用語解説

J-PARC(大強度陽子加速器施設)関連用語集

用語の後ろについている分類は、それぞれ、
  (※:加速器研究及び施設
  (※:物質・生命科学研究及び施設
  (※:素粒子・原子核研究及び施設
  (※:核変換研究及び施設
  (※:その他の関連用語
を表す。

【は】

  パイオン (※素)
  π(パイ)中間子とも呼ばれる中間子の一種。正または負の電荷を持つものと、電気的に中性の3種類がある。電子の質量の約270倍の質量を持っている。高エネルギー陽子と標的核との反応により発生させる。湯川博士が理論的に予言したことで知られている。
  正又は負の電荷を持つパイオンは、約1億分の1秒で崩壊して、ニュートリノとミュオン(ミュー粒子)を生成する。
  廃棄物管理 (※換)
  廃棄物の取扱、処理、調整、輸送、貯蔵、処分等を含む全ての活動の総称。
  バッファタンク (※加、※物、※他)
  液体や気体を一時的に貯めておくためのタンク。
  ハドロン (※素)
  物質を構成する基本粒子である素粒子(クォーク)が複合して形成されているもの(粒子)。クォークは電子などのレプトンとは異なり単独では存在できず、ハドロンの中に閉じこめられている。
  陽子や中性子などの重粒子族と、π中間子やK中間子などの中間子族の二つの族を総称してハドロンと分類している。
  パルス中性子源 (※物)
  パルス状の中性子を発生させる中性子源。J-PARCなどのようなパルス状に陽子を加速する加速器を利用した中性子源では、陽子ビームがターゲットに入射するタイミングに合わせて中性子を発生させるため、パルス中性子源となる。(参照「定常中性子源」)
  パルス中性子ビーム (※物)
  ある一つの集団を形作って移動する中性子群で、細く絞られた形になっているものを中性子ビームと呼ぶ。J-PARCのように通常加速器から発生される中性子は、大強度な陽子ビームによって標的が核破砕反応を起こした時に発生するが、陽子ビームがパルス状(J-PARCの場合0.04秒に1パルス)であることから、発生する中性子もパルス状になるためパルス中性子ビームと呼ばれる。
  原子炉から発生する中性子は核分裂によって発生するため、連続的に絶え間なく流れてくる中性子群になっている。
  パルス電磁石 (※加)
  加速器内で陽子は連続して存在しているのではなく、いくつかの塊状(バンチ)になって存在している。ビーム加速中、加速器内のある一箇所でこれらを眺めると、通過する時間は極めて短いが、何回も繰り返し通過することとなる。このような状態をパルス状と呼ぶ。これらの塊状陽子が通過するときだけ働く電磁石をパルス電磁石という。
  J-PARCでは、3NBT(3GeVシンクロトロンから物質・生命科学実験施設への陽子ビーム輸送ライン)と、3-50BT(3GeVシンクロトロンから50GeVシンクロトロンへの陽子ビーム輸送ライン)の振り分け電磁石として使われており、この電磁石の可動によりMLFあるいは3GeV出射ダンプと50GeVシンクロトロンへの同時取り出しが可能となる。
  半減期 (※換)
  原子核に中性子の数が多いなどの不安定な核種は、エネルギーとして放射線を放出して少しずつ安定な核種に変換(崩壊)していく。放射線を放出する期間は核種によって固有に決まっており、放射線を放出する核種の量(放射能の強さ)が半分に減少するために要する期間を半減期という。半減期が1秒もない核種から、数万年、数億年といったものまである。例えば私たちの体内にもある放射性物質であるカリウム40の半減期は約12億8千万年、PETでがんの診断に使用するフッ素18の半減期は約110分。
  例えば半減期が2日の場合、2日間で放射線を放出する核種の数は半分に、4日間で1/4に、6日間で1/8に減少する。
  反射体 (※物)
  J-PARCでは、中性子ターゲットで発生した中性子を効率良く減速材に集めるため、ターゲットと減速材を取り囲むように中性子を反射させる反射体(中性子反射体)が設置されている。
  反射体にはベリリウム、黒鉛(グラファイト)、鉛、鉄などが使用される。J-PARCの核破砕中性子源では、反射体は内側のベリリウムと外側のステンレス(またはアルミニウムで被覆した鉄)で構成され、内部の発熱を取り除くために水冷されている。反射体の使用により、モデレータから取り出される中性子の強度は、約10倍に増幅される。

