SPring-8実験データとGakuNin RDMを連携
- 全国の研究データ基盤から大型研究施設データの統合管理・活用を可能に -
大型放射光施設「SPring-8(スプリングエイト)」[1]で取得される実験データを、大学・研究機関が導入する研究データ管理基盤「GakuNin RDM注1」から直接閲覧・利用できる連携サービスの試験運用を開始しました。本サービスは、理化学研究所(理研)、国立情報学研究所(NII)、高輝度光科学研究センター(JASRI)、東北大学を中心に、J-PARCセンターおよび総合科学研究機構(CROSS)の参画のもと検討を進めてきたものです。
SPring-8は、高輝度放射光を利用して、無機材料から生体分子まで多様な対象の構造や状態をナノレベルで解析できる世界有数の大型研究施設です。触媒、蓄電池、次世代半導体、生命科学など国内外の幅広い研究分野や、それに携わる研究者を放射光共用施設として支えています。SPring-8では近年、測定装置の高度化・高速化・自動化が進み、1日に数万件規模の測定を実施可能なビームラインも運用されるなど、測定能力の飛躍的向上を達成しました。さらに、現在整備中の第4世代大型放射光施設「SPring-8-II」では光源性能の向上により、短時間で高精細なデータの取得が可能になる見込みです。こうした技術発展は、新たな科学的発見・イノベーションを加速する一方で、測定装置から生み出されるデータ量の増大のみならず、データの種類、測定条件との関係性、解析履歴など、管理・共有・解析すべき情報を一層複雑化させることにもなります。また、AIの進展により、研究データをAIが扱える形で蓄積・共有・解析できるプラットフォーム整備も重要な課題です。その一歩目として、SPring-8では2021年度から「SPring-8データセンター」注2の整備を進め、大規模実験データをリアルタイムで解析するとともに、効率的に管理・共有するためのデータフローサービス注3を提供してきました。
一方、GakuNin RDMは、NIIが提供するわが国の研究データの管理・利活用のための中核的なプラットフォームとして位置付けられているNII研究データ基盤(NII Research Data Cloud:NII RDC)のうち研究データ「管理基盤」であり、データのライフサイクルに即した情報基盤として、多くの大学をはじめとしたさまざまな公的研究機関で導入、利用されています。研究者は所属機関のアカウントにより、研究プロジェクトごとのデータ整理、共同研究者との共有、アクセス権管理など一連の研究データ管理を行うことができます。
しかしながら、これまで認証・アクセス等の課題により、GakuNin RDMから SPring-8データセンターに保存された実験データへのアクセスができず、両者を一体的に利用することは容易ではありませんでした。
今回、SPring-8データセンターが提供するデータフローサービスとGakuNin RDMを連携させることで、SPring-8で創出され、データセンターで保存される実験データを、利用者ごとのアクセス権限に基づいてGakuNin RDMから直接閲覧・利用できるようになりました。これにより、大学等で取得した研究データとSPring-8実験データを共通の研究データ環境で利用できるようになります。本連携により、多数の実験・測定データを組み合わせたデータ駆動型研究が可能となり、材料科学、生命科学、半導体研究などにおける研究開発の加速が期待されます。
今後は、試験運用を通じた利用者からのフィードバックをもとに機能改善を進め、正式運用を目指します。また、大強度陽子加速器施設「J-PARC」[2]や3GeV高輝度放射光施設「NanoTerasu」[3]をはじめとする他の大型研究施設との連携拡大も視野に入れています。大型研究施設が生み出す最先端データと、全国の大学・研究機関が保有する研究データ基盤を連携させることで、データ駆動型研究およびAI活用研究を推進し、日本全体の研究力強化に貢献してまいります。
補足説明
1. 大型放射光施設「SPring-8(スプリングエイト)」
理研が所有する、兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出す施設。SPring-8の名前はSuper Photon ring-8 GeVに由来する。放射光(シンクロトロン放射)とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げたときに発生する細くて強力な電磁波のこと。SPring-8では、遠赤外線から可視光線、軟X線を経て硬X線に至る幅広い波長域で放射光が得られるため、原子核の研究からナノテクノロジー、バイオテクノロジー、産業利用や科学捜査まで幅広い研究が行われている。
2. 大強度陽子加速器施設「J-PARC」
茨城県東海村にある大強度陽子加速器施設。高エネルギー加速器研究機構(KEK)と日本原子力研究開発機構(JAEA)が共同で運営している。加速器で加速した陽子を原子核標的に衝突させることで発生する二次粒子を用いて、物質・生命科学、原子核・素粒子物理学などの研究や産業利用が行われている。J-PARCはJapan Proton Accelerator Research Complexの略。
3. 3GeV高輝度放射光施設「NanoTerasu」
国の主体機関である国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構と地域パートナーの代表機関である一般財団法人光科学イノベーションセンターによる官民地域パートナーシップという新しい枠組みによって整備・運営する特定先端大型研究施設で、東北大学青葉山新キャンパス内に立地し、利用者選定等は高輝度光科学研究センター(JASRI)が行っている。国内初の第 4 世代放射光施設で、従来の 100 倍の高輝度化と高コヒーレント化を実現することで、物質構造の解析に加え、機能に影響を与える「電子状態」、「ダイナミクス」等の詳細な解析が可能となっている。
