トピックス

2023.07.28

J-PARC News 第219号

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■J-PARC特別講演会2023開催 ノーベル物理学賞受賞者の梶田隆章氏らが講演
 (7月1日、東海文化センター及びYouTubeライブ配信)

 「いよいよ始まるハイパーカミオカンデプロジェクト」と題し、特別講演会を開催しました。東海文化センターには348名にご来場いただき、ライブ配信でも多くの皆様にご視聴いただきました。
 講演会はタレントの黒田有彩氏が司会を務め、小林隆J-PARCセンター長と山田修東海村長のオープニングの挨拶で始まりました。
 まず「ニュートリノのふしぎ」と題して、2015年にノーベル物理学賞を受賞された日本学術会議会長、東京大学卓越教授・特別栄誉教授、宇宙線研究所教授の梶田隆章氏が、ニュートリノの発見、質量の存在、ニュートリノ振動の仕組みなどについて歴史を紐解きながら説明しました。続いて「J-PARCで作るニュートリノ」と題して、ニュートリノセクションリーダー坂下健氏からJ-PARCにおけるニュートリノ研究の紹介と実験設備の高性能化の計画と期待される成果についての解説がありました。次に東北大学大学院理学研究科教授 市川温子氏が登壇し、「ハイパーカミオカンデで探る宇宙のひみつ」と題してハイパーカミオカンデ建設の進捗状況や、施設が完成することによってCP対称性の破れなどの研究が促進されることが紹介されました。
 講演の後の交流セッションでは、講演者を含むパネリストへ多くの質問が寄せられました。小学5年生からの「電気をもっていないニュートリノが原子核にぶつかるとなぜ電気を帯びた素粒子がでてくるのか?」などの鋭い質問に、パネリストたちがていねいに答えていました。最後に会場にお越しいただいた高校生までの皆さんとパネリストが壇上で一緒に写真撮影を行いました。
 なお、本講演会に先立ち、東海中学校と東海南中学校で、ニュートリノセクション関口哲郎氏が「ハイパーカミオカンデへ撃ち込め!」と題して出張授業を行いました。
J-PARC特別講演会2023のアーカイブはこちらからご覧ください。 https://www.youtube.com/watch?v=Brg1Tapv3jw

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■二ツ川健太氏が日本加速器学会 技術貢献賞を受賞

 加速器ディビジョンの二ツ川健太氏が「大電流パルスビーム陽子線形加速器のビーム負荷補償システムの研究開発」の業績により、第19回日本加速器学会 学会賞 技術貢献賞を受賞しました。ビーム負荷補償システムは、J-PARCのリニアックのような大電流のパルスビームを加速する線形加速器において、安定したビーム供給のために最も重要な役割を果たす機能の一つです。この研究成果により、ビームロスを最小限に抑えるとともに、パルス内でのビームのエネルギーを揃え、より高品質な陽子ビームを供給できることが期待されています。

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■プレス発表
 伝導率が世界最高のリチウムイオン伝導体が示す全固体電池設計の新しい方向性
 次世代電池材料を用いた厚膜型全固体リチウム金属電池を実現(7月7日)

 東京工業大学、KEK、東京大学、J-PARCの研究グループは、世界最高のリチウム(Li)イオン伝導率を持つ固体電解質を開発しました。
 次世代のLiイオン電池として、現在のLiイオン電池で用いられる可燃性の有機電解液を難燃性の固体電解質で置き換えた全固体電池は、広い温度範囲で安全に使用できることに加え、高容量と高出力を達成できることが期待されています。
 本研究では、既存のLiイオン伝導体の結晶構造を維持したまま、組成を複雑化することで、-50℃から55℃の温度範囲において元の材料の2.3〜3.8倍のイオン伝導率を示す新材料を開発しました。この新材料の結晶構造をJ-PARCの中性子回折で測定し解析したところ、予想通りの結晶であることが判明しました。
 本研究で開発した新材料を固体電解質に用いることで、室温25℃で理論値の約90%のエネルギーが取り出せる厚み1 mmの厚膜が実現し、電極面積当たりの容量はこれまでの全固体電池の1.8倍となりました。さらに、開発した厚膜電極とLi金属負極を組み合わせた厚膜型の全固体Li金属負極電池は、現行のLiイオン電池にない特徴を持つ全固体電池が実現可能という期待を高めました。
 今回の結果は、電気自動車やスマートグリッドの成功の鍵を握る次世代蓄電デバイスに新たな指針をもたらすものです。
詳しくはJ-PARCホームページをご覧ください。 https://j-parc.jp/c/press-release/2023/07/07001176.html

