ハドロン実験施設「Cライン」が完成
ハドロン実験施設にはこれまで、「Aライン」、「Bライン」と呼ばれる2本の一次陽子ビームラインがありました。Aラインは最初に作られた一次陽子ビームラインで、加速器で30 GeVまで加速された陽子を生成標的に照射して、π中間子やK中間子などの二次ビームを生成して実験に供給するために使われています。Bラインは2020年に稼働を開始した比較的新しいビームラインで、加速された陽子のうちの一部だけをAラインから分離して直接実験に用いるためのビームラインです。
今回、3本目の一次陽子ビームラインとなる「Cライン」が完成しました。Cラインは、Bラインの途中からさらに分岐する形で、8 GeVまで加速された陽子ビームをCOMET実験に供するビームラインです。2023年2月9日から調整運転を続けてきましたが、3月14日に行われた放射線発生装置使用施設の変更の許可に係る施設検査の結果、3月15日付けで合格と認められました。
COMET実験は、ミューオンがニュートリノを出さずに電子に転換する極めて稀な事象を探求する実験です。J-PARCの大強度陽子ビームを利用することで、大量のミューオンを発生することが可能になります。これにより、これまで発見されたことがない事象を世界で初めて発見することを目指しています。今回の調整運転時には、一次陽子ビームラインの調整と並行して二次ミューオンビームラインの調整も行われました。Cラインが完成したことにより、今後、COMET実験が本格的に進展することが期待されます。