J-PARC (Japan Proton Accelerator Research Complex) は、素粒子物理、原子核物理、物質科学、生命科学、原子力など幅広い分野の最先端研究を行うための陽子加速器群と実験施設群の呼称です。世界に開かれた多目的利用施設であるJ-PARCの最大の特徴は、世界最高クラスの陽子 (1MW) ビームで生成する中性子、ミュオン、K中間子、ニュートリノなどの多彩な2次粒子ビーム利用にあります。高エネルギー加速器研究機構 (KEK) と日本原子力研究所 (原研) 【現 (独) 日本原子力研究開発機構 (JAEA) 】が共同で提案し、8年の歳月と総工費1524億円をかけ、2008年にJAEA東海の原子力科学研究所内に第一期施設が完成しました。
RCSからの陽子の90%以上は、MRの中央に位置する物質・生命科学実験施設 (MLF: Materials & Life Science Experimental Facility) にある中性子とミュオンを生成するための異なる2つのターゲットに導かれます。MRには2箇所の陽子ビーム取り出しポートがあります。ハドロン実験施設には遅い取り出しでビームを導き、K中間子を用いた素粒子・原子核実験を行います。一方、速い取り出しでMRの東側直線部から蹴りだされたビームは、超伝導磁石でMRの内側に曲げられパイ中間子生成用ターゲットに入射されます。ニュートリノ実験ではパイ中間子の崩壊でミュオンと一緒にできるニュートリノを300km西方の岐阜県のスーパカミオカンデに向けて発射しています。