生する大量の粒子(π中間子やK中間子)の一部を、さらに各実験室まで輸送して実験に使用しています。ここで行われている実験の特色を一言で表現するならば、それは“大強度”(ビーム中の粒子の数が多い)だと言えます。これまで観測することのできなかった「まれ」な現象の探索や、測定精度不足のため結論が出なかった問題に決着をつけるなど、世界最高レベルの強度を誇るJ-PARCだからこそ可能となる最先端の実験により、素粒子標準理論を超える物理の探索や、クォークの世界を支配する強い力の性質解明が行われています。それぞれのビームラインについての説明はギャラリーをご覧ください。
研究者による施設紹介
Galleryギャラリー
ハドロン実験施設模式図
AK1.8ビームライン
BKLビームライン
C高運動量ビームライン(Bライン)
DCOMETビームライン
Photo Galleryフォトギャラリー
C高運動量ビームライン(Bライン):物質の質量の謎に迫る
一次陽子ビームラインの一部(0.1%程度)を実験室に輸送して直接実験に用います。奥に見える青い直方体が実験用のスぺクトロメータ電磁石で、この中心に実験標的が設置され、標的を囲むように検出器は配置されます。
VR GalleryVRギャラリー
φ中間子の視点
電磁石と検出器に取り囲まれています。φ中間子はすぐに電子と陽電子の対に崩壊します。この電子陽電子対が磁場中でどのくらい曲がるかを測定することで、電子陽電子対の速度を測定し、元のφ中間子の質量を求めます。φ中間子を生成する元となる陽子ビームが運ばれてくるビームラインも見えます。
DCOMETビームライン: 未知の物理現象を探索する
超伝導輸送ソレノイド電磁石
実験に必要なミュー粒子を運ぶための電磁石です。超伝導による強磁場を使用することで、不必要な粒子を取り除き、ミュー粒子を選択的に運びます。
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AK1.8ビームライン:中性子星内部の性質の謎、に迫る
生成標的で生成される粒子のうち、電荷を帯びた粒子、主にK中間子を使って実験するビームラインです。このビームラインでは“強い力”の性質を探る多くの実験が行われています。
我々の身のまわりに存在する多様な原子の中心には原子核があり、原子核は陽子と中性子(まとめて”核子”)から構成されています。さらに核子はアップクォークとダウンクォークから構成されています。このクォーク同士や核子を結びつけているのが、“強い力”です。”強い力”は理論的な扱いが難しく、その性質解明には実験的研究が必要不可欠です。
この実験室では、地上には安定に存在しないストレンジネスクォークを含んだ核子の仲間(ハイペロン)を用いた強い力の性質解明が研究の柱となっています。研究者達が様々なアイデアを持ち寄って、多様な実験を行っています。数か月程度で完了する様々な測定を、標的や検出装置を変更しながら入れ替わり立ち替わり行っています。地上に安定に存在しないハイペロンは、宇宙の中性子星内部には多く存在すると考えられており、中性子星の性質解明に重要な役割を果たしています。
BKLビームライン:消えた反物質の謎に迫る
このビームラインでは、“消えた反物質の謎”に迫る“KOTO実験を行っています。KOTO実験では、生成標的で生成される粒子のうち、長寿命な中性のK中間子を使って行われます。
宇宙創生時に粒子と反粒子(粒子と電荷の符号が反対の粒子)は同数つくられたはずですが、現在の宇宙は粒子から成る物質でできており、反粒子から成る反物質はほぼ見当たりません。これは、“CP対称性の破れ”という粒子と反粒子に関する性質の違いに起源があると考えられています。現在の素粒子論では、2008年にノーベル物理学賞を受賞した小林氏と益川氏の提唱した機構により、僅かな“CP対称性の破れ”が組み込まれています。しかし、現在の素粒子理論には含まれていない未知の機構により、より大きな“CP対称性の破れ“が実は存在するのではないか、と多くの研究者は考えています。
長寿命中性K中間子は約50ナノ秒で様々な粒子に変化(崩壊)します。その長寿命中性K中間子中性K中間子の崩壊のうち、中性π中間子と二つのニュートリノへの崩壊は、”CP対称性の破れ“の大きさと強く関りがあります。そこで、KOTO実験では、この崩壊が起こる確率を測定することで、現在の素粒子論を超えた未知の機構の存在を探しています。
C高運動量ビームライン(Bライン):物質の質量の謎に迫る
一次陽子ビームの一部(0.1%程度)を分岐させて、直接実験に用いるビームラインです。2020年度よりビームラインの運転と共同利用実験を開始しました。物質を極限まで細かくするとクォークに行きつきます。クォークの質量の起源は近年発見されたヒッグス粒子によって説明されますが、この質量を足し上げても物質の質量の数%程度にしかならない事が知られています。残りの質量を説明する機構として提唱されたのが、2008年にノーベル物理学賞を受賞した南部氏の“自発的対称性の破れ”です。では、この“自発的対称性の破れ”の度合いが変わると、物質の質量はどうなるのでしょうか。それを実際に測定し、研究する実験が開始されました。
原子核内部は地上における最高密度です。そのような環境では、“対称性の破れ”は変化すると考えられています。そこで、原子核内部でのφ中間子の質量と、原子核外部でのφ中間子の質量の違いを測定することで、物質の質量の謎に迫ります。
陽子ビームを実験標的に衝突させることでφ中間子を生成します。生成されたφ中間子はまれに電子陽電子対に崩壊します。この電子陽電子対の速度を測定することで、原子核内部に存在するφ中間子の質量を測定します。
DCOMETビームライン: 未知の物理現象を探索する
COMETビームラインでは、大強度の一次陽子ビームを実験室まで輸送します。そこで、COMET実験用の生成標的に衝突させ、衝突で生成される大量の粒子の中からミュー粒子を選び出して、実験に使用します。現在、実験ホールに設置してある巨大なイモムシのような装置は、ミュー粒子を選別して輸送するための超伝導電磁石です。ミュー粒子を曲げながら運ぶことで、実験の邪魔となる電荷を持たない粒子や早い粒子を取り除きます。
素粒子の一つであるミュー粒子は約2.2マイクロ秒で電子に変化(崩壊)しますが、その際、必ず2種類のニュートリノを伴うことが知られています。しかし、現在の素粒子論に含まれない未発見の粒子が存在した場合、ニュートリノを伴わずにミュー粒子が電子へと変化する(転換する)可能性が示唆されています。ただし、そのような現象は非常に低い確率でしか起こらないため、これまでに発見されたことはありません。
ニュートリノを伴わず電子に転換した場合、その電子は特徴的なエネルギーを持ちます。ミュー粒子から転換した電子のエネルギーを精密に測定することで、ミュー粒子の崩壊がニュートリノを伴っていたかどうかの判別を行います。電子を測定するための検出器群やCOMETビームラインは現在建設中です。