Transmutation核変換
原子力発電では、使用済み核燃料などの放射性廃棄物の処理・処分が世界的な課題になっています。そこで、放射性廃棄物に含まれる有害な物質を分別(群分離)してより安全な物質に変換(核変換)することにより、地中深くに埋める廃棄物の量と監視時間を大幅に短縮する「分離変換技術」が実現できれば、廃棄物処分の概念を一新できる可能性を秘めています。原子力機構では、加速器と原子炉を組み合わせた「加速器駆動核変換システム(Accelerator Driven nuclear transmutation System: ADS)」を使って核変換を行う方法を提案しています。J-PARCのような大強度の加速器の応用として、特に有望な技術です。実際にまとまった量の「核変換」を行うには、J-PARCはまだまだ力不足で、さらに大強度の加速器が必要です。しかし、ADSが必要とする大強度の陽子ビームを取扱うためには、実際に陽子ビームを使った実験が不可欠です。そこで私たちは、J-PARCの陽子ビームを使い、核変換研究のための様々な実験を行っています。また、ADS特有の液体金属に関する研究開発を行っています。さらに将来、J-PARCの陽子ビームを利用した核変換研究のための実験施設を建設しようと、検討を進めているところです。ここでは、現在J-PARCで行っている「核変換」の研究開発の現場をご紹介します。
研究者による施設紹介
Galleryギャラリー
Video Gallery動画ギャラリー
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核変換研究に必要な陽子ビーム制御技術の開発
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ADSに使う液体金属「鉛ビスマス合金」の実験室
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鉛ビスマス中での金属の寿命を測る試験装置 OLLOCHI
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鉛ビスマス用の酸素センサとゴミ取りフィルタの試験装置 LAPIN
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J-PARCで鉛ビスマスを使うための試験装置 IMMORTAL と RHYTON
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液体金属の流れを見る超小型センサ開発装置 NALTO
List of Facilities施設一覧
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リニアック
J-PARC加速器の始まりとなる直線型加速器。負水素イオンを作り出すイオン源と4種類の加速器(RFQ、DTL、SDTL、ACS)を用いて負水素イオンを光速の70%まで加速する。
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RCS
加速器の2段目となる円形加速器。陽子はこの加速器で光速の97%まで加速され、MLFとMRに向かう。
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MR
加速器の3段目となる巨大な円形加速器。陽子は光速の99.95%まで加速され、ニュートリノ実験施設、ハドロン実験施設に送られる。
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物質・生命科学実験施設 MLF
世界最高強度の陽子ビームで作り出される中性子ビームとミュオンビームを利用して、基礎科学から応用研究まで幅広い分野の研究を行っている。現在、21本の中性子ビームラインと4本のミュオンビームラインが稼働中だ。
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ニュートリノ
J-PARCで作り出した大量の人工ニュートリノを295km離れた岐阜県飛騨市神岡町にある「スーパーカミオカンデ」に打ち込む。このT2K実験で、粒子・反粒子の性質に違いがある(CP対称性が破れている)現象の謎に迫る。
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ハドロン
物質を構成する究極の要素が何かを極微のスケールで探求する。大強度の陽子ビームを使って原子核反応や素粒子崩壊など様々な実験を行っている。
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核変換
加速器により高レベル放射性廃棄物を減らす核変換技術の研究開発を行う実験施設建設に向けて、液体重金属標的に関する技術開発を行っている。