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【ひ】

  標準理論 (※素)
  標準模型ともいい、素粒子に働く強い相互作用、弱い相互作用、電磁相互作用を記述する理論。強い相互作用を記述する量子色力学、弱い相互作用と電磁相互作用を記述するワインバーグ−サラム理論、小林−益川理論からなる。
  PFI(ピー・エフ・アイ) (※他)
  Private Finance Initiativeの略。公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う手法。
  ピーク強度 (※加、※物、※素)
  ビーム強度を参照。
  ビーム強度 (※加、※物、※素)
  一定時間内にターゲットや計測装置などの、ある面を通過する粒子の数。ビームがパルス状に生成される場合、そのパルス内の瞬間的な最大粒子数をピーク強度、パルス内に含まれる粒子の数をパルス強度、時間的に平均した強度を(時間)平均強度、実験に使われた全粒子数を表すときなどにはその積分値を(時間)積分強度と呼び、区別している。
  ピームコリメータ (※加)
  陽子ビームは塊(バンチ)となって加速器内部で存在している。陽子は全て+(プラス)の電荷を帯びているので、塊の中で隣り合う陽子同志は電気的に反発し、加速あるいは輸送中発散する傾向にあり、ある広がりを持つことになる。発散した塊の周辺部にある陽子は、加速器構成機器にぶつかり構成機器を放射化したり、場合によっては損傷させる恐れもある。標的に照射される際には、標的領域以外に照射されることもある。
  こういった事象を回避するため、塊の周辺部の余分な粒子を取り除くための装置をビームコリメータと呼ぶ。時にはビームスクレーパーと同義にも使用される。
  ピームスクレーパ (※加)
  ビーム加速やビーム輸送の際に技術的な必要性からビームサイズを小さくする装置。時にはビームコリメータと同義にも使用される。
  ピームダンプ (※加、※物、※素)
  加速されたビームの最終目的地。標的との相互作用による2次粒子生成等の目的に利用できなかったビームを破棄するところ。
  ピームロス (※加)
  ビームの一部又は全部が目的地に到達する前に失われること。標的への照射や入出射部等限定された場所で起こるポイントロスと、加速器や輸送ラインに沿って起こるラインロスがある。後者は、ビームは真空チェンバー中を輸送されるが、完全な真空ではないので残留ガスと衝突し散乱し、極々微量では有るが加速あるいは輸送中に真空チェンバー中でビームが失われるものである。
  ビッグバン (※素)
  ビッグバン宇宙論。宇宙は最初きわめて高温で高密度に凝集した物質(原子核の密度と同じくらい)であったが、その後、大爆発(ビッグバン)が起こり膨張をはじめたという宇宙原理。

