トピックス

2019.12.20

J-PARC News 第176号

≪Topics≫
■新井正敏 元物質・生命科学ディビジョン長が第17回日本中性子科学会「功績賞」受賞(11月20日、 懇丁/台湾)

 2019年度日本中性子科学会総会が台湾の懇丁(ケンティン)で開催され、新井正敏元物質・生命科学ディビジョン長(現KEK名誉教授、ESS-ERIC Technical Coordinator)が、功績賞を受賞しました。この賞は、広く日本の中性子科学の発展に顕著な功績のあった者に対して授与されるもので、新井氏は、これまで一貫してパルス中性子散乱に関する装置開発、施設の建設、さらにその運営に尽力してきたことが高く評価されたものです。授賞タイトルは「パルス中性子の活用に関する先駆的研究と先導的役割」です。新井氏は、J-PARCにおいても計画段階から関わり、建設及び運営にも多大な貢献をされるとともに、東日本大震災の復興などの困難な局面において組織をまとめられました。
※スウェーデンのルンド市に建設中の中性子実験施設(European Spallation Source)
詳しくは、KEK 物質構造科学研究所ホームページhttps://www2.kek.jp/imss/news/2019/topics/1120JSNSaward/をご覧ください。

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■T2Kコラボレーションミーティング開催(11月18~22日、IQBRC)

 11月18~22日にいばらき量子ビーム研究センター(IQBRC)でT2Kコラボレーションミーティングを開催しました。T2K実験は約1年半のビーム休止の後、11月5日からデータ取得を再開しています。会議では、まず各検出器の稼働状況と実験再開直後の取得データを用いた検出器の健全性チェックの状況が報告されました。また、様々なアイディアによるデータ解析方法の改善の進捗状況や、2021年にJ-PARCで予定されているニュートリノ生成施設の大強度化対応と前置検出器アップグレード計画の進行状況について報告がありました。さらに、岐阜県神岡町のニュートリノ検出器・スーパーカミオカンデ(SK)にガドリニウム(Gd)を入れて性能を向上させるSK-Gd計画の報告がありました。

 

 

■SCK・CEN-JAEA研究協力協定に関る打合せ開催(11月27日、J-PARC)

 11月27日に、加速器駆動システム(ADS:Accelerator-driven System)による多目的照射炉であるMYRRHAの建設プロジェクトを推進するベルギー原子力研究センター(SCK・CEN)の理事長Dr. Eric van Walleら7名が来所し、ADSによる核変換技術開発を推進する日本原子力研究開発機構(JAEA)の三浦幸俊理事、大井川宏之原科研所長、遠藤章原子力基礎工学研究センター長、およびJ-PARCの齊藤直人センター長他関係者と、研究協力に関する打合せが行われました。打合せでは、今後の協力関係強化に向け、若手を含めた人員交流の活性化、鉛ビスマス・照射・加速器技術等のADS分野での協力推進、ADS以外の幅広い分野でのSCK・CEN -JAEA研究協力強化の可能性の検討、SCK・CENとJ-PARCとの協力取決の可能性の検討等が議論されました。J-PARCの視察では、MLF、ニュートリノ実験施設、核変換研究グループの鉛ビスマス試験ループなどを見学しました。news176_2.jpg

 

 

■第19回ミュオンg-2/EDMコラボレーションミーティング開催(12月2~5日、J-PARC)

 12月2日から5日にかけて、J-PARCで計画しているミュオン異常磁気能率(g-2)/電気双極子能率(EDM)の精密測定実験(E34)に関するコラボレーションミーティングを開催しました。ミュオンg-2/EDM実験は、日本、韓国、中国、ロシア、カナダ、フランス、米国の7ケ国を中心に約100名が参加する国際共同研究で、第19回目を迎える今回はテレビ会議参加者も含めて約50名の参加者となり、会場には若手研究者が多数見られました。1日目は本実験に係るミニスークルを開催、2日目の午後には、KEK物質構造科学研究所のS型課題の研究会を兼ねた本ミーティング全体の進捗報告と今後の研究計画に関する議論が行われました。また2日目午前と3~4日目にはサブグループ毎の詳細報告が行われ、活発な議論が交わされました。news176_3.jpg

 

 

■核破砕中性子源に関するSNSとJ-PARCのコラボレーションミーティング開催(12月10~13日、J-PARC)

