原子・分子に1個又はそれ以上の個数の電子が加わって負の電荷を帯びた状態にあるものを負イオンという。正(+)の電荷を持つ1個の陽子(通常 p と表記)の周りを、負(−)の電荷を持つ1個の電子(通常 e と表記)が回っている水素原子にさらに電子1個が付け加えられ、1個の陽子の周りを2個の電子が回り負の電荷を帯びたイオンを負水素イオンとよぶ。
J-PARCのリニアックでは負水素イオンを加速し、3GeVシンクロトロンに入射する直前で炭素の薄膜(荷電膜変換)を通して荷電変換(電子を剥ぎ取ること)を行い、陽子に変換している。
リニアックから3GeVシンクロトロンに陽子を入射しようとすると、リニアックからの入射軌道を曲げるために励磁されるキッカー電磁石の磁場が、シンクロトロン内を周回している陽子ビームの軌道に影響を与えてしまい、上手く入射することができない。しかし負イオンは陽子と電荷が逆であるため、同じ磁石によって曲がる方向が逆になるため、上手く入射することができる。