守屋 克洋氏が日本物理学会若手奨励賞(ビーム物理領域)を受賞
加速器ディビジョン加速器第二セクションの守屋 克洋氏が、第17回(2023年)日本物理学会若手奨励賞(ビーム物理領域)を受賞しました。この賞は将来のビーム物理学を担う優秀な若手研究者の研究を奨励し、当該研究をより活性化する目的で毎年選考されているものです。守屋氏は、加速器における横方向運動を実験的に模擬したS-PODという小型ポールトラップ(LPT)を用いた卓上イオントラップ装置でビーム不安定性の研究を行い、ビーム力学における低次モード共鳴の理解を深めることに貢献しました。
評価されたのは、S-PODで実施した大強度ビームに対する低次の共鳴条件に関する研究です。外場である電場で収束力を変化させ、その際のイオンロスから共鳴現象を議論しました。大強度時には低次の共鳴ラインが2本存在すると提唱されていた理論を実験的に証明し、さらに空間電荷力を考慮したシミュレーションによる物理的解釈を与えたのです。これらは、大強度ビームにおける複合的なビームロス起源を分離して解明した点において、ビーム物理学的に大きく評価出来る業績と言えます。
併せて、欧州にてミューオンコライダーの初段加速器として期待されているNS-FFA加速器の原理検証機である英国のEMMAのビーム運動をS-PODで模擬し、局所的双極誤差磁場による1次共鳴の影響によるビームロスを検証し、ビームロスの抑制方法を提示したことです。さらに、最もビームロスに寄与する共鳴が、条件によっては問題とならない可能性があることを実験、理論の両面から示しました。この成果により、従来の概念を覆し、ビーム物理学に基づいて加速器技術の可能性を拡げるものとなりました。
今回の受賞は、これらの成果を第一原理から博士論文として丁寧にまとめたことが高く評価されたものです。
【関連サイト】
https://www.jps.or.jp/activities/awards/jusyosya/wakate2023.php
【対象論文】