 12月10日から13日にかけて、米国オークリッジ研究所の核破砕中性子源(SNS)とJ-PARC/物質・生命科学実験施設(MLF)の中性子源関係者によるコラボレーションミーティングを開催しました。SNSとJ-PARC中性子源は、共にターゲット材に水銀を用いており、水銀を内包するターゲット容器の高出力化への対応や、中性子減速材・反射体、極低温水素循環系等のシステム機器で共通する課題を抱えているため、これまで継続的に情報交換を行ってきました。今年8月、J-PARCセンターは米国エネルギー省と高出力核破砕中性子源開発及び関連分野における研究協力に関する取決めを新たに締結したことを受け、今後の具体的な研究協力の項目について、特に活発な意見交換を行いました。news176_4.jpg

 

 

■Information exchange meeting on high intensity proton linacs between CIAE and J-PARC(12月11日、J-PARC)

 12月11日、中国原子能科学研究院(CIAE)とCNNC(China National Nuclear Corporation)から、Jiang Xingdong CIAE副院長他4名が来訪し、J-PARCの加速器担当者らと高強度陽子線形加速器に係る情報交換会議を開催しました。冒頭、齊藤直人J-PARCセンター長とJiang氏が挨拶、その後、CIAE・CNNCの紹介、CIAEにおける加速器計画の説明があり、J-PARC側からは加速器の現状を担当者が説明しました。その後、中央制御室、リニアックおよび物質・生命科学実験施設を見学し、最後に意見交換を行いました。news176_5.jpg

 

 

■大強度ビームをつくる!~電気と磁石のハナシ~高柳智弘氏(11月29日、東海村産業・情報プラザ「アイヴィル」)

 11月29日のハローサイエンスは、加速器第2セクションの高柳智弘氏が、J-PARCの加速器について話をしました。高柳氏は、J-PARCの2段目の円形加速器・3GeVシンクロトロンのビーム入射部に据付けられているバンプ電磁石の開発に携わりました。バンプ電磁石は、初段加速器・リニアックからの入射ビームを3GeVシンクロトロン加速器に取り込む重要な電磁石です。高柳氏はJ-PARCについて、世界でトップクラスの大強度陽子ビームにより、様々な実験に使用する二次粒子を生成する施設であることを説明し、リニアック、3GeVシンクロトロンの特徴などを、アニメーションを取り込んだスライドを使って、とても分かりやすく解説しました。来場した大人から未就学児童までもが、スライドを食い入るように見ながら真剣に話を聞いていました。news176_6.jpg

 

 

■第19回 青少年のための科学の祭典 日立大会~磁石と電気は仲良し?!~単極モーター工作・実験(12月1日、日立シビックセンター)

 青少年のための科学の祭典は、日本科学技術振興財団が主催し、青少年が科学技術に親しむ環境づくりを目的に全国各地で開かれています。日立大会も毎回、地元の大学、高校や多くの企業、団体などが参加し、魅力あふれる科学実験、工作教室などで科学の不思議さや面白さ、もの作りの楽しさを子どもたちに提供しています。 今回、J-PARCセンターは磁石の上に置いた乾電池のまわりを銅線がくるくる回る単極モーターの工作体験を実施しました。磁石の力がはたらいている場所に電流が流れると力を受けて銅線がくるくる回ります。そしてJ-PARCの加速器も同じ原理の磁石が多数使用されていることを紹介しました。子どもたちは、銅線の形を工夫しながら、上手に回るまで夢中で取り組みました。news176_7.jpg

 

 

■令和元年度「第7回科学の甲子園ジュニア全国大会」~ガウス加速器実演~(12月8日、つくば国際会議場)

  「科学の甲子園ジュニア」は、全国47都道府県の代表選考で選抜された中学生6名で構成されるチームが、筆記、実技の競技により、ものづくりの能力、コミュニケーション能力などを用いて課題解決能力を競うものです。今年は、12月6~8日につくば国際会議場で開催され、J-PARCセンターは、8日のエキシビションでJ-PARCについて広く知ってもらおうと、ガウス加速器の実演とともに、J-PARCの加速器や研究の紹介を行いました。全国から集まった優秀な中学生たちは科学への関心が非常に高く、250名を超える中学生、引率教員等がJ-PARCブースを訪れました。ガウス加速器の磁石によりスピードを増す鉄球に驚きの声を上げるとともに、J-PARCの説明に熱心に耳を傾ける生徒も多く見られました。 news176_8.jpg

 

 

■ご視察者など

 12月10日 デンマーク外務省投資局先端技術担当部
 12月11日 中国原子能科学研究院 副院長 他4名

 

 

■加速器運転計画

 1月の運転計画は、次のとおりです。なお、機器の調整状況により変更になる場合があります。 news176_9.jpg