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2025.01.08

日本中性子科学会各賞を受賞

◆◇◆ 功績賞 ◆◇◆

元J-PARCのセンター長 池田 裕二郎氏 (現)理化学研究所 光工学研究センター客員主管

  元J-PARCのセンター長、現在は理化学研究所 光工学研究センター客員主管の池田 裕二郎氏が中性子科学会功績賞を受賞しました。本賞は広く我が国の中性子科学の発展に顕著な功績があった者に与えられる賞です。
  建設期からJ-PARCに携わっていた池田氏は、受賞講演として、建設当時に共に汗を流した多くの方と挑戦した出来事やJ-PARCへの熱い思いを語りました。

  受賞テーマ:⼤強度パルス核破砕中性⼦源建設及び運転への指導的貢献

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◆◇◆ 技術賞 ◆◇◆

共通技術開発セクション 渡辺 真朗氏

  中性子科学の技術的発展に顕著な貢献を行ったとして、共通技術開発セクションの渡辺 真朗氏が技術賞を受賞しました。
  渡辺氏らは中性子の分野で長年の課題であった強磁場下での中性子回折実験を実現させるため、パルス強磁場発生装置の初期開発からJ-PARCユーザーの利用が可能な段階に発展・成熟させ、更にそこから世界の施設へ広がる数多くの技術的革新を行いました。
  渡辺氏は日本中性子科学会第24回年会にて「パルス強磁場下における中性子回折技術の開発と応用」というテーマで受賞記念の講演を行いました。

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◆◇◆ 奨励賞 ◆◇◆

中性子利用セクション 植田 大地氏

  中性子利用セクションの植田 大地氏が奨励賞を受賞しました。本賞は中性子科学に関して優秀な研究を発表した、 40歳未満の若手研究者に対して贈られるものです。
  植田氏は多彩な物性を示すセリウムについて、磁性に注目し中性子実験を行いました。セリウムを含んだ化合物の構造の違いによる、磁気特性や磁気異方性の発現、磁気励起を観測し、特異な物性が現れる原因を明らかにしました。本成果はセリウムを含む4f電子系に関して、従来の理論では説明のできない、新たな理解に重要な役割を果たすと期待がされます。
  植田氏は第24回の中性子科学年会内で「Ce化合物における新奇物性の研究」との題目で受賞講演を行いました。

----- 関連サイト -----

KEK site

  植田助教が日本中性子科学会の奨励賞を受賞
  − セリウム化合物の物性研究に新たな視座 –
  https://www2.kek.jp/imss/news/2024/topics/1226jsns/

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元中性子利用セクション 博士研究員 山下 享介氏 (現)大阪大学 助教

  元中性子利用セクション 博士研究員であり、現在は大阪大学の助教である山下 享介氏が日本中性子科学会2024年度奨励賞の受賞者として選ばれました。本賞は中性子科学に関して優秀な研究を推進している40歳に達しない者へ贈られるものです。
  山下氏はJ-PARCの工学材料回折装置「TAKUMI」を使い、次世代の幅広い産業で利用されることが期待されている先進構造材料について、高い強度と優れた延性の発現機構について研究しました。
  第24回年会では「その場パルス中性子回折を用いた先進構造材料の機械的特性の発現機構に関する研究」のテーマで受賞講演を行いました。

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◆◇◆ 波紋President Choice ◆◇◆

 中性子利用セクション 青木 裕之氏 および 元同セクション 古府 麻衣子氏 (現)東京大学 教授

  日本中性子科学会が出版している学会誌「波紋」に掲載された論文の中から、2年毎に授与される本賞に、中性子利用セクション 青木 裕之氏の「中性子反射率による接着界面の構造解析」と元同セクションの古府 麻衣子氏の「古典系スピングラスの局所磁気励起」が選ばれました。二人の論文はそれぞれ、波紋33巻(2023)4号と34巻(2024)3号に掲載されています。
  12月5日に名古屋国際会議場で開催された日本中性子科学会 第24回年会にて、受賞式が行われました。

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◆◇◆ ポスター賞 ◆◇◆

JAEA 特別研究生 名古屋大学 M1 浅井 寛太氏

  JAEAの3Heスピンフィルタグループの特別研究生 名古屋大学 理学研究科 素粒子物性研究室 M1 浅井寛太氏 が12月4~6日に行われた中性子科学会 第24回年会にてポスター賞を受賞しました。

  J-PARCと名古屋大のグループでは、MLFにおいて中性子スピンを揃える (偏極) デバイス: 3Heスピンフィルタの開発と運用を行っています。中でも浅井氏らは偏極原子核の偏極中性子吸収反応を用いて、時間反転対称性を破る未知相互作用を探索する計画(J-PARC E99, NOPTREX実験) を推進しており、そのための大型3Heスピンフィルタの開発を行いました。本デバイスをJ-PARCで用いることで今までにない、大強度かつ高偏極な熱外中性子ビームを得られるようになります。来年度に本デバイスをJ-PARC中性子ビームラインに設置し、時間反転対称性の破れの探索実験を開始する予定です。

  発表タイトル : 複合核を用いた未知相互作用探索実験のための熱外中性子用3Heスピンフィルターの開発
  https://www.jsns.net/jsns2024top

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