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■令和5年度 中性子産業利用報告会を開催
 (7月13~14日、秋葉原コンベンションホール及び一部リモート配信)

 本報告会は、J-PARC物質・生命科学実験施設(MLF)及び研究用原子炉JRR-3が供給する中性子やミュオンの産業利用について、産業界からの要望とマッチングを図ることに重点を置いて開催しています。
 第6回目となる今回は、秋葉原コンベンションホールにて行われ、会場には2日間で225名の参加がありました。
 今年は中性子産業利用推進協議会が創設されてから15年を迎え、これまでの歩みを振り返るとともに、宇宙科学から高分子・生体材料、金属材料やカーボンニュートラルなど、幅広い産業での成果や様々な課題に対する取組についての報告と、活発な質疑応答がありました。

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■茨城県立並木中等教育学校SSH企画開催(6月23日)

 「J-PARCの研究者と討論!〜身近なものから最先端の科学まで〜」というテーマで開催され、中学1年生から高校2年生までに相当する生徒15名が参加しました。
 講師は業務・運営支援ディビジョン(加速器第三セクション兼務)の三浦昭彦氏が務め、X線や中性子およびミュオンの特徴、J-PARCの各施設や研究内容、社会的役割について紹介しました。その後、グループセッションに移り、科学を学ぶ意義などについて講師と生徒の間で活発な議論が交わされました。また、どういうきっかけで進路を決めたのかなど、大学受験を控えた生徒らしい質問もありました。
 本企画は並木中等教育学校生徒会が発案したサイエンス講座でした。生徒からは、「研究者の方とお話しする機会はめったになかったので、新鮮だった。」などの感想が寄せられました。
※将来国際的に活躍しうる科学技術人材の育成を図るため、先進的な理数系教育を実施する高等学校等を「スーパーサイエンスハイスクール」として文部科学省が指定。

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■GSAサイエンスセミナー(7月15日、岐阜県飛騨市)

 GSA(ジオスペースアドベンチャー)は、神岡鉱山の本物の坑道とスーパーカミオカンデなどの宇宙物理学最先端の研究施設を活用して行う、地中での探検イベントです。今年は4年ぶりに開催され、150名の定員に対して1,078名もの応募がありました。イベントの一環として、神岡町公民館でKAGURA&J-PARCサイエンスセミナーが企画され、午前の部43名、午後の部32名が聴講しました。J-PARCセミナーでは、「見たい?知りたい?J-PARC」というテーマで、JAEAの宇津巻竜也氏(元広報セクション)が、スーパーカミオカンデに打ち込んでいるニュートリノはJ-PARCで作られていることなどを説明し、参加者から「J-PARCで(陽子)ビームは加速できるが、(中性子は電荷がないので)加速できないのか?」などの質問にも答えました。また、ポスターの展示コーナーでも、来場者にJ-PARCの概要を説明しました。

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■ご視察者など

 7月24日 在東京タイ王国大使

 

 

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J-PARCさんぽ道 ㊱ -東海村の埴輪-

 写真は東海村の石神小学校校庭から出土された埴輪です。左が男性、右が女性で、いずれも6世紀代の製作とされています。我々が連想する目や口を大きく開けた愛嬌のある埴輪と違い、男女ともに切れ長の目、鼻筋の通った端正な顔立ちで、単なる出土品としてではなく、現代人が見ると美術品としての価値も十分あるものです。赤っぽい土に白い石を混ぜたものを材料とし、粘土紐を輪積みにして中空の顔の元を作り、顔の表面を撫でて輪郭を整え、最後に目と口に穴を開けるという、当時の非常に高度な製作技術がうかがえます。
 東海村教育委員会とJ-PARCセンターは「宇宙線ミュオンで古墳を透視プロジェクト」を主催しています。J-PARCでは、世界最高強度のミュオンビームを造り出して物質生命科学の新たな解明を目指す一方で、宇宙線ミュオンを使って子どもたちと一緒に古墳の内部を探り、古代の文化を見つめることも行っています。

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