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【ふ】

  フェルミチョッパー (※物)
  中性子源から発生した広エネルギー範囲の中性子から実験に適した低エネルギー中性子を高精度で選択するための機器。湾曲したビーム通過チャネル付の吸収体で構成される。
  負水素イオン(H-) (※加)
  原子・分子に1個又はそれ以上の個数の電子が加わって負の電荷を帯びた状態にあるものを負イオンという。正(+)の電荷を持つ1個の陽子(通常 p と表記)の周りを、負(−)の電荷を持つ1個の電子(通常 e と表記)が回っている水素原子にさらに電子1個が付け加えられ、1個の陽子の周りを2個の電子が回り負の電荷を帯びたイオンを負水素イオンとよぶ。
  J-PARCのリニアックでは負水素イオンを加速し、3GeVシンクロトロンに入射する直前で炭素の薄膜(荷電膜変換)を通して荷電変換(電子を剥ぎ取ること)を行い、陽子に変換している。
  リニアックから3GeVシンクロトロンに陽子を入射しようとすると、リニアックからの入射軌道を曲げるために励磁されるキッカー電磁石の磁場が、シンクロトロン内を周回している陽子ビームの軌道に影響を与えてしまい、上手く入射することができない。しかし負イオンは陽子と電荷が逆であるため、同じ磁石によって曲がる方向が逆になるため、上手く入射することができる。
  物質・生命科学実験施設(MLF) (※物)
  物質・生命科学実験施設(MLF: Materials and Life Science Experimental Facility)は、中性子およびミュオンを利用して、物質科学や生命科学などの研究を行う実験施設。建物は長さ約140m、幅70m、高さ約30mあり、ジャンボジェット機が2機収納できるほどの巨大な実験施設である。1MWの大強度陽子ビームを水銀の標的に衝突させ、原子核破砕反応により発生するパルス中性子を、23本設置される中性子利用ビームラインに導く。パルス中性子源の強度は同様の施設である米国のSNSを上回り、世界最高強度を実現している。この高強度中性子が材料の内部応力解析やタンパク質構造解析など、物質科学研究や生命科学研究に利用される。また炭素標的から発生するミュオンも世界最高強度を実現しており、磁性構造解析や材料分析などに利用される。
  フライホイール (※加、※他)
  物体の回転運動の形でエネルギー(電力)を蓄えておき、必要な時に回転運動のエネルギーで電力を発生させる装置。J-PARCの50GeVシンクロトロンは、3GeVで入射した陽子ビームを50GeVに加速するということを約0.3Hz(約3秒間に1回)で繰り返す。これに応じて電磁石磁場を繰り返し上げ下げしなければならない。そのために生じる電力変動を低減し平滑化するためにフライホイールが用いられる。
  J-PARCのような大電力を使用する設備は、急激な電力変動を伴うと、受電している電力系統(送電線などを流れている電気)に変動を及ぼし、その系統に接続されている工場の設備や家庭電化製品などに影響を与える恐れがある。そのため事前に十分な電力系統解析を行い、影響を与えない範囲、条件で受電するが、その影響をさらに低減化させるためには、フライホイールなどの装置が必要になる場合がある。
  フラーレン (※物)
  60個の炭素原子が12個の五員環(炭素5原子からなる環)と10個の六員環を構成し、サッカーボール状の3次元中空分子となったもの。ダイヤモンドや黒鉛と同様に炭素の同素体で、直径は0.71nm である。1970年に大沢映二がその存在の可能性を理論的に予言し、1985年にクロトーとスモーリー(96年、カールとともに3人でノーベル化学賞受賞)らがヘリウム中でレーザー照射した黒鉛を質量分析器にかけて発見した。1990年、クレッチマーがC60の量産方法を確立し、以後化学的性質の研究が進んだ。分子の中空部分にアルカリ金属を注入すると絶対温度18K以上でも超伝導性を保つことから、高温超伝導物質として注目された。
  プリモデレータ (※物)
  核破砕中性子源で発生した中性子を効率よく減速材に供給するために用いられる装置。中性子を予め減速する(エネルギーを下げる)機能を持つ。また中性子強度を増加させ、核発熱を軽減する効果も合わせ持っている。
  水素を用いるモデレータでは、メタンなどを用いた場合に比べ含有水素密度が小さく減速能力が低いため、中性子強度が低くなってしまう欠点がある。またモデレータ内部の発熱も大きくなる。このような欠点を補うため、含水素密度の高い物質であらかじめ中性子を減速させるプリモデレータを導入することで、中性子特性の向上と熱の軽減を図っている。プリモデレータに使用される材質は、主に軽水または重水である。また反射体の材質によって、プリモデレータの効果は大きく変わり、中性子減速効果の小さい鉛などには有効であるが、ベリリウムなどは効果が低い。
  プルトニウム(Pu) (※換)
  原子番号94の超ウラン元素の一つ。天然には極微量しか存在しない。 Pu-239はU-238の中性子捕獲によって生ずるU-239が、2段の β崩壊をすることで生じる。その半減期は2.4×104年である。これがさらに中性子を捕獲すると順次Pu-240、241及び242などの同位体が生じる。このうちPu-239とPu-241は核分裂断面積が大きいために核分裂物質(核燃料)として利用できる。Pu-239は高速中性子を捕獲したときの核分裂における中性子発生率が大きいために、高速増殖炉の燃料として用いられる。U-238を親物質に用いると核燃料の増殖が可能になる。プルトニウムを熱中性子炉で燃焼させるのがプルサーマル炉である。
  粉末回折装置 (※物)
  金属、有機物などの粉末試料の結晶構造を反映した中性子の干渉パターンを解析することにより、結晶の原子配列、内部ひずみなどを測定する装置。

