AboutJ-PARCとは
私たちの宇宙はどのように誕生し、なぜ物質が存在しているのか?
茨城県東海村。古から続く美しい海岸線の地下に巨大な加速器施設群が存在しています。大強度陽子加速器施設J-PARC(Japan Proton Accelerator Research Complex)は、加速器施設と素粒子物理、原子核物理、物質科学などの最先端研究を行う実験施設から成る複合研究施設群です。
日本原子力研究開発機構(JAEA)と高エネルギー加速器研究機構(KEK)が共同で運営するJ-PARCの最大の特徴は、ほぼ光速まで加速された世界最高クラスの大強度陽子ビームで生成する中性子、ミュオン、K中間子、ニュートリノなどの多彩な2次粒子を利用した実験にあり、宇宙・物質の起源に迫る研究から、暮らしに役立つ電池やタイヤの性能が決まるしくみを原子レベルで明らかにする研究まで、幅広い研究が行われています。
OverviewJ-PARCの大強度陽子ビームで拓く新しい世界
J-PARCの加速器は、リニアック(直線型加速器、全長約300m)、3GeVシンクロトロン(RCS、周長約350m)、主リングシンクロトロン(MR、周長約1,600m)の3つで構成されています。
リニアックで光速の70%まで加速された負水素イオンは、RCSに入ったところで炭素の薄膜をくぐり、2個の電子がはぎ取られ、陽子になります。RCSで光速の97%まで加速された陽子ビームのほとんどは、物質・生命科学実験施設MLFに送られます。残りはMRに送られ、さらに光速の99.95%まで加速された陽子ビームは、ハドロン実験施設、ニュートリノ実験施設に導かれます。
では、この陽子ビームを用いてどのような研究をしているのでしょうか。
MLFでは、物質や生命の機能がどうやって生み出されるのかに挑んでいます。加速器で作った中性子やミュオンを材料に当てて原子レベルで調べることで、機能が生まれるしくみに迫ります。
ニュートリノ実験施設では、大量の人工ニュートリノを作って295km離れたスーパーカミオカンデまで飛ばします。飛んでいる間に起こる変化を調べることで、宇宙の始まりの謎を解明する素粒子の物理法則に迫ります。ハドロン実験施設では、私たちの身の回りの物質がどうやって成り立っているのかを解き明かそうとしています。
また、加速器により高レベル放射性廃棄物を減らす核変換技術の研究開発を行う実験施設の検討を進めています。
このようなJ-PARCの幅広い研究を、オンライン施設公開でご紹介します。
J-PARCは、新物理法則、新物質の発見を通して未来を加速し、人類の知のフロンティアに貢献することを目指します。
List of Facilities施設一覧
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リニアック
J-PARC加速器の始まりとなる直線型加速器。負水素イオンを作り出すイオン源と4種類の加速器(RFQ、DTL、SDTL、ACS)を用いて負水素イオンを光速の70%まで加速する。
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RCS
加速器の2段目となる円形加速器。陽子はこの加速器で光速の97%まで加速され、MLFとMRに向かう。
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MR
加速器の3段目となる巨大な円形加速器。陽子は光速の99.95%まで加速され、ニュートリノ実験施設、ハドロン実験施設に送られる。
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物質・生命科学実験施設 MLF
世界最高強度の陽子ビームで作り出される中性子ビームとミュオンビームを利用して、基礎科学から応用研究まで幅広い分野の研究を行っている。現在、21本の中性子ビームラインと4本のミュオンビームラインが稼働中だ。
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ニュートリノ
J-PARCで作り出した大量の人工ニュートリノを295km離れた岐阜県飛騨市神岡町にある「スーパーカミオカンデ」に打ち込む。このT2K実験で、粒子・反粒子の性質に違いがある(CP対称性が破れている)現象の謎に迫る。
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ハドロン
物質を構成する究極の要素が何かを極微のスケールで探求する。大強度の陽子ビームを使って原子核反応や素粒子崩壊など様々な実験を行っている。
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核変換
加速器により高レベル放射性廃棄物を減らす核変換技術の研究開発を行う実験施設建設に向けて、液体重金属標的に関する技術開発を行っている。