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【へ】

  PET(ペット) (※他)
  Positron Emission Tomographyのこと。「陽電子放射断層撮影」と訳す。核医学画像診断法の一つで、陽電子(ポジトロン)放出核種を利用する断層映像法をいう。電子−陽電子の対消滅によって互いに反対方向に放出される一対の消滅ガンマ線(511keV)を同時計数法によって検出し画像化する。
  がん細胞は盛んに細胞分裂を行っているため、通常細胞に比べて数倍のブドウ糖をエネルギーとして取り込んでいる。ブドウ糖に近い成分であるFDG(フルオロデオキシグルコース)などに標識として陽電子放出核種を組み込んだ薬剤(標識薬剤)を体内に注射する。するとFDGは細胞分裂が盛んなところ、すなわちがん細胞に多く集まり、そこで標識から発生する陽電子が身体中の電子と対消滅によりガンマ線を発生する。それをガンマ線カメラで検出して断層写真(CT写真)を撮影することで、X線などでは発見されにくい1mm程度の小さながんまで精度良く発見することが可能になっている。
  しかし標識薬剤は尿として排出されるため、PETでは尿が集まる腎臓や膀胱などのがんを調べることは不得意である。
  また、脳細胞も盛んにブドウ糖を消費しているため、脳の局所機能の検査やアルツハイマー病の診断などにも応用されている。
  ベロー(またはベローズ) (※加、※他)
  配管と配管のつなぎ目などを接続している、波状に加工された管。「蛇腹」とも呼んでいる。
  ベローは伸縮させることができるため、温度差や振動などによる材料の伸び縮みで生じるズレを吸収したり、ベロー内部の容積を変化させて圧力を吸収したり一定に保つことなどができる。
  楽器のアコーディオンの蛇腹部分もベロ−構造の一種であり、容積を変化させて空気を楽器に送り込む働きをしている。
  偏向電磁石 (※加)
  ビームの方向を変える電磁石。シンクロトロンでは、アーク部に設置し、ビームがリング状の軌道を周回するよう制御している。
  陽子や電子などの荷電粒子は、磁力線の中を通過すると「フレミングの左手の法則」による力を受けて、その進行方向が曲げられる。偏向電磁石は上下に磁場をかけて、陽子や電子の進行方向を左右に曲げることができる。また偏向電磁石を90度傾ければ、上下方向へも向きを曲げられる。
  シンクロトロン加速器では、この偏向電磁石を適切に配置して、陽子ビームなどが円形の軌道を描くようにしている(このビームが曲げられている部分をアーク部と呼ぶ)。シンクロトロンのような円形加速器は、一見なめらかな円のように陽子ビームが周回しているようだが、陽子ビームは偏向電磁石の部分だけで曲げられており、磁石と磁石の間は直進している。
  J-PARCの3GeVシンクロトロンでは24台、50GeVシンクロトロンでは96台の偏向電磁石が配置されている。従ってそれぞれ24角形、96角形であるとも言える。
  シンクロトロンでは、陽子ビームが常に一定の軌道を通るように、加速される陽子ビームエネルギー(スピード)に合わせて偏向電磁石の磁場を強くしている。陽子ビームのエネルギーと偏向電磁石の磁場の強さを同期(シンクロナイズ)させることから、シンクロトロンと呼ばれている。

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【ほ】

  放射化分析 (※物)
  試料に放射線を照射して放射性核種を作り(放射化)、その放射性核種が安定核種に戻る際に放出する放射線を分析することで試料に含まれる元素の量を分析する手法。
  放射光 (※加、※物)
  電子、陽電子等の高エネルギーの荷電粒子が磁場中で軌道を曲げられるときに軌道の接線方向に電磁波(光)を出す現象を「シンクロトロン放射」と呼び、そのとき放出される光をシンクロトロン放射光あるいは単に放射光と呼ぶ。指向性が高く輝度が高いのが特徴。
  加速器は荷電粒子の加速を目的としているが、シンクロトロンなどの円形の軌道で粒子を周回させる加速器では、偏向電磁石で粒子の軌道を曲げる度に放射光が発生し、折角加速したエネルギーが失われてしまう。そのため「厄介な光」として嫌われていたのだが、放射光の指向性、輝度が優れていることから、これを物性研究などに利用することが考えられ、粒子を加速することよりも放射光を発生させることを目的とした加速器(放射光専用施設)も建設されている。兵庫県にあるSPring-8や、高エネルギー加速器研究機構のPF(フォトンファクトリー)などである。
  放射光の発生は、荷電粒子の質量の4乗に反比例するため、質量の小さい粒子(例えば電子など)ほど放射光の発生が多い。J-PARCで加速している陽子は電子の約2千倍の質量があるので、電子に比べると放射光の発生は10兆分の1以下であり、加速エネルギーが失われる影響は非常に小さい。
  膨張タービン (※物)
  一般に冷蔵庫やエアコンなどの冷凍機では、気体を圧縮機で圧縮して冷却し、その後急速に膨張させることにより、低温を得る。膨張タービンは、圧縮気体を急速膨張させる過程で圧縮気体自身によってタービンを回し、気体の運動エネルギーを外部に与えることによって気体自身が持つエネルギーを低下させ、より低温を得るための装置のことである。
  J-PARC核破砕中性子源の極低温水素循環システムに設置された冷凍機では、-250℃の大流量液体水素を生成するために、膨張タービンを使用している。
  ポストゲノム科学 (※物)
  ゲノム解読は単にゲノムの全塩基配列を決定することであり、ポストゲノム科学とは、個々の遺伝子がどこにあるか、さらにそのはたらきが何であるかなどをゲノムの情報を基盤に理解し、生命の原理を明らかにすることである。ポストゲノム科学では、創薬など新産業の創出が期待されている。
  1980年代の終わりに始まったヒトゲノム計画では、ヒトをはじめ数多くの生物種においてゲノムを明らかにする研究が行われ、2003年にヒトゲノムの解読は完了した。しかしこれは、単にゲノムの全塩基配列が決定されたということであり、個々の遺伝子がどこにあるか、さらにそのはたらきが何であるかが、直ちに明らかになるわけではない。言ってみればゲノムがどのような暗号配列を持っているかが明らかになっただけであり、その暗号がどのような意味を持つのかを解読するのはこれからである。
  ゲノムの情報を真の意味で解読するためには、個々の部品(遺伝子)の集まりからシステム全体(細胞あるいは生物個体)が再構築できるかどうかを調べ、「生命のはたらきをシステムのはたらきとして理解する」ことが必要である。
  補正電磁石 (※加)
  陽子ビームは、偏向電磁石で向きを曲げ、四重極電磁石で発散を抑えて(絞られて)加速したり、また次の加速器に輸送(送られ)したりする。陽子ビームは、真空ダクトの中を加速・輸送されるが、陽子ビームが真空ダクトに接触しないように、長い距離を輸送する際には陽子ビームの上下方向、左右方向の位置の微調整を行う必要がある。陽子ビームの位置の微調整を行う電磁石が補正電磁石である。補正電磁石の構造は偏向電磁石と同じように陽子ビームを曲げる磁石であるが、曲げ角が小さいので偏向電磁石に比べ小型である。